映画評「カルメン故郷に帰る」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1951年日本映画 監督・木下恵介
ネタバレあり
日本最初のカラー映画。その名誉に浴することになった木下恵介監督としては大変張り切ったことだろう。出来栄えもその名に恥じない。再鑑賞作品。
まず、舞台が木下の46年作「わが恋せし乙女」と同じ浅間山に近い北軽井沢というのが(準地元なので)嬉しい。
家出して東京で“芸術”修行中のきん(高峰秀子)がリリー・カルメンと名乗り、友人の朱美(小林トシ子)と共に故郷に錦を飾る。錦を飾ったと思っているのは本人だけで、実は彼女はストリッパーに過ぎない。
カラー映画だぞと木下が頭を捻ったのかもしれないが、二人の着ている裾割れ衣装が極彩色のあでやかさで、当時この作品を観た人はその色彩をよく記憶していることであろう。
おつむが少々弱くストリッパーを芸術と信じ込んでいるヒロインの様子も大変可笑しいし、村人たちは彼女を影で馬鹿にしつつも、戦後回復期の新しい風俗であるストリップに興味津々。それを木下は、舞台が揺れてまともに演奏が出来ず、観客の帽子も吹き飛ぶ、といったドタバタで楽しく表現している。
その一方で、ヒロインに未だ幼い日本経済の中で奮闘している日本人の姿を重ねる観客も多いだろう。また、失明した先生(佐野周二)の存在は戦争の影を引き摺りながらも日本がようやく戦後の発展に向けて本格スタートを切ったという印象を醸し出してはいまいか。
他愛なく実に楽しい作品というだけでなく、戦後5、6年辺りの日本社会を切り取った風俗劇として実に良く出来た佳編である。
同じ題名で内容の異なるモノクロ版は未だに観るチャンスに恵まれない。
1951年日本映画 監督・木下恵介
ネタバレあり
日本最初のカラー映画。その名誉に浴することになった木下恵介監督としては大変張り切ったことだろう。出来栄えもその名に恥じない。再鑑賞作品。
まず、舞台が木下の46年作「わが恋せし乙女」と同じ浅間山に近い北軽井沢というのが(準地元なので)嬉しい。
家出して東京で“芸術”修行中のきん(高峰秀子)がリリー・カルメンと名乗り、友人の朱美(小林トシ子)と共に故郷に錦を飾る。錦を飾ったと思っているのは本人だけで、実は彼女はストリッパーに過ぎない。
カラー映画だぞと木下が頭を捻ったのかもしれないが、二人の着ている裾割れ衣装が極彩色のあでやかさで、当時この作品を観た人はその色彩をよく記憶していることであろう。
おつむが少々弱くストリッパーを芸術と信じ込んでいるヒロインの様子も大変可笑しいし、村人たちは彼女を影で馬鹿にしつつも、戦後回復期の新しい風俗であるストリップに興味津々。それを木下は、舞台が揺れてまともに演奏が出来ず、観客の帽子も吹き飛ぶ、といったドタバタで楽しく表現している。
その一方で、ヒロインに未だ幼い日本経済の中で奮闘している日本人の姿を重ねる観客も多いだろう。また、失明した先生(佐野周二)の存在は戦争の影を引き摺りながらも日本がようやく戦後の発展に向けて本格スタートを切ったという印象を醸し出してはいまいか。
他愛なく実に楽しい作品というだけでなく、戦後5、6年辺りの日本社会を切り取った風俗劇として実に良く出来た佳編である。
同じ題名で内容の異なるモノクロ版は未だに観るチャンスに恵まれない。
この記事へのコメント
リリー・カルメンの高峰秀子と、大石先生の高峰秀子とどっちが彼女本人に近いのかとっても興味があります。
まったく別人に見えませんか?
>まったく別人に見えませんか?
いや、正に。
かよちーのさんともそんな話をしました。さらに「乱れる」のようなヨロメキも出来ますしね。芸達者な人だなあ。
どちらが本人に近いか・・・本人は透明な人かもしれませんね。だから、役に応じて色を変えられる・・・そんな感じがします。