映画評「ピアニストを撃て!」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1960年フランス映画 監督フランソワ・トリュフォー
ネタバレあり

フランソワ・トリュフォーは僕の大好きな映画作家であるが、この作品と親戚関係と言ってもよい「日曜日が待ち遠しい」を残して53歳で夭逝してしまった。悔しくてたまらない。
「大人は判ってくれない」で鮮烈なデビューを果たしたトリュフォーの長編第2作で、社会に所在なさを感じる主人公とその行動に原案を担当したジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」と同じニヒリズムを感じる。「勝手にしやがれ」はやはりトリュフォーの作品だったのだ。

妻ニコール・ベルジュを投身自殺で失って以来自分を見失っていたコンサート・ピアニスト、シャルル・アズナブールはカフェのピアノ弾きとなり、そこの女給マリー・デュボワと愛し合い辛い過去を忘れかけるが、仲間割れで追われるギャングの兄を匿ったことから大きな犠牲を払うことになる。最初アズナブールたちを誘拐したものの警察の登場で頓挫したギャング一味は幼い弟を誘拐し、雪に覆われた山小屋に兄弟で潜んでいたところへ現れる。兄だけでなく愛するマリーも撃たれて死んでしまうが、数日後彼は新しい女給が働くカフェでまたピアノを弾くのである。

トリュフォーだけに洒落っ気が抜群で、変則的な回想を駆使したり、ギャングたちが妙にとぼけていたり、ハリウッド映画には容易に求められない面白さがある。今更ながら彼の才能に拍手したい。

この記事へのコメント

2005年12月12日 01:06
こんばんは。TBやろうとすると失敗してしまうので直接書き込みますね。トリュフォー監督は少なくとも20年早く、亡くなってしまいました。
 彼が老境に入ってから撮った作品はどのようなものになっていたかと思うと、本当に惜しいですね。ではまた来ます。
カカト
2006年01月14日 11:33
トラックバックさせていただきました。
今日は時間があったのでいつもよりじっくり隅から隅までオカピーさんのレビューを読んで過ごしています。
私はこの映画の主人公の人柄がとても好きです。
基本的に、情けない男の人が主人公の映画が好きなのです。
オカピー
2006年01月14日 18:20
カカトさん、こんばんは。
TB有難うございました。
トリュフォーの映画に登場する男性陣はほぼ例外なく情けない人物ばかりですが、そこが彼の作品の良さでもあります。女性陣が概して元気というのも彼らしい。
少なくとも20年亡くなるのが早すぎましたね。

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