映画評「老人と海」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督ジョン・スタージェス
ネタバレあり

アーネスト・ヘミングウェイの同名小説の映画化。久しぶりの再鑑賞となるが、なかなかお見事。

キューバが舞台で、84日間も何の収穫もない老漁師スペンサー・トレイシーが巨大なマカジキに当たり、三日三晩かけての格闘の末に確保するが、サメにより食い尽くされてしまう。

お馴染みの物語と言って良いだろうが、半分以上が漁師の一人舞台故に映画化は大変難しい。脚本家ピーター・ビアテルはそれをナレーションの多用で解決してみせた。僕は映画は映像で話を進めるべきであるという立場であるからナレーションは大嫌いだが、勿論使い方によっては素晴らしい効果を出せることもある。老人と彼を慕う少年との会話もナレーションで済まし、全体の調子を整えているが、映画全体を叙事詩風に扱うという効果も出ている。

疲労だけが収穫となった老人を慰めるのは少年だけであるが、骨だけとは言え大物を釣り上げた老人に対する尊敬が漁師たちの間に僅かに滲み出る辺りの味の良さ。「荒野の七人」「大脱走」等豪快なアクション作家のイメージのある監督ジョン・スタージェスとしては珍しいタイプの作品だが、捨てがたい佳作である。


TBが反映されない十瑠さん(SCREEN)の記事は↓
http://blog.goo.ne.jp/8seasons/e/20a3e50fafc0b008ec716587432cb741

この記事へのコメント

N_ardis
2005年11月18日 19:55
トラックバックありがとうございます。

こちらには山のように映画評がありますね。参考にさせていただきます。。。
オカピー
2005年11月19日 03:09
N_ardisさん、こんにちは。
2ヵ月半で300本を越えました。映画鑑賞歴三十余年、古い映画は特に得意です。
ぶーすか
2006年04月24日 11:16
こんにちは。前にNHKBSで観たのですが、TBさせて下さい。
スペンサー・トレイシーの手が漁師の手のように分厚くゴツゴツとした感じだったのがリアリティーを出していて印象的でした。
オカピー
2006年04月24日 14:36
ぶーすかさん、いつも有難うございます。
この作品を成功させたのは即実的なナレーションです。ヘミングェイを上手く映像化するのはあの方法しかなかったのだとおもいますし、脚本家の殊勲です。今観るとスタジオ撮影がムードを損なっている印象もありますけどね。トレイシーは勿論良い。
viva jiji
2006年05月13日 17:19
たった、あれだけの物語なのに、最後まで観てしまうのは、やはり、語り口(ナレーションではなく映像の)の滑らかさかな、と思っています。まさに情景を無理なく伝えている。あざとくなくて、ストレートで、いいです。
オカピー
2006年05月14日 00:35
viva jijiさん、こんばんは。
「大脱走」でもそうですが、スタージェスは上手いですね。アメリカ映画ですのでどこまで彼自身が編集に口を挟めているか不明ですが。
ナレーションが映像化に当たっての諸問題をほぼ解決したと思うのですが、主人公を演じたスペンサー・トレイシーが第三者の立場でナレーションをするというのは誤解を生みかねない起用だとは思います。
十瑠
2006年09月22日 09:19
>大物を釣り上げた老人に対する尊敬が漁師たちの間に僅かに滲み出る辺りの味の良さ。

その骨だけのなった大魚の種類についてトンチンカンな事を言っているカフェの女性客の会話も小説と殆ど同じでした。
オカピー
2006年09月22日 17:04
十瑠さん、こんばんは。

すると、どこまでをナレーションにするかどうかが脚本家ピーター・ビアテルの腕の見せ所だったわけですね。
原作はどこにしまってあるかなあ。
私が一番好きなヘミングウェイは、十瑠さんが挫折したという「武器よさらば」です。ロスト・ジェネレーション的でないところが良かった。この中篇もそうですけどね。
蟷螂の斧
2020年06月19日 00:36
こんばんは。随分前から題名だけ知っていたこの映画を初めて見ました。BSから録画しました。舟に乗った男。主人公が一人で演技をしている場面が多い。なぜか市川崑監督の「太平洋ひとりぼっち」を思い出しました。あちらは別に石原裕次郎が巨大な魚を捕る訳ではないですが。
少年が老人を慕う。子供の頃って誰でもそう言う気持ちを持ってるんじゃないでしょうか?尊敬する人を探すみたいな気持ちです。
少年がお持ち帰りの弁当(?)を二人分注文する。「彼はもう駄目だよ。」と言いながら少年を温かい目で見るカフェのマスターも良かったです。

>ディープ・パープル

僕は彼らに関してはほとんど知らないのですが、「ブラック・ナイト」は恋愛の曲とは違うんですよね?哲学的な内容でしょうか?

>Get Back Sessionsが大量にアップ

youtubeってCD化できるんですか?楽しそうな作業です。

>何を言っているのか解っていても、通していた

ある程度は見逃す。ガス抜きさせる事も必要です。

>あべっちに忖度しまくっていた黒川氏

国民の怒りは収まらないでしょう。
オカピー
2020年06月19日 20:46
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>主人公が一人で演技をしている場面が多い。
>なぜか市川崑監督の「太平洋ひとりぼっち」を思い出しました。

海に一人でいる場面が多いという共通点がありますね。

キューバとアメリカが仲良かった時代の話で、小説では野球の話が出て来たと思います。映画でもありましたっけ?
 折角オバマが国交を復興したのに、トランプが反故にしました。大リーグを面白くするためには国交復興が必要です。次の大統領は是非。

>「ブラック・ナイト」は恋愛の曲とは違うんですよね?
>哲学的な内容でしょうか?

ラブ・ソングではないですね。改めて歌詞を眺めましたが、簡単な単語しか使っていないけど、実に解りにくい。哲学的なのかどうかは微妙ですね。

>youtubeってCD化できるんですか?楽しそうな作業です。

出来ますよ。かく言う僕も最近やり始めたばかりですが。
ダウンロードするアプリとして、Craving Explorer と Any Audio Converter というのを使っています。
 長いものをトラックごとに分離させる為に Sound Engine というアプリを使っています。このアプリはCDフルスペックのWAVファイルである必要があるので、MP3若しくはMP4をWAVに変換できる上の二つのアプリを使っているわけです。
 YouTubeがダウンロードできないように細工を施し、それをアプリ側が対応するといういたちごっこで、現在Craving はダウンロードできない状態。で、二つのアプリがあったほうが良いわけです。

"YouTubeからCDを作る"といった文字列で検索すると必要な情報が出て来ると思います。

>ある程度は見逃す。ガス抜きさせる事も必要です。

江戸幕府は、それをよく解っていたのでしょう。
蟷螂の斧
2020年06月20日 08:04
おはようございます。「老漁師が鮫に食われてしまうのではないか?だったらマカジキを捨てていけばいいじゃないか!」凡人の僕はそう思いながら見ていました。凄い迫力でした!銛も奪われてしまう。後は艪で鮫を殴るしかない。撮影も大変だった事でしょう。
映画の中に野球の話は出なかったと思います。僕の注意力不足かも知れませんが。
スペンサー・トレイシーの人生も随分波乱万丈ですね。昨日猪俣勝人先生の「世界映画俳優全史 男優編」を読んで、そう思いました。

ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」はもしかしてチャック・ベリーの影響ではないでしょうか?高速で走る車。

Craving Explorer と Any Audio Converter。僕には無理です(苦笑)。
オカピー
2020年06月20日 21:33
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「老漁師が鮫に食われてしまうのではないか?だったらマカジキを
>捨てていけばいいじゃないか!」凡人の僕はそう思いながら

最初は生活を維持するという現実的な理由、それが次第に意地とプライドになっていくのでしょう。

>スペンサー・トレイシーの人生も随分波乱万丈ですね。

キャサリン・ヘプバーンとのことですかねえ。共演作も多いですよね。遺作となった「招かれざる客」でも共演。

>ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」はもしかして
>チャック・ベリーの影響ではないでしょうか?

多分そうだと思います。女性と車への愛情が交互に出てきますね。
蟷螂の斧
2020年06月21日 10:01
こんにちは。キャサリン・ヘプバーン以外の事も書いてあります。無二の親友だったハンフリー・ボガードと配役序列の第一位をお互いに譲らず、憤然と役を蹴った。クラーク・ゲイブルとも待遇の事で会社ともめた。他にも酔って警察沙汰になった事も・・・。2年連続アカデミー主演男優賞を取ったけど、いつ何をやらかすかわからない怖さ。

>老人と彼を慕う少年との会話もナレーションで済まし

老人もナレーションもスペンサー・トレイシーが担当。でも日本語版(初回放送)はそれぞれ別の人(清水将夫と小沢栄太郎)が担当したんですね。

>ジョン・スタージェスとしては珍しいタイプの作品

畑違いでも良い作品を作れる監督です。
オカピー
2020年06月21日 21:59
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>2年連続アカデミー主演男優賞を取ったけど、
>いつ何をやらかすかわからない怖さ。

温厚な役とは少々違う性格だったということですね。面白い。

>老人もナレーションもスペンサー・トレイシーが担当。でも日本語版(初
>回放送)はそれぞれ別の人(清水将夫と小沢栄太郎)が担当したんですね

どちらが良いのでしょうかねえ。難しいところです。
モカ
2020年06月22日 15:49
こんにちは。

やっと観ました。 「老人と海」昔、原書で読みました。
なんて言ったら偉そうな感じですが、まぁ、一般教養の英語の課題図書だったので仕方なくです。
19歳ではヘミングウェイの良さはわかりませんでしたね。
ましてや原書ですし・・・文体は簡潔なんだけど魚の名前や釣り関係の言葉が色いろ出てきて・・・子供の頃金魚すくいなら得意だったけど釣りはなぁ、って感じでなにが面白いのやらさっぱりわかりませんでした。 という事で映画にも興味なくて今回初めて観ました。

>脚本家ピーター・ビアテルはそれをナレーションの多用で解決してみせた

 上に書いたように半世紀近く忘却の彼方だった「老人と海」ですが、冒頭のナレーションでかすかな記憶が蘇ってきました。
これひょっとして原作をそのまま読んでませんか?と思ってAOZORA BUNKOで英文を出してきて音を聞きながら英文を見たのですが、やっぱり最初の10行くらいはまったく同じでした。 
その後少し飛んだり後戻りしたりしますけど、ナレーションは原文通りだと思いました。(少年と老人がテラスでビールを飲んで小屋に帰るところまでしか原文の調査はしていませんが)
 お時間と興味がおありになれば、是非全編調査願います。
 先生ならきっと楽しまれると思います!

 日本人にとっての「吾輩は猫である。名前はまだない。」くらいに「老人と海」の出だしは有名なのかもしれませんね。
 おかしなナレーションにしたらヘミングウェイのファンからお叱りがくると思ったのかもしれません。
 それにしても脚本家、楽してる~ (笑)
オカピー
2020年06月22日 22:11
モカさん、こんにちは。

>一般教養の英語の課題図書だったので仕方なくです。

僕は、第2外国語でスタインベックの「真珠」を読まされました。講師は何故か本業を高校教師としている人で、角川文庫の和訳にかなり批判的でしたね。うちの大学で講師ができるのですから、高校教師としては相当優秀だったのでしょう。

>という事で映画にも興味なくて今回初めて観ました。

意外でした。再鑑賞なのかと思いました。

>お時間と興味がおありになれば、是非全編調査願います。

興味はあります。昔ヒッチコックの「裏窓」の台詞を聞いて書きとったことがあるくらい。
 しかし、YouTubeからCDを作るのが面白過ぎて、時間は足りません。何しろ洋楽は無数にあるもので、困りましたなあ(笑)。Amazonの輸入盤でもなかなか買えないクリフトン・シェニエ’(アコーディオン・ブルース)まである。大変なことですぞ、これは。

折角のモカさんのご依頼なので、先になるかもしれませんが、頭に入れておきますね。
モカ
2020年06月23日 16:17
こんにちは。

>スタインベックの「真珠」
 
 初耳です。色々あるんですね。「二十日鼠と人間」しか読んでいません。
 今になって思うに一般教養の英語なんてもうちょっと分かりやすいくて面白いものにしてほしかったと思います。

 ちなみに「老人と海」以外で覚えているのは

S・アンダスンの「ワインズバーグ・オハイオ」→これは「何のこっちゃ?」でした。最近読み返そうと試みるもまたもや挫折。

B・マラマッド(短編集)→当時「暗いなぁ」と思いましたが最近読んだら良さがわかりました。ちょっと大人になりましたかね。

H・ジェイムズ 「ねじの回転」「デイジー・ミラー」
 これが一般教養英語の中では一番面白かったです。
 とはいうものの、その後H・ジェイムズの他の本には手を付けず、です。 
こんなことを書いていると、また読んでみたくなりました。
 私的には、こういうのを最近「オカピー効果」と呼んでいます。
  原則、映画ブログなのに本を読みたくなったり音楽を聴きたくなったり。ありがたい事ですが・・・それこそ時間が足りません!

  >Amazonの輸入盤でもなかなか買えないクリフトン・シェニエ’(アコーディオン・ブルース)まである
  
 アコーディオン・ブルース!???? これも初耳です。
 ルイジアナって書いてますね。
 へぇ~アメリカって広い! 広すぎる!!!

 ニューオリンズ系のピアノなら好きですけど・・・
 ジェイムズ・ブッカーとかプロフェッサー・ロングヘアとか。
 アコーディオンですか・・・でもあれですね、クレオール系ということはフランス系だからアコーディオンは十分、ありですね。 
以前、パリミュゼットみたいなアコーデオンが弾きたくて、楽器屋さんでお試しレッスンをさせてもらった事がありますが、コードのボタン(左手のほう)の場所を把握するのが難しかったです。

 >YouTubeからCD

  夫も一時、車用にせっせとやってました。CDなんか買う必要ないなぁ~と喜んでましたが、車を買い替えたらCDが聞けなくなって「これからはUSBです」との事で今はUSBに入れてるようです。何を聞いているのやら・・・(笑)
 そういえば、アイフォンのyoutubeからブルートゥースで飛ばすという荒業もありますね。
「老人とIT」時代・・うぅ・・悲哀を感じます。
オカピー
2020年06月23日 22:35
モカさん、こんにちは。

> 初耳です。色々あるんですね。

スタインベックとしてはさほど有名ではないかもしれませんが、文庫本になっていたのだからそれなりの人気はあったのでしょう。「赤い子馬」と並ぶ中編作ということでしょう。文庫本は短いのが好かれたのかもですね。

>S・アンダスンの「ワインズバーグ・オハイオ」→これは「何のこっちゃ?」

和訳でしか読んでしませんが、僕は割合好きです。

>とはいうものの、その後H・ジェイムズの他の本には手を付けず、です。

ヘンリー・ジェイムズは好きですね。「ねじの回転」は短いですし勿論面白いですが、「太陽がいっぱい」の原作「リプリー」に出て来る「使者たち」が気に入りました。パトリシア・ハイスミスが「使者たち」に触発されて「リプリー」を書いたことが解ります。

>私的には、こういうのを最近「オカピー効果」と呼んでいます。

喜んで良いのでしょうねえ。
 僕も、自発的とまでは言えませんが、モカさんが紹介などする作家やアーティスト、作品に触れようとすることが多くなりました。幅が広がって有難いと思います。

>アコーディオン・ブルース!???? これも初耳です。

正確な呼称ではない筈で、ザディコと総称されるものの一部のようです。
しかし、色々と情報が出てきますね。僕の親戚プロフェッサー・ロングヘア(プロフェッサー仲間・・・笑)もちゃんと聴かなくちゃ。

アコーディオンと言えば、映画音楽作曲家フランシス・レイを思い出します。彼が60年代後半から70年代前半に作った楽曲(サントラ)の素晴らしいこと。いずれこれらを集めてCDにしようと思います。うちにこれらを集めたレコードがありますが、サントラでなく物足りないもので。

>>YouTubeからCD

今励んでいるのがビートルズのゲットバック・セッションで、都合24枚のCDになりそうです。長いのをトラックに分けてタイトルを付け、編集するのが面白いですが、膨大な時間がかかっています。

60年代松から70年代初めの、スモール・フェイセス(フェイセス)、ハンブル・パイ、スプーキー・トゥースなんてのは余り聴けなかったので、この辺りは早々にCDにしようと思っているグループたち。他にも無数にありますが。

場所を食うので、一枚で二つCDを収められるCDケースも大量に買いました。

>USB

USBでもステレオで聴けるのでしょうが、対応するアンプを買わないといけないので、CDに拘ります。車も今のが最後になると思うので。ヘッドフォンも好かない(音を細かく研究する時だけ使う)。

>「老人とIT」時代・・うぅ・・悲哀を感じます。

上手い!
 そうですねえ。僕などはまだ対応できている方でしょうが、しかしスマホもまだ持っていないですしねえ(本年買う予定ですが)。

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