映画評「マルタイの女」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1997年日本映画 監督・伊丹十三
ネタバレあり
伊丹十三の思わぬ遺作。ご存知のように本作公開から3ヵ月後に彼は謎の自殺を遂げてしまった。1984年の「お葬式」以来当時の日本では珍しい社会性と娯楽性を両立させた作品を続け、マニュアル映画などと呼称させて戴いた一種の天才だったが、全く惜しいことをしたものである。現在日本の映画がここまで良い意味でエンタテインメント化しているのは彼の貢献が大であると思う。
舞台兼映画女優の宮本信子が殺人事件を目撃、直後犯人に襲われるが急場を凌いだものの、翌日から身辺警護対象者即ちマルタイとなり、警官の西村雅彦と村田雄浩に密着され、実業家の津川雅彦との不倫もままならない。
監督自身が暴力団に襲われ、マルタイになった経験を元に作られた物語だが、作品の中で犯行者はオウム真理教を思わせるカルト教団に属している。作品中にオウムの名を出して別の団体であることをアピールするが、勿論強烈なオウム風刺であるし、暴力団風刺でもある。
教団は電気修理を装って彼女の愛犬を殺し、教団弁護士・江守徹を派遣して脅迫しても相手がひるまないので、遂にはこっそり姿を消した女優を襲うが、そこへ西村が駆けつけ、命からがら退散させる。証言の日に裁判所に向かう警護車も襲われるが、彼女は「サンセット大通り」のグロリア・スワンスン宜しく大見得を切って裁判所の階段を上っていく。
実はこれはある監督の新作映画でしたという種明かしがあるが、それは単なる洒落っ気であり、内容として余り重要視する必要はない。
女優にとっては裁判所も大舞台という幕切れに何故か胸が詰まったが、些か要素を詰め込みすぎて方向性が散漫になった印象は残る。それでもやはり面白かったというのが素直な感想で、暴力団事件が伊丹の自殺に何か関係があるのか今でも気になって仕方がない。
1997年日本映画 監督・伊丹十三
ネタバレあり
伊丹十三の思わぬ遺作。ご存知のように本作公開から3ヵ月後に彼は謎の自殺を遂げてしまった。1984年の「お葬式」以来当時の日本では珍しい社会性と娯楽性を両立させた作品を続け、マニュアル映画などと呼称させて戴いた一種の天才だったが、全く惜しいことをしたものである。現在日本の映画がここまで良い意味でエンタテインメント化しているのは彼の貢献が大であると思う。
舞台兼映画女優の宮本信子が殺人事件を目撃、直後犯人に襲われるが急場を凌いだものの、翌日から身辺警護対象者即ちマルタイとなり、警官の西村雅彦と村田雄浩に密着され、実業家の津川雅彦との不倫もままならない。
監督自身が暴力団に襲われ、マルタイになった経験を元に作られた物語だが、作品の中で犯行者はオウム真理教を思わせるカルト教団に属している。作品中にオウムの名を出して別の団体であることをアピールするが、勿論強烈なオウム風刺であるし、暴力団風刺でもある。
教団は電気修理を装って彼女の愛犬を殺し、教団弁護士・江守徹を派遣して脅迫しても相手がひるまないので、遂にはこっそり姿を消した女優を襲うが、そこへ西村が駆けつけ、命からがら退散させる。証言の日に裁判所に向かう警護車も襲われるが、彼女は「サンセット大通り」のグロリア・スワンスン宜しく大見得を切って裁判所の階段を上っていく。
実はこれはある監督の新作映画でしたという種明かしがあるが、それは単なる洒落っ気であり、内容として余り重要視する必要はない。
女優にとっては裁判所も大舞台という幕切れに何故か胸が詰まったが、些か要素を詰め込みすぎて方向性が散漫になった印象は残る。それでもやはり面白かったというのが素直な感想で、暴力団事件が伊丹の自殺に何か関係があるのか今でも気になって仕方がない。
この記事へのコメント
本当に自殺だったんでしょうかね…?私も気になります!
映画に限らず芸術を評価する時に僕が重んじる純粋性という意味で、他の「女」シリーズより劣るような気がするんですね。
僕の評価は個人的に面白かった否かよりその辺りを優先しますので、必ずしもつまらなかったということでもないのです。^^
彼の最期は謎ですね。自殺だとしても理由がはっきりしないです。