映画評「プリンス&プリンセス」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1999年フランス映画 監督ミシェル・オスロ
ネタバレあり

「キリクと魔女」で素晴らしい映像と物語を堪能させてくれたフランスのミシェル・オスロの6話オムニバスのアニメ。元々はTVシリーズらしいが、選ばれた挿話は第4話を除いていずれも王子か王女が絡む話に一本化されている。

第1話は、囚われの王女を救う為に111個のダイヤを拾う若者のお話。時間内に拾い切らないと蟻になってしまうのだが、蟻たちが協力して若者は首尾よく拾うのに成功、王女は解放され、蟻たちは元の人間に戻る。
 第2話は、エジプトの女王に季節外れの無花果を届ける若者のお話で、褒美をもらう彼に嫉妬した行政官が欲をかいて横取りをを狙った結果処刑され、若者が代わりの行政官に登用される。
 第3話は、王女を魔女から救う為に武器を持たずに城に入った若者は王女より魔女が気に入ってしまう。
 前半の3話は若者の優しさ・誠実さ・無欲さが身を助けるという共通性があり、一方で強欲な人々がひどい目に遭ったりもする。

第4話。江戸時代の日本、高級な肩掛けを洒落込んだ老婆を泥棒が親切するふりをして奪おうとするが、凄い腕力を持っていた老婆に逆らえず東へ西へ歩かされる。しかし、老婆はお礼に肩掛けを泥棒に渡す、というお話が葛飾北斎の赤富士などを背景に展開する。
 第5話は未来のお話。求婚者に日が暮れるまで隠し通せたら結婚するという条件を出したお姫様が透明光線と破壊光線を駆使して彼らを殺していくが、歌鳥使いの青年だけは探すことができない。なかなか味わいあり。
 第6話は欧州の御伽噺風で、永遠の愛を誓う王子と王女がキスを繰り返す度に様々な動物に変身した挙句に、王子と王女が姿を入れ替えたところで終わり、男女の役割分担という現代的テーマを顔を出す。

いずれも10分余りと短く、好奇心が強い少年と少女が扮するという形で展開するのだが、ピリリと皮肉が効いていて実に面白い。それがカンボジアの影絵を思い起こさせる美しい映像で語られて、想像力と創造性に溢れて楽しさがいっぱいである。フランスのTV番組はこんなにレベルが高いのかと感心してしまう。これなら毎週観たいです。

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年08月12日 20:39
TB&コメント有難うございます。大人も楽しめる美しい絵本みたいな作品でした。特に第4話は日本が題材で大好きな北斎をフューチャーした話だったのが私にはマストでした。
オカピー
2006年08月13日 12:16
ぶーすかさん、コメント有難うございます。
前作の「キリクと魔女」もアフリカ説話風で大変面白かったですよ。宮崎駿は違う意味で凄いと思いますが、こういうシニカルでしかも子供向けの作品はちょっとできませんねえ。

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