映画評「大人は判ってくれない」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1959年フランス映画 監督フランソワ・トリュフォー
ネタバレあり
フランソワ・トリュフォーの長編第1作で、所謂<アントワーヌ・ドワネルもの>第1作。<ドワネルもの>は約20年に渡り同一俳優ジャン=ピエール・レオーを起用して作られた成長記録であり、全世界でも例のないものであります。「二十歳の恋」「夜霧の恋人たち」「家庭」「逃げ去る恋」と続きますが、後で全作レビューする予定であります。お楽しみに。
下は82年10月に記述した拙いレビューの採録であります。悪しからず。
トリュフォーの長編第1作であるこの作品は、ヌーヴェルヴァーグの代表作であるが、彼の作品群を3タイプに分けた場合、“子供”を描いたグループに属する。
主人公アントワーヌ(レオー)は12歳で、共働きの両親と三人暮らし。母親(クレール・モーリエ)の連れ子であるが、色々と用を言いつけられるので宿題をする暇もない。先生は理解がなく、ある時友人と共に学校をずる休みしてしまう。
この辺りでは、映画を観たり、遊園地で遊ぶ様子が頗る生き生きと描かれているのが印象的だが、「母が死んだ」と嘘をついたことが問題に。先生には叱られ両親には咎められ、家出して工場に寝泊りしたり学校で反抗するうちに大変な不良少年扱いされ、遂に両親の手で少年鑑別所へ送られてしまう。
鑑別所から脱走して海へ駆けていく少年のストップモーションで終わる本作は、トリュフォーの自伝的要素の濃い作品とされ、それ故かスクリーンから大人たちの無理解に対する憤りが強く感じられる。大したことでもないのに不良少年にされたという怒りがある。
それが後の「思春期」になると、大人たちへの視線がずっと柔らかくなっている。観る順番が逆になったから言えることだが、その辺りに一人の人間(トリュフォー)の精神的成長が感じられ興味深い。
全体としてヌーヴェルヴァーグ作品らしく自由な作り方がされているが、根底にしっかりした演出力が既に備わっていることが伺われる秀作である。
1959年フランス映画 監督フランソワ・トリュフォー
ネタバレあり
フランソワ・トリュフォーの長編第1作で、所謂<アントワーヌ・ドワネルもの>第1作。<ドワネルもの>は約20年に渡り同一俳優ジャン=ピエール・レオーを起用して作られた成長記録であり、全世界でも例のないものであります。「二十歳の恋」「夜霧の恋人たち」「家庭」「逃げ去る恋」と続きますが、後で全作レビューする予定であります。お楽しみに。
下は82年10月に記述した拙いレビューの採録であります。悪しからず。
トリュフォーの長編第1作であるこの作品は、ヌーヴェルヴァーグの代表作であるが、彼の作品群を3タイプに分けた場合、“子供”を描いたグループに属する。
主人公アントワーヌ(レオー)は12歳で、共働きの両親と三人暮らし。母親(クレール・モーリエ)の連れ子であるが、色々と用を言いつけられるので宿題をする暇もない。先生は理解がなく、ある時友人と共に学校をずる休みしてしまう。
この辺りでは、映画を観たり、遊園地で遊ぶ様子が頗る生き生きと描かれているのが印象的だが、「母が死んだ」と嘘をついたことが問題に。先生には叱られ両親には咎められ、家出して工場に寝泊りしたり学校で反抗するうちに大変な不良少年扱いされ、遂に両親の手で少年鑑別所へ送られてしまう。
鑑別所から脱走して海へ駆けていく少年のストップモーションで終わる本作は、トリュフォーの自伝的要素の濃い作品とされ、それ故かスクリーンから大人たちの無理解に対する憤りが強く感じられる。大したことでもないのに不良少年にされたという怒りがある。
それが後の「思春期」になると、大人たちへの視線がずっと柔らかくなっている。観る順番が逆になったから言えることだが、その辺りに一人の人間(トリュフォー)の精神的成長が感じられ興味深い。
全体としてヌーヴェルヴァーグ作品らしく自由な作り方がされているが、根底にしっかりした演出力が既に備わっていることが伺われる秀作である。
この記事へのコメント
好き好きな想いが強過ぎていまいち書きにくいのがトリュフォーです。
オカピーさんのは冷静適切なレビューで読みやすくて好きです♪
ところで、リンクを貼らせていただきたいのですが、別館でいいですか?
誠に恐縮です。ポイントを押えた短評を心がけております。
リンクは別館で結構です。本館では毎月欠かさず月間レビューをしていますが、ジャンル別ベストというのもぽつりぽつりとやっております。
こちらからも別館にリンクを貼らせて戴きますね。
トリュフォーはどちらかというと主題を掘り下げるのではなく、映画的な映画を作ろうという意欲が強い人だったので、書きにくい人ですね。
「突然炎のごとく」には映画文法辞典と言いたくなります。正に映像が言葉ですね。
ヒッチコックのコンプリートを始めました。トリュフォーと黒澤明と小津安二郎くらいまでは年内にやりたいのですが、欲張りすぎかな。尤も、短評なのでやってやれないことは無いですけどね。
トリュフォーで素敵な記事を見つけちゃった。
↓
http://lavenderangel.blog87.fc2.com/
のぞいてみては。
出かけて参りました。
トリュフォーがお好きな方ですか。いいですねえ。筆者はどうも女性ですね。ますます良いですねえ(笑)。
それから、ドロンとゴダールの記事も読みましたよ。トムさん、嬉しさの余り椅子から転げ落ちたでしょう!?
女性のゴダール・ファンは珍しいなあ。評論家の中には少なからずいらっしゃいますけどね。全体的にトムさん好みの作品が多そうでした。
そしてバザンとの出会い。
P様未読だったら是非読んで! 私でも泣いたからP様はきっと号泣だよ。良かった!
当然未読ですよ。^^;
ボンビー(貧乏)だからなかなか手が出ないんですけど、頑張ってみますね。いつになるか保証できませんが。
>私でも泣いたからP様はきっと号泣
姐さんが喧伝するから、僕の泣き虫も有名になりましたね(笑)。
ゾラの「居酒屋」を読んでも涙が止まらなかったからなあ。
フランソワ・トリュフォー監督の影響を受けた人(邦画の監督)も多い事でしょう。
>群馬県は、台風に関しては非常に安全なところ
愛知県は現在強い雨が降っています。
>実は9月17日・18日に初期の二作品を取り上げたのですが
まだ見てません。すみません。
>岸田首相のライバルたちは今の苦境を喜んでいるという意見も聞きましたよ。
それがライバル達の本音でしょう。なぜか思い出した言葉「王は生贄である」。以前中央公論で読んだ事です。
>お上(かみ)には逆らわないという江戸時代の人のような心理なんでしょうね。
お上に逆らったら切腹・打ち首と同じような心理でしょうか?極端過ぎますが・・・(汗)。
>長回しが多い作品です。
>フランソワ・トリュフォー監督の影響を受けた人(邦画の監督)も多い事でしょう。
長回しと言えば、ヒッチコック・マニアぶりを発揮したスリラー「黒衣の花嫁」の幕切れにおけるサスペンスフルな長回しが僕は好きです。
この間「子供はわかってあげない」という映画を観ましたよ。原作者(田島列島)が本作を知っていたことは間違いないですね。
トリュフォーが脚本を書き、先日亡くなったジャン=リュック・ゴダールが映像化した「勝手にしやがれ」は同時代的に大きな影響を与えて、模倣作品が多く作られました。
トリュフォーの恋愛映画に影響を受けた人は多いと思いますが、名前をあげろと言われるとすぐに出て来ませんねえ。
>お上に逆らったら切腹・打ち首と同じような心理でしょうか?極端過ぎますが・・・(汗)。
現在の貧乏右派の心境は、承認欲求と関連していると思います。自身に対する承認欲求は満たされないが、日本という国がその代わりをしてくれる。実際には、日本は今は落ち目の三度笠なのんですけど。
実際にも問題の多い中国嫌いはともかく、韓国嫌いが多いのは、見下していたかの国が伸びて来たという心理が働いていると思います。かの国のあることないことを持ち出して、相対的に日本を優れた国とみなそうと、もがきあがいている。
ところで、29日にseesaaブログへの移行を敢行しようと思っています。28日まではこちらでレスしますが、その後(多分10月1日~)はseesaaでのコメントのやり取りに統一しようと思っていますので、コメントは27日までにお願いします<(_ _)>
ラストで少年が脱走して海へ行く。その後どうなるのか?あとは観客の想像に任せる。とても良かったです。
フランソワ・トリュフォー監督作品で僕が見た事があるのは「華氏451」「暗くなるまでこの恋を」です。
>見下していたかの国が伸びて来たという心理
優越感は劣等感の裏返しなのでしょうか?
>29日にseesaaブログへの移行を敢行しようと思っています。
移行する管理人さんが多い時期のようです。
>ラストで少年が脱走して海へ行く。その後どうなるのか?あとは観客の想像に任せる。とても良かったです。
本作は、結果的に1979年まで続くアントワーヌ・ドワネルものの言われる第一作で、トリュフォーの半自伝的映画と言われていますね。
しかし、その後シリーズは半ば喜劇的になるので、本作のイメージを大事にしたければ、ご覧にならないほうが良いかも。僕はこの後の作品も洒落っ気がいっぱいで、好きですが。
>「華氏451」「暗くなるまでこの恋を」
「華氏451」は小学生の時にTVで観ました。当時は映画館で公開されてさほど経っていない頃ですね。僕が成人するまでに地上波で何度も放映された人気作です(文芸派のトリュフォーには珍しいこと)。
「暗くなるまでこの恋を」はTVで観た後、東京の名画座でも観ました。ちょっとしたサスペンス映画。結局この後サスペンス映画を撮るのは遺作の「日曜日が待ち遠しい」までありません。僕はトリュフォーのサスペンス映画を愛していますが、何故か世評が余り良くなかった為。
トリュフォーの恋愛映画「突然炎のごとく」「柔らかい肌」「隣の女」は鬼気迫る傑作と思います。万人向きではありませんが。
>優越感は劣等感の裏返しなのでしょうか?
そういう面は多分にあると思います。
特に現在の日本は経済や技術的に後塵を拝す形になっている面が否定できず、国粋主義者たちは、他の国を貶めることで、日本国は凄いということにしたいわけでしょう。
僕は、TV局が作っている“日本は凄い”的な番組が嫌いでしてね。もっと外国の良いところを紹介した方が良いと思う。
>移行する管理人さんが多い時期のようです。
ウェブログが来年1月に完全撤退し、記事が全く読めなくなってしまうので、仕方なく。用心棒さんは先手を取った形。
ガイドを読んだところ、それほど難しくないようですが、失敗したら悲惨なことになるかもです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b57cf66cb4958e3aaccf5c6c7db2d400914c7cfd
>第一作で、トリュフォーの半自伝的映画と言われていますね。
第一作で自叙伝を描きたいと思ったのでしょう。
映画は監督の人生観が反映される事が多いです。
>「華氏451」
あれも言論統制に対する批判でしょうね。そして庶民に知恵を与えないようにした事も批判!
>「暗くなるまでこの恋を」
カトリーヌ・ドヌーブが美しかったです。
>もっと外国の良いところを紹介した方が良いと思う。
日本のテレビ局もそこから再出発です。
>用心棒さんは先手を取った形。
僕も用心棒さんのおかげで助かっています。勉強になる事が多いです。
>明日は国葬。それに合わせて公開される映画。監督は元日本赤軍とか。
事件から二ヵ月で完成ですか。速いですなあ。
>映画は監督の人生観が反映される事が多いです。
特に純文学系の監督は、そうですね。
大衆映画の監督にもそこはかとなく人生観を反映している人が多いと思います。
>あれも言論統制に対する批判でしょうね。そして庶民に知恵を与えないようにした事も批判!
この映画(原作のSFの有名で、こちらも面白い)に似た設定の作品は今でもたびたび作られますね。
>僕も用心棒さんのおかげで助かっています。勉強になる事が多いです。
自分のブログ経営が大変で、なかなか用心棒さんのところにお邪魔できませんが、移行終了後にご挨拶に参りたいと思います。
>事件から二ヵ月で完成ですか。速いですなあ。
監督がそんな事は大した事はないと言ってるそうです。
>大衆映画の監督にもそこはかとなく人生観を反映している人が多いと思います。
森一生監督もそうですか?
>移行終了後にご挨拶に参りたいと思います。
楽しみにしております。
>「カッコーの巣の上で」看護婦長を演じたルイーズ・フレッチャーさんが亡くなりました。
僕が映画ファンになった頃は引退状態で、「カッコーの巣の上で」で本格的に復活した感じでした。もう40歳くらいでしたね。
88歳での死去。女性の平均寿命が80歳くらいのアメリカ人としては長生きの部類でしょう(亡くなったのはフランスでだそうですが)。
合掌。
>監督がそんな事は大した事はないと言ってるそうです。
すぐやってしまう決断力が凄いですね。
脅迫されて上映をやめた映画館があったようです。テロを描いた映画を上映するとは何事か!ということらしいですが、そもそもあの事件はテロ事件ではありません。政治的目的ではないので、単なる人殺しです。見てもいない映画を批判するのもデタラメです。
>森一生監督もそうですか?
技術への傾倒が目立つ大映映画の監督は解りませんね^^;
>楽しみにしております。
全く新しく作る方が精神的に楽です^^;
>「カッコーの巣の上で」で本格的に復活した感じでした。もう40歳くらいでしたね。
四十路だったから良い味を出せたのかも知れません。
>脅迫されて上映をやめた映画館があったようです。
やはり、そういう事がありましたか・・・。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ccb11ea6ad86740c6ba8b08901f9a8b284917812
「お客様の安全第一を考え中止を決めた」と言うのは誠実な言葉です。
>見てもいない映画を批判するのもデタラメです。
見てから批判するべきです。
>技術への傾倒が目立つ大映映画の監督は解りませんね^^;
監督よりも映画製作会社の意見が大きいですね。
>全く新しく作る方が精神的に楽です^^;
ある時、予告なしに消滅した映画関係のブログもありました。最後にお礼を言いたかったです。せめてその方が他のブログにコメントを書いてらっしゃれば良かったのですが・・・。
お気づきでしょうか?
既に新しいブログに移行して、そこからの投稿になっています!
見た目では殆ど違いが解らない!
違いを判ってくれない(笑)
それはウェブリが転送サービスをしているからですが、来年2月からは恐らくそのサービスもなくなるので、忘れないうちにこのブログのブックマークをお願い致します。
>「お客様の安全第一を考え中止を決めた」と言うのは誠実な言葉です。
良いことですが、結局はテロに屈した形で、そういう脅す連中に対しては、どっちがテロリストだと言いたくなりますね。
愛知のビエンナーレでも同じようなことがありました。
思考停止している悲しい人達。
>ある時、予告なしに消滅した映画関係のブログもありました。
おかげさまで、(作者にとってはともかく読者にとって)何の問題もなく移行が完了しました。
3・11で僕の映画ブログ友達も随分消えてしまいました。岩手の方は北海道へ転居したことが確認できましたが、DASH村の大体の場所を教えてくれた福島県の方はどうされていらっしゃるか。元気にやっていると良いですが。