映画評「続・激突!カージャック」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1974年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

TV映画ながら歴史に残る傑作となった「激突!」で注目されたスティーヴン・スピルバーグの劇場用映画第1作で、勿論「激突!」とは全く関係がない。30年ぶりの再鑑賞である。

1969年に実際にアメリカで起きた珍事件を基にしたお話で、福祉局に子供を奪われた主婦ゴールディー・ホーンが盗みで服役中の夫ウィリアム・アサートンを首尾よく脱獄させ、警官を乗せたままパトカーを乗っ取って、子供が引き取られたシュガーランドまでハイジャック道中(カージャックなんて言葉はなく、飛行機ではなくてもハイジャックは使える)。
 パトカーが何十台も連なって後を追いかけるが、人質がいて手を出せず、その間に警部ベン・ジョンスンや人質となった警官との人間味溢れる交流が描かれ、野次馬を巻き込んで次第に大騒ぎになっていく。

今見ると非常にニューシネマ的なとぼけた味わいが濃厚であり、次回作「ジョーズ」とは大分雰囲気が違っているのが嬉しい。ニューシネマ的であっても同時にハリウッド的とでも言うべきスピルバーグの早くも老成した演出と才能に感心する部分が少なくなかったからである。

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2021年03月09日 02:24
こんばんは。一昨日スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」を初めて見ました。戦場の場面が凄かったです。

さて、この「続・激突!カージャック」。少し前に見た事がありますが、面白かったです。警察官を人質にして逃走するという大胆な話。実話を元にしてるんですね。パトカーも彼らになかなか手を出せない。また面白がって彼らを応援する住民たち。でも最後はそんなにうまくいかないところがニューシネマ的です。

>本作か第三作「円月斬り」のどちらかと思います。

ありがとうございます。また暇な時に調べたいです。

>任せられた以上はこなさなければならない(笑)。

森一生監督が撮るとまた別の持ち味が出るんですよね?

>美空ひばりが子役で出た「角兵衛獅子」が有名です

BSやCATVで放映して欲しいです。
オカピー
2021年03月09日 21:32
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「プライベート・ライアン」

一回しか観ていませんが、迫力のある作品でしたねえ。そろそろ再鑑賞しても良い頃でしょう。
この映画から、戦争映画の作り方が変わったように思います。もう一度観て確信したいですね。

>最後はそんなにうまくいかないところがニューシネマ的です。

恐らくスピルバーグ唯一のニューシネマ的映画ですね。

>森一生監督が撮るとまた別の持ち味が出るんですよね?

大映の監督は個性派ぞろいですからね。三隈研次などは、持って生まれた変態性(笑)があるような気がします。

>>「角兵衛獅子」
>BSやCATVで放映して欲しいです。

何度も放映された作品ですから、きっとまた出るでしょう^^v
蟷螂の斧
2021年03月11日 17:49
こんばんは。昨夜ジョン・ウェイン監督・主演映画「アラモ」を見ました。いろんなエピソードを削って上映時間を2時間以内にして欲しかったです。

>恐らくスピルバーグ唯一のニューシネマ的映画ですね。

いろいろなタイプの映画作りをする監督でしょうか?

>勿論「激突!」とは全く関係がない

日本の映画館で大ヒットさせて稼ぎたい?

>三隈研次などは、持って生まれた変態性(笑)があるような気がします。

座頭市シリーズで言えばどの作品でしょうか?
オカピー
2021年03月13日 08:34
蟷螂の斧さん、こんにちは。

すっかりレスが遅れました。ちょっとバタバタしていまして<(_ _)>

>「アラモ」を見ました。いろんなエピソードを削って上映時間を2時間以内にして欲しかったです。

これはその通りと思いますね。大昔地上波で観た時は前後編スタイルだったので、何となく誤魔化されてしまいましたが。一気に見るとその印象が強い。

>いろいろなタイプの映画作りをする監督でしょうか?

結果的にはそう言えるかもしれません。
 ただ、多くの作品の根底に、家族と逃走があるように感じられます。逃走が根底にあるのは、ナチスに迫害されたユダヤ人という自分の出自にあるのかもしれません。「シンドラーのリスト」を作ったのは必然だったでしょうね。

>日本の映画館で大ヒットさせて稼ぎたい?

結果的にヒットすれば、みんな満足!

>座頭市シリーズで言えばどの作品でしょうか?

座頭市シリーズの三隈作品はまだ二本しかまともに鑑賞していないんです。もったいなくて(笑)。
 まあ必ずしも単に性的な意味ではなく、映画的にマニアックという意味でもありますが、「血笑旅」のおしめ絡みのショット群は面白いです。
 1970年代に入って「御用牙」シリーズを二本撮っていますが、極めてお下劣。時代の要請でしょうが、ちょっとげんなりします(笑)。
蟷螂の斧
2021年03月15日 02:08
こんばんは。

>ナチスに迫害されたユダヤ人という自分の出自

先日話題にした「プライベート・ライアン」ではドイツ軍を随分悪く描いていますね。

>「血笑旅」

テレビドラマ版でもリメイクされました。自分の代わりに殺された女。その子供(赤ん坊)の面倒をみる。

>ゴールディー・ホーン

「父親はイングランド系でミュージシャン、母親はハンガリー系ユダヤ人でジュエリーショップ・ダンススクールを経営していた。」(ウィキペディアより)そういう家庭環境で育ったんですね。

>ベン・ジョンスン

彼がアカデミー助演男優賞を受賞した『ラスト・ショー』一度見たいです。
オカピー
2021年03月15日 18:54
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>先日話題にした「プライベート・ライアン」ではドイツ軍を随分悪く描いていますね。

当然でしょうね。
 スピルバーグのユダヤ人としての思いと9・11に揺れるアメリカへの思いをうまく表現したのが「ミュンヘン」という作品です。1970年代を時代背景にしながら、9・11に言及したのが凄いと思いましたね。もっと評価されても良い作品。

>>ゴールディー・ホーン
>そういう家庭環境で育ったんですね。

一種の芸能一家ですね。
 今は娘のケイト・ハドスンが女優として活躍中。目の大きな母親よりカート・ラッセルの前のご主人に似ているらしく、雰囲気はシャーリー・マクレーンのような感じ。

>彼がアカデミー助演男優賞を受賞した『ラスト・ショー』一度見たいです

昔は貴重ですが、最近はNHKにも出ましたし、何とかなると思います。
 モノクロの滋味溢れる作品です。滋味にも溢れますが、地味でもありますので、楽しめると良いなあと思います。

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