映画評「母を恋わずや」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1934年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎としては「一人息子」と同じく、珍しく母と息子の関係を扱ったサイレント末期のドラマである。
夫亡き後も母・吉川満子は二人の息子をしっかりと育てるが、大学入学の際に岩田祐吉扮する長男は弟とは異母兄弟であることを知る。母が弟だけを厳しく叱ることにいたたまれなくなり家を出て、酒場の女に囲われるような生活を始め、母が居所を突き止めてやってきても聞く耳を持たない。が、結局母の気持ちを理解して戻って来るのである。
最初と最後の1巻が欠けているが、作品の価値を判断するには殆ど支障はなさそうである。まだまだ小津の個性が出ていない、まあよく出来たメロドラマであるが、所謂母物と一線を画す厳しい部分もある。例えば長男は厳しく接してくれないことに実子との差別を感じる。血は繋がっていなくても母子である。民主主義導入前の戦前ということもあるが、小津が家の崩壊をまだ信じていないことがよく伺われる作品となっている。その後戦中の「戸田家の兄妹」で彼の方向性は定まった。
1934年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎としては「一人息子」と同じく、珍しく母と息子の関係を扱ったサイレント末期のドラマである。
夫亡き後も母・吉川満子は二人の息子をしっかりと育てるが、大学入学の際に岩田祐吉扮する長男は弟とは異母兄弟であることを知る。母が弟だけを厳しく叱ることにいたたまれなくなり家を出て、酒場の女に囲われるような生活を始め、母が居所を突き止めてやってきても聞く耳を持たない。が、結局母の気持ちを理解して戻って来るのである。
最初と最後の1巻が欠けているが、作品の価値を判断するには殆ど支障はなさそうである。まだまだ小津の個性が出ていない、まあよく出来たメロドラマであるが、所謂母物と一線を画す厳しい部分もある。例えば長男は厳しく接してくれないことに実子との差別を感じる。血は繋がっていなくても母子である。民主主義導入前の戦前ということもあるが、小津が家の崩壊をまだ信じていないことがよく伺われる作品となっている。その後戦中の「戸田家の兄妹」で彼の方向性は定まった。
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