映画評「男はつらいよ」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1969年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
「男はつらいよ」シリーズの他の作品はテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。
主人公の車寅次郎が奄美大島でハブに咬まれて死んでしまう、というのがTVシリーズの幕切れ。視聴者の多くがそれに抗議した結果映画化が企画され、結局、世界映画史上最多を誇る全48本のシリーズとなり、国民映画となった。
夫々2~5回ずつ観ているが、各編の完成度の高さこそ世界に誇るべきと思わずにはいられない。
この作品を初めて観たのは製作の約10年後で、それ以前に何本も別のシリーズ作を観ていたので、妙に感じる部分もあった。
例えば、中学生の時に家を飛び出した寅次郎(渥美清)が数十年ぶりに故郷の柴又へ戻ってきた時、妹のさくら(倍賞千恵子)が博(前田吟)と結婚する前なのである。
それはともかく、寅さんはさくらの見合いを壊す一方で博の恋を成就させ、初めてのキューピッド役を果たす。また、御前様(笠智衆)の娘(光本幸子)の結婚により失意のうちに再び旅に出る、というのは続編製作を想定したような印象もあり興味深い。
他方、シリーズのくびきのない自由奔放さや後の作品と違う印象を与える部分が少なからずある。
寅次郎にヤクザ色が強い。寅さんの涙。彼の歌声が夜空に響く場面は、意外と保守性を嫌う山田洋次らしい実験性を感じる、等々。
全てがここから始まったと思うと感慨深いものがある。
そこで一句。
可笑しくてやがて哀しき寅次郎
1969年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
「男はつらいよ」シリーズの他の作品はテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。
主人公の車寅次郎が奄美大島でハブに咬まれて死んでしまう、というのがTVシリーズの幕切れ。視聴者の多くがそれに抗議した結果映画化が企画され、結局、世界映画史上最多を誇る全48本のシリーズとなり、国民映画となった。
夫々2~5回ずつ観ているが、各編の完成度の高さこそ世界に誇るべきと思わずにはいられない。
この作品を初めて観たのは製作の約10年後で、それ以前に何本も別のシリーズ作を観ていたので、妙に感じる部分もあった。
例えば、中学生の時に家を飛び出した寅次郎(渥美清)が数十年ぶりに故郷の柴又へ戻ってきた時、妹のさくら(倍賞千恵子)が博(前田吟)と結婚する前なのである。
それはともかく、寅さんはさくらの見合いを壊す一方で博の恋を成就させ、初めてのキューピッド役を果たす。また、御前様(笠智衆)の娘(光本幸子)の結婚により失意のうちに再び旅に出る、というのは続編製作を想定したような印象もあり興味深い。
他方、シリーズのくびきのない自由奔放さや後の作品と違う印象を与える部分が少なからずある。
寅次郎にヤクザ色が強い。寅さんの涙。彼の歌声が夜空に響く場面は、意外と保守性を嫌う山田洋次らしい実験性を感じる、等々。
全てがここから始まったと思うと感慨深いものがある。
そこで一句。
可笑しくてやがて哀しき寅次郎
この記事へのコメント
<ハブに咬まれて死んでしまう
という伝説のTVシリーズ、観てみたいものです。
第1作は、今回のNHKBS放送ではじめて観ました。
最初観た時、それまでのイメージと違って凶暴な寅さんにびっくりしましたが、
あまりのハチャメチャぶりは爆笑でした。ラストも号泣。さくらを演じる倍賞千恵子が初々しく美しいー!
そうなんですね、寅さんがかなりヤクザっぽい。シリーズの途中から観た人間にとってはちょっとびっくりですし、さくらがまだ未婚というのも違和感があるでしょうね。しかし、続編を予定していなかったはずの第1作ならではの面白さも満載。独自性も高いと思います。
倍賞千恵子が本当に若いです。彼女、途中から急激に老け込みました。
全部とまでは言いませんが、特に浅丘ルリ子と共演した4作を観ますと、彼の定着への憧れとジレンマが解って、言葉を失います。
シリーズ全体に10点満点を進呈したい、日本人の為の映画ですね。