映画評「風の谷のナウシカ」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1984年日本映画 監督・宮崎駿
ネタバレあり
核戦争後の世界は原始時代か古代の様相を示すのが通例で、宮崎駿が独自の世界観を本格的にスタートさせたこの作品もその発想自体はそれほど新鮮なものではないと最初に観た時は思ったものだが、事実上のリメイク作品「もののけ姫」を経験した後に本作を観ると、自然との共生というテーマを既に確立していたことに驚かされる。
最悪の世界大戦により壊滅状態に陥ったままの未来世界、ナウシカは中世の中立国を思わせる王国の王女だが、愛に満ちた少女で臣民たちに慕われている。そこへ巨人兵を操る好戦国が侵略してくる。少女は人間にとって脅威である巨大昆虫のオウムさえコントロールする力があるが、世界制覇を目指す国々がオウムを怒らせ、人類の存続が絶望的になる。
ここから始まるハイライトで我々は身じろぎできない感動に包まれることになる。自分の生命を投げ打ってオウムを止めようとする少女の姿は、無論感動的である。最初観た時の僕の感動はせいぜいここまでであった。
しかし、今は人間を許したオウム=自然の大きさに感動する。そんな大きな作品を作った宮崎に感動するのだ。
1984年日本映画 監督・宮崎駿
ネタバレあり
核戦争後の世界は原始時代か古代の様相を示すのが通例で、宮崎駿が独自の世界観を本格的にスタートさせたこの作品もその発想自体はそれほど新鮮なものではないと最初に観た時は思ったものだが、事実上のリメイク作品「もののけ姫」を経験した後に本作を観ると、自然との共生というテーマを既に確立していたことに驚かされる。
最悪の世界大戦により壊滅状態に陥ったままの未来世界、ナウシカは中世の中立国を思わせる王国の王女だが、愛に満ちた少女で臣民たちに慕われている。そこへ巨人兵を操る好戦国が侵略してくる。少女は人間にとって脅威である巨大昆虫のオウムさえコントロールする力があるが、世界制覇を目指す国々がオウムを怒らせ、人類の存続が絶望的になる。
ここから始まるハイライトで我々は身じろぎできない感動に包まれることになる。自分の生命を投げ打ってオウムを止めようとする少女の姿は、無論感動的である。最初観た時の僕の感動はせいぜいここまでであった。
しかし、今は人間を許したオウム=自然の大きさに感動する。そんな大きな作品を作った宮崎に感動するのだ。
この記事へのコメント
(マンガの・・・ナウシカの完結をアニメ化してほしいですね。)
ご明察の通り、マンガの方は読んでおりません。年に400本ほどの映画を見て、その全てに映画評をざっと書いております。限られた時間の中で書いた文章なので、チェック不足もいいところですが(例えば「火の七日間」と言われる戦争について)、お許し下さい。
「もののけ姫」で同じテーマを焼き直しした宮崎氏ですから、もしかしたらナウシカ完結編も映像化されるかもしれませんね。
怒りに暴走するオウムを止めるためにとったナウシカの行動も感動的でしたが、黄金の野(ほんとは違うけどw)にナウシカが横たわっているシーンは印象的でした。
個人的には瘴気を発している森が、本当は地球を浄化するためにやってるんだとナウシカが気づいたあたりが好きです。
私は漫画を読まないので解らないのですが、何だか漫画では人間は汚濁の世界で生きているらしく、宮崎駿のエコロジー精神はポーズではないかと疑問を私に呈された方があるのですが、全く勘違いされております。
宮崎は必ずしも地球を綺麗にするだけがエコロジーとは語ってはいませんよね。エコロジーの本来の意味は、生態学であります。ある環境で生物がいかに生きるかを観察、研究する学問であります。彼のエコロジーはその辺に転がっている安っぽい優しさではありませんぞよ。
とてつもなく重たい「共生」と「破滅」という相反するテーマを持つこの作品がまだエコロジーだなんだと騒ぎ出す80年代後半よりも前に発表されていたことはとても意義がある事実だと思います。
再び『もののけ姫』でこのテーマに取り組むまでに、彼ですら10年以上も熟成させる期間が必要でした。80年代後半から90年代初頭にかけて、ファッション的にエコを謳っていた企業CMやロック歌手とは違う筋金入りの思想家が宮崎監督なのかもしれません。ではまた。
<環境に優しい>が現在の芸能界や映画界が抱いているエコロジー観でしょうが、宮崎駿は最初から今日に至るまで、自然と人間は対立するものではないという所謂環境学的な立場からエコロジーを捉えて、その先見性は凄いですね。私も若い時は気付かず、年齢を重ねてやっと解ってきましたよ(笑)。
>三国同盟を推したのも同社ではなかったかな。
そうなんですか。うまく立ち回っているのでしょうか?
>広告を拒否したことがあったような記憶があります。
持ちつ持たれつの関係が崩れたのでしょう。
>公開後36年も過ぎてから初めてこの映画を見ました。
そうですか。僕は、80年代、90年代、00年代と一度づつ、3回くらい観ましたろうか。
最近は見ておりませんが、まだ古びていないでしょう? 大したものだなあ。
ナウシカは、古典の掘り起こし(?)に熱心な宮崎駿御大らしく、ギリシャ神話由来ですね。
>この時期だけに王蟲がコロナウイルスに見えてしまいました。
TV欄にもそんな感じのキャッチコピーが載っていました。その観点で今度観てみようかな。
>そうなんですか。うまく立ち回っているのでしょうか?
と言いましょうか、当時のメディアは多かれ少なかれ、戦争をたきつけていたのでしょう。国民も単純だからそれに乗せられたところがあり、多分当初は政府よりメディア・国民が戦争をしたがっていたように、最近の僕は思いますね。
>持ちつ持たれつの関係が崩れたのでしょう。
その【事件】を、朝日新聞より左と一部で言われる東京新聞で読んだような気がします。東京新聞は、左ではなくて、下(個人主義)なんですけどね。それ以前に個人主義自体が誤解されています。