映画評「東京の宿」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1935年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎の中でも<喜八もの>と言われる作品群はストレートに感情に訴えるタイプと言って良い。この作品などは典型ではないか。
1935年というから世界恐慌の余波が日本にまだ残っていた頃が舞台で、失業者がテーマになっている。
失業中の喜八(坂本武)は二人の息子を引き連れて仕事口を訪ねて歩く毎日。そんなある日、木賃宿で幼い娘を連れた若い未亡人・おたか(岡田嘉子)と知り合い、同病相憐れむを通り超えて深く同情する。昔の馴染み・おつね(飯田蝶子)に一時的な危機を救ってもらうが、その頃おたか母娘が姿を消す。
数ヵ月後彼はおたかがお酌女に成り果てたことをひどく詰る。彼女は娘の急病で仕方がなかったのだと答える。事を理解した喜八は彼女の為に泥棒に入り官警に追われ、おつねに糾弾される。「あんたも水臭いねぇ。あたしもそこまで水臭くはないよ」。喜八は警察に出頭していく。
小津最後のサイレント作品で、人情がいっぱいの佳作である。しかし、そこは小津で、決して甘くなりすぎない。子供がつまらない帽子を買って喜八に叱られるエピソードなどを入れて客観性を持たせている。坂本武もいつもながら味わいがあり、この作品は好きだなあ。
1935年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎の中でも<喜八もの>と言われる作品群はストレートに感情に訴えるタイプと言って良い。この作品などは典型ではないか。
1935年というから世界恐慌の余波が日本にまだ残っていた頃が舞台で、失業者がテーマになっている。
失業中の喜八(坂本武)は二人の息子を引き連れて仕事口を訪ねて歩く毎日。そんなある日、木賃宿で幼い娘を連れた若い未亡人・おたか(岡田嘉子)と知り合い、同病相憐れむを通り超えて深く同情する。昔の馴染み・おつね(飯田蝶子)に一時的な危機を救ってもらうが、その頃おたか母娘が姿を消す。
数ヵ月後彼はおたかがお酌女に成り果てたことをひどく詰る。彼女は娘の急病で仕方がなかったのだと答える。事を理解した喜八は彼女の為に泥棒に入り官警に追われ、おつねに糾弾される。「あんたも水臭いねぇ。あたしもそこまで水臭くはないよ」。喜八は警察に出頭していく。
小津最後のサイレント作品で、人情がいっぱいの佳作である。しかし、そこは小津で、決して甘くなりすぎない。子供がつまらない帽子を買って喜八に叱られるエピソードなどを入れて客観性を持たせている。坂本武もいつもながら味わいがあり、この作品は好きだなあ。
この記事へのコメント
私も喜八ものが大好きで、坂本武も好きです。彼を最初に観たのがサイレント映画だったせいか、しゃべってる坂本武を観た時は違和感を覚えました(^^)私は喜八ものの中では「出来ごころ」が一番好きです。
相互リンク、こちらこそよろしくお願いします。
リンク確認致しました。早速のご対応有難うございました。
「出来ごころ」は20年くらい前に映画館で観ました。最近は観ていませんが、古い映画評は残っています。但し、あの頃の文章はかなり悪文の上に内容が薄い(今もそうですが)ので、そのまま載せるのはどうですか(笑)。
勿論傑作でしたよ。<喜八もの>ベスト1の呼び声もあります。
ありがとうございました。
喜八シリーズは坂本武を見ているだけで
ほっとするような優しい気持ちになってきます。
風景も人も日本はずいぶん変わってしまったんだなぁと
いまさらながら感じました。
僕らは日本の良き時代を知っている最後の世代と思います。「となりのトトロ」が描いたあの時代です。今の日本にホッとするものは殆どなく、寂しい限りですね。