映画評「大河の一滴」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2001年日本映画 監督・神山征二郎
ネタバレあり

五木寛之の随筆の映画化というが、読んでみないと随筆の映像化とはどういうものか見当もつかない。

東京で友人の店を手伝っている未婚女性・安田成美はモスクワでガイドをしてくれたロシア人青年セルゲイ・ナガリャコフから電話をもらう。彼はトランペッターで日本の楽団に採用してもらいに来ていたのだが、彼女の奔走も空しく採用はされない。
 店が手詰まりになって彼女は金沢に帰郷するが、友人・南野陽子が遺書を残して自殺してしまう。しかも頑固な父親・三國連太郎が肺がんにかかっていることが発覚、ますます内省的になりながらも、ロシア青年を呼んで金沢の楽団のテストに応募させる。
 住居を提供したのは彼女の幼馴染で婚約者もどきの渡部篤郎なのだが、合格したのも束の間彼は違法滞在で国外追放になる。ヒロインが実は思いを寄せていた青年の気持ちを確かめに渡部を連れて行くというのが面白い。さて、彼は納得できぬ思いを抱きながらもついていくが、彼女は結局青年の恋人が洗濯物を干しているのを見ただけで帰国の途につくのである。

一人の女性の心境を綴ったドラマだが、その間に彼女は父親を亡くしている。この父親には中国北境でロシア人に遭遇した記憶があり、ロシア青年の想いと重なり、女性の心境を優しく包み込む。この辺りは正に五木らしいが、映画として気に入らないとしたら、必要以上に景色を挿入したことである。実際には決して多くないのかもしれないが、海が何度か映し出されるとそんな印象を覚えてしまうのである。日本人は昔から海を挿入するのが好きなので。しかし、地味ながら女性映画としては決して悪くない。

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