映画評「アラビアのロレンス(完全版)」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1962年イギリス映画 監督デーヴィッド・リーン
ネタバレあり

1920年代にダマスカスをトルコから奪い返し、アラブ人の英雄にもなった英国人ローレンスは果たして本当に英雄だったのか、という命題を掲げて作られていたお馴染みの大作のデーヴィッド・リーン自身の手による完全版。

そうした面はさらに強調され見応え十分だが、個人的には砂漠を横断する場面のスペクタクルな美しさに見とれた。物語としてはアラブ人とのカルチャー・ギャップが次々と出てくる辺りが頗る興味深く、荒くれ部族の長アンソニー・クィンが絡んでくる辺りまでが好みと言って良い。

作品の評価に影響を与えるほどではないが、アラブ人を野蛮人と言っていた英国人(ローレンス)が残虐ぶりを発揮する終盤の皮肉な場面などは好きになることはできないのである。

何度観てもローレンスに扮したピーター・オトゥールは絶品。

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年12月05日 15:27
TB&コメント有難うございます。厳しいオカピーさんでも満点の作品ですよね!
前半は明るく人を引き付ける魅力的な英雄、後半は自虐的で屈折し苦悩する男、そして中性的にも思えるこの難しいキャラをピーター・オトゥールが演じきっていて見事です。数々の名シーンの中でもオマー・シャリフが砂漠の地平線から現れるシーンは特に印象に残ってます。
オカピー
2006年12月05日 18:07
ぶーすかさん、こんばんは。
上に厳しくて下に甘いです。点差を敢えて付けないのが私流。その辺りはいつかコラムか何かで説明しないといかんと思っております。

リーンは私が尊敬している監督の一人ですが、繊細な心情からスケールの大きなスペクタクルまで巧みに描ける世界でも数少ない監督です。実力ほどは評価されていない一人ではないかと思います。

シャリフが登場する場面は幽玄でしたね。
ミリアム
2008年07月29日 03:34
こんばんは!名作の名にふさわしい風格ある作品ですね。ピーター・オトゥールの演技は、演技と思えませんでした。他作品のオトゥールを見てもロレンスに見えてしまいそうなくらい、強烈にはまっています
オカピー
2008年07月29日 13:47
ミリアムさん、こんばんは!

全ての面で完成された作品です。
中でも砂漠の美しさに圧倒されますが、オトゥールの演技は凄いですね。彼が本当の名演技者であることは「チップス先生さようなら」を見ると、確認できますよ。これだけはロレンスには見えない(笑)。
2008年07月30日 05:20
「チップス先生さようなら」は未見ですが、名前は聞いたことがあります。この作品でも彼はアカデミー賞にノミネートされていませんでしたっけ?確かアカデミー賞と相性が悪い俳優さんなんですよね。オカピーさんのご指摘にあったとおり、賞を獲るというのは実力以外のものも求められるのでしょう。
今度「チップス先生」見てみたいと思います。
オカピー
2008年07月31日 02:00
ミリアムさん、こんばんは!

>チップス先生さようなら
作品も大変素晴らしいです。
ミュージカル映画史上最低の楽曲などと評価するムキもありますが、そもそもミュージカルらしいミュージカルとは言いにくい作品ですから。

>アカデミー賞
これも候補どまりだったです。
その時の受賞者はジョン・ウェイン。<長い間ご苦労だったで賞>じゃないでしょうか。
しかし、この年は「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンとジョン・ヴォイト、「1000日のアン」のリチャード・バートンがノミネートでしたから物凄い充実ぶり!
こういう年に取るのは難しいですね。
2009年01月11日 07:40
完全版を映画館で観てきました。
やはり、いいですねー。
スケールの大きさに加えて、ロレンスの人間も描かれる…。
おっしゃるとおり、リーン監督は「逢びき」など繊細なドラマから、スペクタクルまで見事に作る名監督でした。
オカピー
2009年01月11日 23:06
ボーさん、こんばんは。

あのだだっぴろい砂漠はどでかいスクリーンで観ないとねえ。
ロマンスの「ライアンの娘」もあの砂浜や断崖に打ち寄せる波を観るだけで感激してしまいましたものね。

リーンの映画を見ると、やはり人間描写が映画の基本ということがよ~く解ります。「逢ひき」が作れるから「アラビアのロレンス」も「戦場にかける橋」も作れる。
「ライアンの娘」を馬鹿な評論家が叩いたものだから、「インドへの道」まで十年以上のブランクが出来てしまった。日本での評価は高かっただけに残念でしたね。
2015年10月24日 16:31
テレビで観ただけだったのですが、やっと映画館で観ることができました。あの蜃気楼から人影が出てくる場面、最高ですね。ただ、話はまるで今の中東情勢そのまんまやないか、と、気分が重くなったりもしました。
子供の頃テレビで観たときは、アレック・ギネスが扮したファイサル王子がものすごくきれいな男に見えたんですよ。今回見ると、やっぱりきれいなんですけれど、見た目がどうというよりも、したたかで食えない王子様だなあという印象になりましたが、アレック・ギネス、他の映画ではうまいとは思っても特にきれいとは思ったことないですから、この映画ではアラブ人風のメイクと衣装がよかったんだろうな、と。
オカピー
2015年10月24日 21:39
nesskoさん、こんにちは。

>中東情勢
結局現在中東の混乱は、イギリス、ソ連、アメリカが引き起こしたものですよね。
日本は、本当に中東の戦いには巻き込まれてほしくないです。

>アレック・ギネス
そう言われれば、きれいだったような気がします。
今度観る時はその辺りにも注目してみましょう。
蟷螂の斧
2023年10月09日 18:00
こんばんは。一昨日と昨日は我が町の秋祭り。僕も祭りの役員の一人。同年代の役員たちと雨の中、頑張りました。祭りの役員をやりたがらないけど、祭りで飲み食いして福引に参加する若い人達。まあ、そんなもんです。

>死者1100人超、戦闘続く 「最悪の虐殺」、音楽祭襲撃―ハマス拠点空爆800カ所・イスラエル

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023100900076&g=int
罪のない人まで殺さないで欲しいです。

>僕の父親は、どうも、軽いアスペルガーだった模様。

でも頭が良い人だったのでしょうね。

>砂漠を横断する場面のスペクタクルな美しさに見とれた。

美しい映像でした。

>荒くれ部族の長アンソニー・クィン

荒馬に乗っても落とされる事はない。さすがです!
オカピー
2023年10月09日 22:30
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>祭りで飲み食いして福引に参加する若い人達

こちらは、昨日体育祭があり、我が班は僕がグラウンド・ゴルフで最終ホールでホール・イン・ワンを出してた結果、優勝できました(ビギナーズ・ラックでしたね)。

14日は祭。
夏のお精進は出費がないので参加する人が少ないですが、秋の祭は全軒が出費するので、元を取ろうと参加する人が倍増します。
祭以外は福引と慰労会の食事だけですけどね。

>>僕の父親は、どうも、軽いアスペルガーだった模様。
>でも頭が良い人だったのでしょうね。

頭はともかく、モノの大きさの把握は凄かった。
仏壇の大きさなど目視だけで1cm単位でぴったし当てましたよ。まあ、家具作りが仕事だったということもありますが。

>>砂漠を横断する場面のスペクタクルな美しさに見とれた。
>美しい映像でした。

僕はこれを映画館で観たことがないんですよ。
大きな映像で観ないといけないですね。
蟷螂の斧
2023年10月10日 18:13
こんばんは。音楽の方。コメントを書いたけど駄目でした。HNをひらがなにしたら大丈夫でした。

>我が班は僕がグラウンド・ゴルフで最終ホールでホール・イン・ワンを出してた結果、優勝できました

おめでとうございます!いざと言う時に強いオカピー教授ですね。

>秋の祭は全軒が出費するので、元を取ろうと参加する人が倍増します。

元を取るだけでなく協力して欲しいです。

>仏壇の大きさなど目視だけで1cm単位でぴったし当てましたよ。

素晴らしいです。その才能がお仕事に生かされたのでしょう。

>僕はこれを映画館で観たことがないんですよ。

もちろん僕も見ていません。

>死者1600人、戦闘激化の懸念 イスラエル、予備役30万人招集 ハマスは「人質処刑」を警告

やめてくれ・・・。
オカピー
2023年10月10日 21:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>音楽の方。コメントを書いたけど駄目でした。HNをひらがなにしたら大丈夫でした。

名前に何か問題があるんですかねえ?

>>仏壇の大きさなど目視だけで1cm単位でぴったし当てましたよ。
>素晴らしいです。その才能がお仕事に生かされたのでしょう。

ダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」に我が父のような人が出てきました。サイズをぴったし当てる。


*イスラエルとパレスチナ

イスラエルにも問題がありますが、アメリカが混乱させていますねえ。
トランプがイラン合意が脱退したので、イランが核兵器を作る可能性がぐっと増えました。
イランはイランで宗教絡みの女性問題にこじれていますし。碌なもんじゃないです。宗教が憲法より上ではダメです。
一番保守的と思っていたサウジの方が先に民主化するかもしれません。

この記事へのトラックバック

  • アラビアのロレンス/ピーター・オトゥール

    Excerpt: 私のベストムービーは「アラビアのロレンス」です。この映画を観てアラブへ行きたくなったのは私だけではないはずです。 トルコと戦っていたイギリスはめ、アラブ人の力を借りるため、勝利後の独立を約束して彼ら.. Weblog: 文学な?ブログ racked: 2006-06-02 00:36
  • 「ドクトル・ジバゴ(デビッド・リーン)」「アラビアのロレンス」

    Excerpt: ●ドクトル・ジバゴ ★★★★★ 【NHKBS】デビッド・リーンの名作をやっと観る事ができた!期待通りにグッド。ロシアの壮大な大自然の描写はさすが上手い。冷凍庫のような厳しい冬とスイレンなどが大地一面に.. Weblog: ぶーすかヘッドルーム・ブログ版 racked: 2006-12-05 15:20
  • アラビアのロレンス

    Excerpt: イギリス(1962) 監督 デヴィッド・リーン 主演 ピーター・オトゥール +++++++++++++++ 9点/10点中  この作品を観た友人からは「あえて単純なヒーローものだと思って見てみたほ.. Weblog: いっちょ語りたおしてみましょう racked: 2008-07-29 03:26
  • 「アラビアのロレンス 完全版」

    Excerpt: デビッド・リーン監督の名作のリバイバル上映。コロンビア映画85周年、同日本支社設立75周年記念作品。 デジタル音声のニュープリント・... Weblog: 或る日の出来事 racked: 2009-01-11 07:13
  • [映画]アラビアのロレンス

    Excerpt: 1962年、イギリス 原題:Lawrence of Arabia 監督:デヴィッド・リーン 脚本:ロバート・ボルト、マイケル・ウィルソン 出演:ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、アンソニー・クイ.. Weblog: 一人でお茶を racked: 2015-10-24 16:23
  • 映画評「レッド・スカイ」

    Excerpt: ☆☆★(5点/10点満点中) 2014年アメリカ映画 監督マリオ・ヴァン・ピーブルズ ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2015-12-10 09:40
  • 映画評「風とライオン」

    Excerpt: ☆☆☆★(7点/10点満点中) 1975年アメリカ映画 監督ジョン・ミリアス ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2017-10-31 08:08
  • 映画評「アラビアの女王 愛と宿命の日々」

    Excerpt: ☆☆☆(6点/10点満点中) 2015年モロッコ=アメリカ合作映画 監督ヴェルナー・ヘルツォーク ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2018-01-06 08:56