映画評「落下の解剖学」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2023年フランス映画 監督ジュスティーヌ・トリエ ネタバレあり ジュスティーヌ・トリエという女性監督は初めて観ると思う。カンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞したフランス製法廷劇である。 フラン山岳地帯の町グルノーブルの冬。1968年冬季オリンピックの開催都市ですね。  交通事故の後…
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映画評「千夜、一夜」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2022年日本映画 監督・久保田直 ネタバレあり 特定失踪者をヒントにしながら、社会派ではなく、純文学にしたところが欧州映画的で興味深い。しかし、一回観ただけの鑑賞者を置いてきぼりにする、即ち一人合点的なところがないわけではない。 離島という設定であるが、ロケした佐渡島に実在する店がそのまま…
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映画評「マダム・ウェブ」

☆☆★(5点/10点満点中) 2024年アメリカ映画 監督S・J・クラークスン ネタバレあり 一時に比べるとマーヴェル・コミックスの映画化も大分頻度が落ち、程良いスパンで観られる。それでも、SFが天然記念物のように希少だった僕らの若い頃を考えれば、まだまだ多い。CGの登場によってSFはあらゆる意味でハードルが低くなったのだ。 …
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映画評「人生の乞食」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中) 1928年アメリカ映画 監督ウィリアム・A・ウェルマン ネタバレあり 一昨日に続いて YouTube の Genjitsu films チャンネルでの鑑賞。 サイレント期に良いものが多いウィリアム・A・ウェルマンの傑作で、半世紀後の「北国の帝王」や「明日に処刑を・・・」と比べてみたくなる…
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画像問題:Who is she/he? No. 34

昨日この女優が主演する映画を再鑑賞して、まだ問題にしていなかったよなあ、と今回の出題に。 僕が一番映画館で映画を観ていた大学時代、45年くらい前に、この画像(恐らく)の映画での助演が評価され、台頭しました。後年の作品と若干イメージが違うかもしれません。だからこの画像を選んだわけですが。  個人的な思い出がありまして、その…
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映画評「救ひを求むる人々」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1925年アメリカ映画 監督ジョゼフ・フォン・スタンバーグ ネタバレあり 戦前の大監督ジョゼフ・フォン・スタンバーグのデビュー作。猪俣勝人の「世界映画名作全史:戦前編」で紹介されていて見たかった作品である。  YouTube に Genjitsu films という貴重な映画チャンネルがあるこ…
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映画評「黒い瞳」(1987年)

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1987年イタリア映画 監督ニキータ・ミハルコフ ネタバレあり ニキータ・ミハルコフは、チェーホフの短編を幾つか合体して再構築するのがお好きなようで、僕が大学生の頃日本に初めて紹介されて評判になった「機械仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」も、本作もそうである。 僕はロシア語を専攻し、チェ…
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映画評「プロヴァンスの休日」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2014年フランス映画 監督ローズ・ボッシュ ネタバレあり ブルゴーニュはワイン造りが盛んなようで「ブルゴーニュで会いましょう」「おかえり、ブルゴーニュへ」というフランス映画が日本に輸入されているが、そのブルゴーニュよりさらに南でマルセイユのあるプロヴァンス地方はオリーヴ作りが盛んなのか?  …
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古典ときどき現代文学:読書録2024年秋号

 季刊になって3回目。あっと言う間に発表時期がやって来ます。  さて、皆様を悩ませてきた大古典は大分少なくなり(バラエティ=多様性=の関係上ゼロにはしない)、一般的な古典もほどほど、新しい作品やミステリーなど娯楽性の高い作品が増えて来たのはウェルカムなのではないでしょうか。僕は映画ファンですから、映画化された小説を選びやすい。当ブ…
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映画評「栄光のランナー/ベルリン1936」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2015年アメリカ=イギリス=ドイツ=カナダ=フランス合作映画 監督スティーヴン・ホプキンズ ネタバレあり 小学校に上がる前にあった1964年の東京オリンピックは記憶がないが、68年のメキシコは多少憶えている部分があり、ここから僕のオリンピック狂が始まる。  2020年(実施は21年)のオリン…
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映画評「市子」

☆☆☆★(7点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・戸田彬弘 ネタバレあり 演劇でも映画でも活躍しているらしい戸田彬弘が自作の戯曲を映画化した作品。 同棲中の恋人・長谷川(若葉竜也)から求婚された市子(杉咲花)は、嬉しそうに反応するものの、その後すぐに家を出て行方をくらます。捜索願いのせいか、自らの捜査の為か、彼の…
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映画評「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・武内英樹 ネタバレあり 河崎実監督の作る映画並みのくだらなさながら、スケールだけはメジャー映画らしさを発揮していた前作は、時代を超えた無茶な設定に一応興味をそそられた。  続編だから二番煎じになってつまらなくなっているであろうと予想して観始めたが、主な舞台を滋賀県を中心…
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映画評「カラオケ行こ!」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2024年日本映画 監督・山下敦弘 ネタバレあり 和山やまという漫画家の手になるコミックを山下敦弘が映画化した青春映画である。 中学の合唱部部長をしている3年生男児・岡聡実(齋藤潤)が、ヤクザの若頭補佐成田狂児(綾野剛)にカラオケを教授することになる。組長が誕生日のカラオケ大会に最下位と見な…
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映画評「南風」(1933年)

☆☆☆★(7点/10点満点中) 1933年アメリカ映画 監督キング・ヴィダー ネタバレあり 「南風」という題名の映画は3本の邦画(一つは台湾との合作)があるが、いずれとも関係がない。 本作は、現在の日本で全く無名に近く、戦前の映画に少なからぬ興味を持つ僕もさほど関心を持っていなかったくらい。最近プライムビデオにあることを…
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映画評「スイート・マイホーム」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年日本映画 監督・齊藤工 ネタバレあり 神津凛子のサスペンス小説を、先日観た「シン・仮面ライダー」にも出演していた男優齊藤工が映像に移した作品。  「スイート・マイホーム」というのは英語ではありえないが、日本語ではマイホームが一語となっているので成り立つ。マイホームの間に・を入れて台無し…
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映画評「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年イギリス=アメリカ合作映画 監督ポール・キング ネタバレあり 「シックス・センス」以降10年間くらいサスペンス映画の画面が信じられない時代が続いたが、現在はアカデミー賞の雇用機会均等宣言以来顕著になったオーパーツ的配役(今から思うと、とりわけ英国の映画やTVにおいて、実際にはそれ以前から…
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映画評「夢のチョコレート工場」

☆☆★(5点/10点満点中) 1971年イギリス=アメリカ合作映画 監督メル・スチュワート ネタバレあり ロアルド・ダールの児童文学「チョコレート工場の秘密」の最初の映画化。日本劇場未公開作。 原作が Charlie and the Chocolate Factory なのに対し、こちらは Willy Wonka and…
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映画評「PERFECT DAYS」

☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2023年ドイツ=日本合作映画 監督ヴィム・ヴェンダース ネタバレあり ヴィム・ヴェンダースの新作は、日本語以外の台詞が一か所以外に出てこない、日本との合作映画。【キネマ旬報】は日本映画扱いをして、ベスト選出では日本映画の第2位になった。 ヴェンダースの小津安二郎マニアぶりは有名だが、スケ…
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映画評「ブルックリンでオペラを」

☆☆★(5点/10点満点中) 2023年アメリカ映画 監督レベッカ・ミラー ネタバレあり 現在の欧米映画は、就業機会均等の名目の下に異なる人種・民族起用を前提に話をこしらえるから妙につまらないものばかりとなる。  それでも、現在を描く映画では、その為に白人役に有色人種を使ったり(鑑賞者全員がその事実を理解できれば問題ないがそ…
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映画評「水は海に向かって流れる」

☆☆☆(6点/10点満点中) 2022年日本映画 監督・前田哲 ネタバレあり 純真そのものだった「海街diary」の頃と違って、最近の日本映画界は、広瀬すずを豪放でつかみどころのない妙齢美人というキャラクターに固定しつつあるように思う。この間観た「キリエのうた」は正にそのもので、本作は寧ろクール・ビューティーだが何をしでかすか…
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