映画評「晩春」
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1949年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎のベストを選ばさせれば大概の人が「東京物語」かこの作品を選ぶ。純粋に芸術的な面のみで評価すればこの作品がベストというのは間違いないところであろう。個人的には「東京物語」を愛する僕であるが、凄みではこちらに軍配を上げたい。
自分の世話の為に婚期を逸しかけている娘・紀子(原節子)を何とか結婚させようと、父親(笠智衆)が再婚すると嘘を付いて娘を嫁がせる。
以降の小津作品は殆どがこの作品のヴァリエーションと言っても良いほどの重要作品であり、近親相姦的ですらあると言われる父娘の愛情関係を滋味たっぷりに描き切った傑作である。僕には永久に解らない部分があるかもしれないが、鬼気迫る作品と言って良い。
捨てカット(場面を繋ぐための無意味なカット)が単なる場面転換の役目を超えて、抜群の静謐感を生み出し、さらに登場人物の心情まで感じさせてしまうのは小津の独壇場。鎌倉と京都の風景の取り込みも抜群で、結婚式から帰ってきた父親が鎌倉の自宅で身を横たえる幕切れには万感の想いが胸に湧き上がる。
1949年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
小津安二郎のベストを選ばさせれば大概の人が「東京物語」かこの作品を選ぶ。純粋に芸術的な面のみで評価すればこの作品がベストというのは間違いないところであろう。個人的には「東京物語」を愛する僕であるが、凄みではこちらに軍配を上げたい。
自分の世話の為に婚期を逸しかけている娘・紀子(原節子)を何とか結婚させようと、父親(笠智衆)が再婚すると嘘を付いて娘を嫁がせる。
以降の小津作品は殆どがこの作品のヴァリエーションと言っても良いほどの重要作品であり、近親相姦的ですらあると言われる父娘の愛情関係を滋味たっぷりに描き切った傑作である。僕には永久に解らない部分があるかもしれないが、鬼気迫る作品と言って良い。
捨てカット(場面を繋ぐための無意味なカット)が単なる場面転換の役目を超えて、抜群の静謐感を生み出し、さらに登場人物の心情まで感じさせてしまうのは小津の独壇場。鎌倉と京都の風景の取り込みも抜群で、結婚式から帰ってきた父親が鎌倉の自宅で身を横たえる幕切れには万感の想いが胸に湧き上がる。
この記事へのコメント
拙い文章ではありますが気付いたことを書き続けていきますので、よろしくお願いします。ではまた。
小津は幾つかのスタイルを繰り返し、時に自縄自縛になってしまう作品もありますが、その映画人生にヒッチコックと共通性を感じる監督です。僕は比較的早く気に入ってしまいました。余り自然さを求めるタイプの方には、駄目かもしれませんね。
ではまた。
笠智衆が嘘をつく(問われて「うん」と肯くだけですが)ときの一瞬の逡巡が何ともいえないですね。その時点で観客にはそれが嘘とわからない構成ですが,「おや」という感じで伏線になっていました。
一方,再婚すると聞いたあと,原節子が父を見るあの表情,あれは私には「嫉妬」にしか見えないのですが,あえて「近親相姦」をほのめかす演出をしているように思えてなりません。
小津安二郎の研究書を持っていたのですが、探し出さないといけないかなあ。私もまだこの作品を見極めてはいず、近親相姦を思わせる場面の小津の演出意図まではなかなか解りませんのです。
日曜日にUPしていた<ヒッチ曜日>ことヒッチコック特集が来週で終るので、それ以降の日曜日は、トリュフォー、小津、成瀬辺りが候補。あるいはちゃらんぽらんの<日曜名画劇場>としますか。
能の場面ではセリフが一言もないのに、紀子の気持ちが音楽と混ざりあって、観るものに激しく訴えていたのがとても印象的でした。
芸術的には文句の付けようのない傑作ですからね。私の小津No.1映画「東京物語」より遥かに研ぎ澄まされていて、残念ながらその点では本作をベスト1とせざるを得ないです。
ただ、まだこの父と娘の愛情交換を完全につかみ切れてはいないと思います。娘が嫁に行く時になっても分らんかなあ。