映画評「帰らざる夜明け」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1971年フランス映画 監督ピエール=グラニエ・ドフェール
ネタバレあり
ピエール=グラニエ・ドフェールがジョルジュ・シムノンの小説を映像化した心理サスペンス。再鑑賞作品。
フランス南部の田園地帯、野良仕事に励む中年未亡人シモーヌ・シニョレの前に流れ者アラン・ドロンが辿り着く。正体不明だがまめに農作業や機械修理をこなす彼を下宿させ、好意を抱いていく彼女であるが、彼が赤子を抱える彼女の姪オッタヴィオ・ピッコロとも懇ろになり、激しい嫉妬心に苛まれる。が、実は彼は脱獄囚で、シモーヌと仲の悪い義弟夫婦が警察に男の存在を告げた為こののどかな農村に銃声が響く騒ぎとなる。
驚かされるのは、脱獄囚とは言え射殺を前提に警察が行動を取ること、周囲に民間人がいるのに平気で発射を繰り返すことである。匿った罪があるものの平凡な主婦シモーヌが流れ弾に当たって死んでしまう辺りにフランスの警察のあり方に問題を提起したような印象を受ける。
平凡な主婦とは言え家政婦時代に親子に強姦された過去や義弟夫婦、姪への憎悪が絡む心理が、静かな田園地帯を舞台に、しっとりしたトーンで語られる辺りが魅力と言えよう。
次回作「離愁」には及ばないが、僕はドフェールのタッチが大好きである。
1971年フランス映画 監督ピエール=グラニエ・ドフェール
ネタバレあり
ピエール=グラニエ・ドフェールがジョルジュ・シムノンの小説を映像化した心理サスペンス。再鑑賞作品。
フランス南部の田園地帯、野良仕事に励む中年未亡人シモーヌ・シニョレの前に流れ者アラン・ドロンが辿り着く。正体不明だがまめに農作業や機械修理をこなす彼を下宿させ、好意を抱いていく彼女であるが、彼が赤子を抱える彼女の姪オッタヴィオ・ピッコロとも懇ろになり、激しい嫉妬心に苛まれる。が、実は彼は脱獄囚で、シモーヌと仲の悪い義弟夫婦が警察に男の存在を告げた為こののどかな農村に銃声が響く騒ぎとなる。
驚かされるのは、脱獄囚とは言え射殺を前提に警察が行動を取ること、周囲に民間人がいるのに平気で発射を繰り返すことである。匿った罪があるものの平凡な主婦シモーヌが流れ弾に当たって死んでしまう辺りにフランスの警察のあり方に問題を提起したような印象を受ける。
平凡な主婦とは言え家政婦時代に親子に強姦された過去や義弟夫婦、姪への憎悪が絡む心理が、静かな田園地帯を舞台に、しっとりしたトーンで語られる辺りが魅力と言えよう。
次回作「離愁」には及ばないが、僕はドフェールのタッチが大好きである。
この記事へのコメント
いつものことながら、作品評というよりアラン・ドロンに限った狭い範囲のドロン映画史で記事にしてます。TBさせていただきます。
オカピーさんが、ドフェールのタッチが好きだとは意外でしたが、オカピーさんのことです、恐らく、無意識に彼の師匠マルセル・カルネの匂いを敏感に感じとっておられたのでは?
ドフェールがカルネの弟子だったということは、実はわたしも最近知ったことです。ドフェール自体の情報が、あまりにも少なすぎますよね。この作品や『離愁』など、良い作品も多くあるんですがね。
この作品は(他の作品も、そうかも知れませんが)、ドロンのジャン・ギャバンへの想いが、かなり強い作品だと、ドロン・ファンとしては感じています。記事に書きましたが、シモーヌ・シニョレとの共演は、彼の目標ともいえるギャバンを乗り越えるために必要だったのだとも思っています。
ただ、少しシニョレ女史に無理させすぎかなあ?恋愛をああいうかたちで演じる彼女に苦しさを感じました(うまいですけどね)。見たくはなかった。
個人としては、ダニエル・ダリューあたりを選んで欲しかったです。
アラン・ドロンのファンは少なくないでしょうが、この作品の知名度は低いでしょうね。
私もドフェールのタッチが好きだと公言しながらも6点ですしね。逆に、彼でなかったら6点も行かなかったのではないかと思います。彼の作品には一般的な意味における詩的なムードがあるんですね。それは確かにマルセル・カルネの詩情と共通するものがあるかもしれません。ドフェールとの関係は全く知りませんでした。
カルネは個人的には「嘆きのテレーズ」が一番好きで、「悪魔が夜来る」の幻想的タッチも気に入っています。「天井桟敷の人々」は私にはスケールが大きすぎてまだまだ把握途中といったところ。
いつもながら、トムさんの分析・解析は興味深いです。
逃亡犯を匿うという設定がそもそもクラシックで、匿われるドロンは適材適所という印象でしたね。
演技力から言ってシニョレだったのでしょうが、仰るように適材とは言えないかもしれませんね。年齢から言えば、同世代のミシェリーヌ・プレールなどが良かったのではという気がします。ただ、農家の主婦という設定がネックになったでしょうね。
ミシェリーヌ・プレールとは・・・。
彼女の未亡人役も良いですね。確かに彼女はオータン・ララやジャン・ドラノワの作品にはもちろん、ベッケルやフリッツ・ラングにも鍛えられているようですから、いい配役かもしれません。もしかしたら、農家の女将さんの役も、うまくできたかもしれませんよ。
「天井桟敷の人々」は、本当にスケールが大きいですよね。わたしも再見の必要を感じています。
ドロンとカルネは、種々の事情で良い関係はつくれなかったようですが、その代償として、ドロンはドフェールで3作も撮ったのかも知れません。カルネ=ドロンも観てみたかったなあ。
では、また。
>ミシェリーヌ・プレール
調べてみたら彼女はシニョレより一つ下ですし、演技力もあるし、やや上品な農家の主婦という感じでやれたかもしれませんね。
>マルセル・カルネ
60年代以降のカルネは余りパッとしない印象があるものの、65年の「マンハッタンの哀愁」なんてなかなか良い作品で、まだまだ老け込む年ではなかったはずです。
ドロンとの組合せが実現したなら、「嘆きのテレーズ」のようなシャープな心理サスペンスなど観てみたかったですね。