映画評「柳生武芸帳」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1957年日本映画 監督・稲垣浩
ネタバレあり

今年生誕100年を迎える映画監督が目白押しだが、明朗時代劇を得意とした稲垣浩もその一人。これは戦後の代表作である。

三代将軍家光の時代、幕府の命運を左右しかねない柳生武芸帳を巡って、肥前忍者・浮月斎(東野英治郎)配下の霞兄弟を軸に、柳生一族、お家復興を狙う竜造寺家遺児・夕姫(久我美子)らが入り乱れて激しい争奪戦を繰り広げる伝奇ロマンで、原作は五味康祐のベストセラー。

今回観た版は色彩が余り良くないが、それはさておき、原作の力もあってお話は頗る面白い。第一部を観る限り武芸帳はマクガフィン的な趣で大した意味はないが、五味の映画化としては「二人の武蔵」とは比較にならない魅力に満ちている。

これだけの人物の入り乱れる話を解り易く流れるようにまとめた脚本(稲垣・木村浩共同)の出来が非常に良く、稲垣演出は快調。

霞兄弟の兄・多三郎に三船敏郎、弟・千四郎に鶴田浩二が扮するが、三船がストレートに恋に邁進する役とは珍しい。

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年06月15日 17:14
TB&コメント有難うございます。こちらにもTBさせて下さい。原作を読んでないですが、映画でもその面白さは十分伝わって来る豪華キャストの娯楽時代劇でしたねー。稲垣浩監督は「決闘巌流島」でも武蔵に三船敏郎、佐々木小次郎に鶴田浩二をキャスティングしてましたね。こちらも面白かったなぁ。
オカピー
2006年06月16日 13:30
ぶーすかさん、こんにちは。
どなたかも書かれていましたが、武芸帳なるものが何だが分らないというマクガフィン的な扱いが活劇として活気のあるものになった所以という気がします。
「宮本武蔵」は内田吐夢版が凄いですよ。内田版は映像で魅せる。
ぶーすか
2006年06月17日 08:22
昔、テレビで見たんですが、中村錦之助がイマイチ好きになれないというのが原因か、記憶に残っているのは「一乗寺の決斗」ぐらいで…。高倉健の旅役者みたいな佐々木小次郎がなんだかイマチだった印象が…。でも錦之助らしいダークな武蔵だったと思いますが…やっぱり記憶が…^^;)。
オカピー
2006年06月17日 15:11
ぶーすかさん、こんにちは。
稲垣さんは絵が意外と大人しく、内田監督のはったりの利いた凄みのある映像と較べると分が悪い、という気がします。
内田監督は日本映画最高の名画と言うべき「飢餓海峡」を作っていますが、そのスケール感の大きさは黒澤監督に優るとも劣りません。

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