映画評「海猿 UMIZARU」
☆☆★(5点/10点満点中)
2004年日本映画 監督・羽住英一郎
ネタバレあり
韓国映画「SSU」と同工異曲の物語である。大いに不利になったわけだが、それを抜きにしても余り感心できない。
海上保安庁の若者たちが入庁してバディと呼ばれる相棒と組んで訓練を続け成長していく恋と友情の物語で、「SSU」と違うのは主人公を演ずる伊藤英明の恋する相手が外部の人間であるということである。内部の人間のほうが物語の重心は下がり散漫にならない利点があるが、功罪相半ばでどちらが勝ちとも言えない。
前のバディ伊藤淳史が救命中に死亡した為に新しいバディ海東健と組んだ伊藤英明が、自分の命を取るか相手の命を取るかという危機を迎える、という終盤の趣向は「SSU」と全く同じである。ところが、ここはアガサ・クリスティーも顔負けの、仲間を信じて待つという予想外の変化球を持って来る。
海上保安庁の法規により訓練生は救助できないという壁があるが、若い時分に同じ経験をしている訓練所所長・藤竜也が法規を無視して訓練生全員をもぐらせる。
主人公をヒーローにしてしまう「SSU」が大甘と思っていたら、友情を生かす為に厳しい所長に法規無視の行動を取らせるこちらは、さらに遥か上を行く甘さと言わねばならない。
結果的に全員助かった彼らは査問委員会で所長を庇う。大甘に砂糖をさらに振り掛ける。査問委員会の連中も「練習だ」という彼らの戯言を認めてしまう。
全てが友情というテーマを生かす為の展開なのは理解できるが、実際の保安庁がここまで甘いと二次災害が起きかねないと要らぬ心配が生まれる。
中盤重要人物だった伊藤淳史が死んでしまうのは疑問だったが、最後の「13人卒業」を「14人」と訂正させる、【友情】をさらに強調する細工であることが理解できる。かと言って「良し」と認めるわけにも行かぬ。
ファッション雑誌編集員・加藤あいとのロマンスも絡むが友情の前に全く迫力がない。
但し、訓練模様が具体的だったのは評価したい。
2004年日本映画 監督・羽住英一郎
ネタバレあり
韓国映画「SSU」と同工異曲の物語である。大いに不利になったわけだが、それを抜きにしても余り感心できない。
海上保安庁の若者たちが入庁してバディと呼ばれる相棒と組んで訓練を続け成長していく恋と友情の物語で、「SSU」と違うのは主人公を演ずる伊藤英明の恋する相手が外部の人間であるということである。内部の人間のほうが物語の重心は下がり散漫にならない利点があるが、功罪相半ばでどちらが勝ちとも言えない。
前のバディ伊藤淳史が救命中に死亡した為に新しいバディ海東健と組んだ伊藤英明が、自分の命を取るか相手の命を取るかという危機を迎える、という終盤の趣向は「SSU」と全く同じである。ところが、ここはアガサ・クリスティーも顔負けの、仲間を信じて待つという予想外の変化球を持って来る。
海上保安庁の法規により訓練生は救助できないという壁があるが、若い時分に同じ経験をしている訓練所所長・藤竜也が法規を無視して訓練生全員をもぐらせる。
主人公をヒーローにしてしまう「SSU」が大甘と思っていたら、友情を生かす為に厳しい所長に法規無視の行動を取らせるこちらは、さらに遥か上を行く甘さと言わねばならない。
結果的に全員助かった彼らは査問委員会で所長を庇う。大甘に砂糖をさらに振り掛ける。査問委員会の連中も「練習だ」という彼らの戯言を認めてしまう。
全てが友情というテーマを生かす為の展開なのは理解できるが、実際の保安庁がここまで甘いと二次災害が起きかねないと要らぬ心配が生まれる。
中盤重要人物だった伊藤淳史が死んでしまうのは疑問だったが、最後の「13人卒業」を「14人」と訂正させる、【友情】をさらに強調する細工であることが理解できる。かと言って「良し」と認めるわけにも行かぬ。
ファッション雑誌編集員・加藤あいとのロマンスも絡むが友情の前に全く迫力がない。
但し、訓練模様が具体的だったのは評価したい。
この記事へのコメント
>大甘に砂糖をさらに振り掛ける
もう、このコメント読んだ時に大爆笑しちゃいました(笑)
確かにこんなことじゃ二次災害起こりかねませんよね・・・
「炎のメモリアル」のようでもハッピーエンドじゃなーい!って怒り出しそうな観客もいますが、ハッピーエンドならなんでもいいってもんでもないと思いました。
でも、日本人の大好きなお涙頂戴ものにうまく仕上げたなぁ・・・そつがないなぁ・・・とも思いましたけど。
つっこみはじめたらいくらでも突っ込めそうですからね・・(苦笑
ちなみに私は男性陣の結構鍛えた細身の体に目が釘漬けになっちゃってました(笑)
http://www.doblog.com/weblog/myblog/6480
査問審査会で所長が懲戒にでもなっていたら、もっと評価したかもしれませんねえ。バランス的に少しは世の厳しいところも見せないと、べとべとになってしまいます。
chibisaruさんのブログとリンクさせて戴きたいのですが、宜しいでしょうか。
<韓国映画「SSU」
未見で、全然知らなかったのでちょっと調べたら…ほんとすごく似ているようですねー。でも主演のシン・ヒョンジュンってナルシストな役が多くて苦手だなぁ…。
民放TV系列の映画で一番問題なのは、最初の放映がWOWOWではないこと。どうしてもCMの中断が避けられない。作者の想定したリズムや呼吸が犠牲にしてしまう、ということです。
それはともかく、甘いですなあ。「SSU」は甘いなあとは思ったのにそれを遥かに上回る砂糖菓子でございました。