映画評「心の香り」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1992年中国映画 監督スン・チョウ(孫周)
ネタバレあり

12歳くらいの少年が両親の離婚の為に都会から父方の祖父の許へ預けられる。祖父は京劇の名優だったが、祖母の死と共に引退していて、近くの老婦人と夫婦のように親しい生活を送っている。少年は躾や勉強に厳しい祖父を煙たがるが、田舎ののんびりした生活や老人同士の人間的な関係に、祖父と心を通わせていく。

この少年は勉強は得意とは言い切れないが京劇が得意。両親が強制的に習わせていたからだが、その京劇が円滑材のようになっていく設定が巧い。祖父と親しくなっただけでなく、京劇を強制した両親に少しは感謝しただろうし、両親の離婚により「夫婦は離婚するものだ」というドライな感情に目覚めてしまったその心にも潤いが生じたはずである。その辺りが力みなく描かれていて清々しく、秀作とは言えないまでも、後味は実に良い。

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