映画評「静かな生活」
☆☆★(5点/10点満点中)
1995年日本映画 監督・伊丹十三
ネタバレあり
伊丹十三監督の8作目。
妹の夫君であるノーベル賞作家・大江健三郎の同名小説を映画化したものだが、僕は気に入らなかった。大江にはこの作品の音楽を担当した光という息子がいて、知的障害者としての息子をモチーフにして書かれたのが原作である。
大江を思わせる、大作家だがどこか不器用な人物・山崎努が細君と共に豪州へ8ヶ月間の仕事に出かける。佐伯日菜子演ずる娘は絵本(絵日記か)を書きながら、知的障害者である兄・渡辺篤郎の世話を行う事になる。彼の言語能力に些かの問題をあるのは生来脳に障害があるからだが、反面音感は抜群。
ある時から兄を水泳教室に通わせる事にするが、抜群の指導力を発揮するインストラクターの今井雅之は過去に事件の容疑者となったことがある裏のありそうな青年で、実際彼女を襲おうとするのである。兄により危機を潜り抜けた彼女は8ヶ月間の絵日記をまとめ、兄のアドヴァイスにより「静かな生活」と名付ける。
純文学的な意味はいざ知らず、見終わった後心に残るのは、平凡な表現だが、二人の兄妹愛である。実際それが主題でもあろうが、それにしては感じの悪い部分が多い。
特に作家が今井君の手記を基に書いたという設定の小説が御丁寧に延々と語られる部分は首を傾げ続けた。時間配分上もドラマツルギー上も甚だバランスが悪いのである。しかも内容が強姦殺人を描くもので、およそ兄妹愛を描くものとしてはふさわしくない。今井君が本性を表す中盤までと最終章は実に感じが良いので、勿体無い。感じが悪い部分があるからこそ「静かな生活」というタイトルが皮肉になるわけだが。
1995年日本映画 監督・伊丹十三
ネタバレあり
伊丹十三監督の8作目。
妹の夫君であるノーベル賞作家・大江健三郎の同名小説を映画化したものだが、僕は気に入らなかった。大江にはこの作品の音楽を担当した光という息子がいて、知的障害者としての息子をモチーフにして書かれたのが原作である。
大江を思わせる、大作家だがどこか不器用な人物・山崎努が細君と共に豪州へ8ヶ月間の仕事に出かける。佐伯日菜子演ずる娘は絵本(絵日記か)を書きながら、知的障害者である兄・渡辺篤郎の世話を行う事になる。彼の言語能力に些かの問題をあるのは生来脳に障害があるからだが、反面音感は抜群。
ある時から兄を水泳教室に通わせる事にするが、抜群の指導力を発揮するインストラクターの今井雅之は過去に事件の容疑者となったことがある裏のありそうな青年で、実際彼女を襲おうとするのである。兄により危機を潜り抜けた彼女は8ヶ月間の絵日記をまとめ、兄のアドヴァイスにより「静かな生活」と名付ける。
純文学的な意味はいざ知らず、見終わった後心に残るのは、平凡な表現だが、二人の兄妹愛である。実際それが主題でもあろうが、それにしては感じの悪い部分が多い。
特に作家が今井君の手記を基に書いたという設定の小説が御丁寧に延々と語られる部分は首を傾げ続けた。時間配分上もドラマツルギー上も甚だバランスが悪いのである。しかも内容が強姦殺人を描くもので、およそ兄妹愛を描くものとしてはふさわしくない。今井君が本性を表す中盤までと最終章は実に感じが良いので、勿体無い。感じが悪い部分があるからこそ「静かな生活」というタイトルが皮肉になるわけだが。
この記事へのコメント
確かに、小説のくだりが、それまでのお父さんのキャラとそぐわないな、とは感じました。原作は未見なので、何とも言えませんが……。
こちらこそTBとコメント有難うございます。
良い部分も多かったのですが、あそこまでバランスを崩してしまうとどうも戴けないなあと思ってしまいました。
>何だか後味が悪い作品でした。
大江健三郎の小説(僕が読んだもの)は、後味は良くないものばかりですが、これも良くなかったですねえ。大分忘れましたが。
>今井雅之
舞台劇「THE WINDS OF GOD」。30年以上前に名古屋で見ました。まさに熱演でした!
>一番良かったのは「スーパーの女」かな?
僕も「マルサの女」か「スーパーの女」かで悩むところです。
>>今井雅之
>舞台劇「THE WINDS OF GOD」
おおっ、演劇のほうをご覧になりましたか。
僕は今井自身が監督もした映画版を見ましたが、映画としてはお粗末でした。演劇版が良くても映画版が良くないということはままあります。
>おおっ、演劇のほうをご覧になりましたか。
今井雅之と戦友が短距離走で競う場面。すごい熱気と体力でした!
また、昔の小学校の教室にあったような木造りの机や椅子を積み上げてゼロ戦という事にする。それがまた良かったです!
>演劇版が良くても映画版が良くないということはままあります。
よくあるパターンです。成功した例は「蒲田行進曲」でしょう。監督の力量ですね。
>僕も「マルサの女」か「スーパーの女」かで悩むところです。
「マルサの女」も良かったですよ。
>よくあるパターンです。成功した例は「蒲田行進曲」でしょう。監督の力量ですね。
>すごい熱気と体力でした!
そう、演劇では熱気で感動させることもできますが、映画ではそれが通用しない。
今井雅之は脚色、監督(演出)は他人に任せた方が良かったでしょう。特に演出面ですかね。
*オカピーの採点表
ジョン・レノン第2弾「イマジン」を明日か明後日アップする予定です。こちらへのコメントも期待していますよ!
ジョンの場合は、SASと違って改めて聴き込んだり、元ネタを探す必要がないので、どんどんアップできそうです。
こんばんは。先ほどトム・クルーズが同じく1988年に主演した「カクテル」を見ました。ヒットしたそうですが、傑作だとは思えませんでした。双葉師匠も「最初の方は面白いけど、だんだんつまらなくなる。」と評していました。
さて、この「レインマン」。公開当時に映画館で見ました。僕にとってダスティン・ホフマンは大好きな役者なので。
アスペルガー症候群の人を演じる彼は素晴らしかったです!もちろん双葉師匠も作品及びホフマンの演技を褒めていました。
>そう、演劇では熱気で感動させることもできますが、映画ではそれが通用しない。
小説・芝居・テレビドラマと違って、映画には別の才能が要ると田山力哉氏が書いています。
>今井雅之は脚色、監督(演出)は他人に任せた方が良かったでしょう。特に演出面ですかね。
僕は映画版は見ていませんが、そういう事なんでしょうね。
ドラマ版は結構面白かったです。
>すみません。「レインマン」の記事には投稿できませんでした。
僕がコピペして投稿したらできましたが、投稿者の“お名前”が自分になっていましたので、”蟷螂の斧”に変えて投稿しようとしたら不可。今度は、“お名前”なしでやってみたら、出来ました。
“蟷螂の斧”というハンドルネームが引っかかっている可能性があります。
こちらの記事ではできているので、ハンドルネームと記事との間に相性があるようにも思えますが、そんなことはないだろうなあ。謎です。
明日またやってみます。
*「レインマン」の件
【蟷螂の斧】ではやはりエラーになり、【蟷螂之斧】ではできました。
今後エラーが出た場合は、【蟷螂之斧】でやってみるのも手かと思います。
「レインマン」へのレスはまた後で、「レインマン」の記事にて行います。