映画評「ディープ・ブルー」(2003年)

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2003年イギリス=ドイツ映画 監督アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット
ネタバレあり

映画の<え>の字も知らないような者の手になる馬鹿らしいCG映画(「トルク」)にうんざりした翌日に、実写による圧倒的なスペクタクルに目が釘付けになろうとは何とも皮肉である。

半世紀前にジャック=イーヴ・クストーとルイ・マルが「沈黙の世界」という傑作自然ドキュメンタリーを発表したが、これは現在の「沈黙の世界」と言って良いだろう。
 僕は元来この類のドキュメンタリーが好きでTVでも良く見るのだが、これほどの素晴らしい内容がこれほど美しく圧倒的な映像で次々と展開するのは初めてである。

開巻直後のイルカに思わず頬が緩む。アホウドリの視点からやがて海面、海中へと降りていく構成も良い。
 コメツキガニのユーモラスな動きがあるかと思えば、ジンベイザメやシロナガスクジラの巨大さに圧倒される。この二種をじっくり見られただけでも至福というものだ。
 カツオドリの襲撃をイワシの視点で捉え、そのイワシが竜巻のような物凄い集団を形成し、そこへクジラが襲い掛かる一連の場面には固唾を飲む。
 言葉を失ったところへ今度は深海に次々と現れる深海の発光生物の見事なこと。奇妙な形状もさることながら、その複雑なネオンもびっくりの鮮やかさ。中にはDNAを思わせるものもあって興奮を禁じ得ない。
 この映像と比較すると些か分が悪いのだから、中盤皇帝ペンギンが大集団を形成してマイナス50度風速45mを堪え忍んで卵を守る姿も圧巻である。

TV界に自然ドキュメンタリーなど存在しなかった時代の「沈黙の世界」も圧倒的だったはずだが、TVにこれだけドキュメンタリーが溢れている時代に同じくらいの価値がありそうなスペクタクルが見られるとは思わなかった。これを観たらCGは実写に、演出は自然に遠く及ばないことを痛感する。


TBが反映されない十瑠さん(SCREEN)の記事はこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/8seasons/e/a132576ba9a71bd27221ac835ac49051

この記事へのコメント

kobitopenguin
2006年01月06日 10:47
明けましておめでとうございます~。
今作は素晴らしいドキュメンタリーでしたよね!ここまで映し出されているのはすごいことですよね。ただただ感心しっぱなしでした。
オカピー
2006年01月06日 13:46
kobitopenguinさん、明けましておめでとうございます。
CGに溢れている今日、とにかく実写の強みに感心致しました。内容的には弱肉強食などのテーマも含まれていますが、そんな使い古されたテーマなどどうでも宜しい、という印象があります。
実写と自然の素晴らしさ、それに尽きますね。
2006年04月23日 01:27
私も今日「ディープ・ブルー」見ました。
本当に驚かされました。
「生命のドラマ」っていうコメントがぴったりですね。
映画館で見た「皇帝ペンギン」よりずっと感動しました。
オカピー
2006年04月23日 15:45
へびにょろさん、初めまして。
生命の強さ、自然の凄さに圧倒されますね。
TVならハイビジョンの大型画面で見ないと、この感動は得られません。プラズマを買った第1弾として観るなら、最高の一編でしょう。大成功でしたね。
2006年04月24日 22:45
オカピーさん。トラックバックさせて頂きました。
(今日、やっとやり方が分かりました。)
今回レンタルで見たんですが、妻が気に入ったので
「母の日」のプレゼントとしてディープブルーを購入することにしました。
これからも宜しくお願いします。
オカピー
2006年04月25日 13:46
へびにょろさん、こんにちは。
トラックバックもやり方が分れば簡単ですが、私もできるようになるまで数週間もかかりました。
こちらこそ宜しくお願いします。
カカト
2007年03月15日 15:38
オカピーさん、こんにちは。
この映画を観てから、鰯を食べる時にあの渦を巻いて逃げる鰯の姿を思い浮かべてしまいます。
鰯っておいしいですよね。海に感謝です。
オカピー
2007年03月16日 02:31
カカトさん、こんばんは。
あの竜巻のような集団は凄かったですね。
食物連鎖と言いながら、命に対しては過敏な私としては、手を合わせて魚くんたちを戴いております。
鰯もいいけど、マグロ好きです。えへへ。しかし、最近マグロ高いです。世界がよってかたって日本人をいじめています(笑)。鯨肉も30年くらい食べてないなあ(懐かしがっている顔)。

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