映画評「ミスティック・リバー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年アメリカ映画 監督クリント・イーストウッド
ネタバレあり
昨年度「キネマ旬報」「スクリーン」両誌で1位になった堂々たるクリント・イーストウッドのスリラーであるが、手ごたえはあったものの感服するところまでは行かなかった。
70年代ボストン、3少年が悪さをしているところへ刑事と思われる中年男性が現れ、少年の一人デイヴを【車】で連れて行く。少年は4日後戻ってくるが、その間監禁されて性的暴行を受けていた。
彼が沈黙を守ったまま25年の年月が過ぎた今3人は深い交流もなくそれぞれの人生を歩んでいるが、服役経験があるが現在は雑貨屋を営むジミー(ショーン・ペン)の19歳になる娘が殺され、デイヴ(ティム・ロビンズ)が容疑者の一人として、ショーン(ケヴィン・ベーコン)が捜査担当刑事ということで3人が無理やりに結び付けられることになる。
彼らの運命が、観客だけがよく知っているデイヴの少年時代の事件に翻弄される、という物語なのだが、「あの【車】に乗ったのがデイヴでなかったら」という言葉が何度も吐かれるように、【車】に拘りすぎ些かご丁寧すぎはしないか。こんな言葉を繰り返さなくても運命の皮肉とデイヴのトラウマは十分語られたと思う。
それに加え、序盤プロローグから娘の殺人の輪郭が分かるまで思わせぶりでもたれ気味である。その思わせぶりで暗いムードを出そうとしたならまして感心しない。そんなことが気になってどうにも重苦しくて仕方がなかったが、裏返して彼らの妻の物語と思ってみると納得できる部分もある。
年齢的に中堅にいる三人の男優の演技は充実。
2003年アメリカ映画 監督クリント・イーストウッド
ネタバレあり
昨年度「キネマ旬報」「スクリーン」両誌で1位になった堂々たるクリント・イーストウッドのスリラーであるが、手ごたえはあったものの感服するところまでは行かなかった。
70年代ボストン、3少年が悪さをしているところへ刑事と思われる中年男性が現れ、少年の一人デイヴを【車】で連れて行く。少年は4日後戻ってくるが、その間監禁されて性的暴行を受けていた。
彼が沈黙を守ったまま25年の年月が過ぎた今3人は深い交流もなくそれぞれの人生を歩んでいるが、服役経験があるが現在は雑貨屋を営むジミー(ショーン・ペン)の19歳になる娘が殺され、デイヴ(ティム・ロビンズ)が容疑者の一人として、ショーン(ケヴィン・ベーコン)が捜査担当刑事ということで3人が無理やりに結び付けられることになる。
彼らの運命が、観客だけがよく知っているデイヴの少年時代の事件に翻弄される、という物語なのだが、「あの【車】に乗ったのがデイヴでなかったら」という言葉が何度も吐かれるように、【車】に拘りすぎ些かご丁寧すぎはしないか。こんな言葉を繰り返さなくても運命の皮肉とデイヴのトラウマは十分語られたと思う。
それに加え、序盤プロローグから娘の殺人の輪郭が分かるまで思わせぶりでもたれ気味である。その思わせぶりで暗いムードを出そうとしたならまして感心しない。そんなことが気になってどうにも重苦しくて仕方がなかったが、裏返して彼らの妻の物語と思ってみると納得できる部分もある。
年齢的に中堅にいる三人の男優の演技は充実。
この記事へのコメント
ありますね。
映画としは、いい映画だと思いますが
心情的なはやはり後味は悪いですね。
これはデニス・ルヘインの原作が出たときに読みました。
重た~い、過去を引きずる系ミステリーでしたが、映画になった時は期待して観に行った記憶があります。
>「あの【車】に乗ったのがデイヴでなかったら」という言葉が何度も吐かれるように、【車】に拘りすぎ些かご丁寧すぎはしないか。
確かに、原作でも「もしあの車に乗っていたのが自分なら」という二人の思いが何度も語られていたように思います。
「思い」として文章で語られているとそんなにくどくない事が真面目に映像化して口に出して喋らせてしまうと、煩く感じるのかもしれませんね。
心の中の思いをセリフじゃなくて表現できれば評価も上がっていたでしょうに・・・多分、この話は、人の運命はほんのちょっとの事で変わってしまって、それはどうしようもない事である、みたいなテーマなんでしょうね。
しかし、映画も本も20年近くたった今となってはすっかり忘れておりました。
この頃読んだミステリーがこれ系の話が多くて、いい加減ウンザリしてしまいました。現実社会を反映しているから仕方ないのかもしれませんが。
昔からこの手の犯罪は今と変わらずあったんでしょうが、闇に葬られていたんでしょうね。
日本でも東野圭吾の「白夜行」とか天童荒太の「永遠の仔」とか。「永遠の仔」は良かったですが、東野のは気にいらなくてゴミ箱に投げ捨ててしまいました。
本をゴミ箱に捨てるなんて酷い事をしたもんです。この頃もう一冊ゴミ箱行になったのが「マディソン郡の橋」でした。
だから「マディソン郡・・」の映画は見ていないんです。
デニス・ルヘインはこれの後、「シャッター・アイランド」も映画になりましたね。 大掛かりに騙される話でした。
この2冊しか読んでませんが、他にも映画化作品があるかもですね。
「こういうのを書いてたら作者は儲かるなぁ~」と関西人は嫉妬と羨望の目でみてしまいますね。
>心の中の思いをセリフじゃなくて表現できれば評価も上がっていたでしょう
少なくとも僕はそのように思いましたね。
>本をゴミ箱に捨てるなんて酷い事をしたもんです。
本当に捨てたんですか? そりゃ大胆だっ!
>だから「マディソン郡・・」の映画は見ていないんです。
僕は割合好きなんですよ。特に一場面がお気に入りでした。小説は新聞に取り上げられていた頃から興味が湧かなかったなあ。
>デニス・ルヘイン
日本では未公開に終わった「ゴーン・ベイビー・ゴーン」もそうみたいです。俳優ベン・アフレックの監督作品で、割合完成度が高かったです。
>「シャッター・アイランド」
余り評価しなかった。しかし、「シックス・センス」の時と違って模倣作品が生まれなかったのは良かったと思います。
>「こういうのを書いてたら作者は儲かるなぁ~」と関西人は
羨ましいですよねえ。ちょっとしたアイデアがあり、文才があれば大金持ち。純文学作家は割が合わないですね。最近は芥川賞を獲ると、それなりに売れるので、昔と違いますが。
>イーストウッドは、こういういかがわしいというか、
>変態臭が漂う場面の撮り方がうまいなといつも思います。
最初の監督作品が変質者の女が怖がらせる「恐怖のメロディ」だったのは、偶然ではないのかもしれませんね。
世評が余りに良く構えて観てしまったので、物足りなく思うところがあったわけですが、nesskoさんが指摘する箇所を注意して見直す必要があるようですね。
私ももう一回観たくなりました。 これは原作のほうが良いんですが、さすがにもう一度読む元気はないです。
うちはスカパーセレクト5をやめて、U-NEXT無料視聴中ですが、今、見放題で配信されていますので観てみます。
配信の方がプロジェクターで観るのが簡単なのでこれからはこっち方向でいきそうです。
>これは原作のほうが良いんですが、
>さすがにもう一度読む元気はないです。
僕はいずれ原作を読んでみましょうかね。図書館にありました。
>配信の方がプロジェクターで観るのが簡単なので
>これからはこっち方向でいきそうです。
そういうものですか。
プロジェクターはアナログ時代に家にありましたが、新時代のことは解りません^^;
>僕はいずれ原作を読んでみましょうかね。
ぜひぜひ! その暁には感想などお聞かせください。
昨夜早速U-NEXTで再鑑賞致しました。きっかけをくださってありがとうございます。 観て良かったです!
前回は本を読んだ記憶が残っていた時期だったので、どうしても
素直に映画だけを見ていなかったかもしれません。
いやいや、良かったですよ! ホントに!
そんなに何回も「あの車に乗っていたのが自分なら・・」とは言ってませんでしたよ。
お1人様一回限りでした。その辺イーストウッド監督は厳しいんじゃありませんか? 「男は何回も同じ事を言うな」とか。
きっと先生は予告とかの惹句を何度も聞いて耳に残ってしまったんだと思います。
私はイーストウッドに何の思い入れもない人間なんですが、よくできてるなぁ、と感心しましたよ。老人二人が全く居眠りせずにしっかり見てましたもの。
役者がみんな上手いから場面場面にリアリティーがあって、不幸の連鎖のようなラストにも説得力がありました。
>きっかけをくださってありがとうございます。
僕からも、nesskoさんに感謝したいところです。
>素直に映画だけを見ていなかったかもしれません。
そういうことはあるかもしれません。それもまた人情。
>老人二人が全く居眠りせずにしっかり見てましたもの。
あははは。それは良かったです。
僕も心を入れ替えて(笑)、観なおしてみましょうかねえ。しかし、原作と併せてということになるので、来年ですね(笑)。