映画評「トスカ」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2001年フランス=ドイツ映画 監督ブノワ・ジャコ
ネタバレあり
クラシック、それもオペラの知識となると甚だあやしく、「トスカ」はイタリアの作曲家プッチーニの手になるものというくらいしか知らない。よってこの映画版がオペラと比較してどの程度なものかは全く解らないのだが、映画として判断することには大して問題はない。しかし、小説や戯曲の映画化のように、純粋に映画としての出来栄えを判断すれば良いとも行かないのが悩ましいところではある。
ナポレオン戦争の影響下にあった1800年のローマ、マリア像を描いている画家カヴァラドッシ(ロベルト・アラーニャ)が政治犯アンジェロッティ(マウリツィオ・ムラーロ)を匿う。警視総監スカルピア(ルジェロ・ライモンディ)は画家を捕まえると、彼の恋人フローリア・トスカ(アンジェラ・ゲオルギュー)に赦免状をちらつかせて接吻を奪うが、彼女は総監を殺してしまう。しかし彼女が受け取った赦免状は真っ赤な偽物で、カヴァラドッシは銃殺され、嘆いたフローリアは塔から投身自殺してしまう。
純粋に映画的に処理すれば1時間30分もあれば済む悲劇であろう(上映時間125分)が、勿論オペラ映画であるからそう割り切ってしまっては観た意味がない。
注目すべきは従来のオペラ映画とオペラの映画化の中間くらいといった作り方をしていることで、オペラ歌手の実際の録音風景・演奏風景と、彼らがオペラ歌手として舞台上で演じている風景と、ロケも行った映画的風景という三つの様相を交錯させたダイナミズムを楽しむことが重要である。
オペラ・ファンなら間違いなく楽しめそうだが、そうでなくても欧州の濃密なムードがたっぷり味わえるのでお奨めしたい。文学ファンなら観た後スタンダールを読みたくなるかもしれない。
ヒロインを演じたアンジェラ・ゲオルギューは映画女優のように魅力的。
2001年フランス=ドイツ映画 監督ブノワ・ジャコ
ネタバレあり
クラシック、それもオペラの知識となると甚だあやしく、「トスカ」はイタリアの作曲家プッチーニの手になるものというくらいしか知らない。よってこの映画版がオペラと比較してどの程度なものかは全く解らないのだが、映画として判断することには大して問題はない。しかし、小説や戯曲の映画化のように、純粋に映画としての出来栄えを判断すれば良いとも行かないのが悩ましいところではある。
ナポレオン戦争の影響下にあった1800年のローマ、マリア像を描いている画家カヴァラドッシ(ロベルト・アラーニャ)が政治犯アンジェロッティ(マウリツィオ・ムラーロ)を匿う。警視総監スカルピア(ルジェロ・ライモンディ)は画家を捕まえると、彼の恋人フローリア・トスカ(アンジェラ・ゲオルギュー)に赦免状をちらつかせて接吻を奪うが、彼女は総監を殺してしまう。しかし彼女が受け取った赦免状は真っ赤な偽物で、カヴァラドッシは銃殺され、嘆いたフローリアは塔から投身自殺してしまう。
純粋に映画的に処理すれば1時間30分もあれば済む悲劇であろう(上映時間125分)が、勿論オペラ映画であるからそう割り切ってしまっては観た意味がない。
注目すべきは従来のオペラ映画とオペラの映画化の中間くらいといった作り方をしていることで、オペラ歌手の実際の録音風景・演奏風景と、彼らがオペラ歌手として舞台上で演じている風景と、ロケも行った映画的風景という三つの様相を交錯させたダイナミズムを楽しむことが重要である。
オペラ・ファンなら間違いなく楽しめそうだが、そうでなくても欧州の濃密なムードがたっぷり味わえるのでお奨めしたい。文学ファンなら観た後スタンダールを読みたくなるかもしれない。
ヒロインを演じたアンジェラ・ゲオルギューは映画女優のように魅力的。
この記事へのコメント
一般的な感覚で観ると退屈されるかと危惧しましたが、予想以上のご報告で嬉しいですね。
私が記憶しているのは、愛するイングマル・ベルイマン監督の「魔笛」(モーツァルト)と、イタリア=日本合作「蝶々夫人」。「蝶々夫人」はお粗末なので、ご覧になる必要はないと思います。「魔笛」は素晴らしかったと記憶しますが、「トスカ」ほどは映画らしい味わいがなかったような気もしますし、今はちょっと観るのは難しいですかね。
その他「フィガロの結婚」辺りはありそうですが、確認しておりません。
ライテンディーではなく、ライモンディですから。超有名歌手ですので。
この手のオペラの映画化はいくらでもありますよ。
まず代表的な傑作は20年ほど前の「カルメン」です。
フランチェスコ・ロージーが監督、ドミンゴ、ライモンディに
カルメン役のミネゲス・ジョンソンが野性的なカルメンを熱演。
ゼフィレッリ監督が「オテロ」「ラ・トラヴィアータ」を作っている。
ほかでは、出来のいいもの(バックの演奏がとくに良いもの)
をあげると、「トスカ」でもこれとは違うプリマのカバイヴァンスカ
が主役のものとか、「リゴレット」「ファルスタッフ」「エレクトラ」
「エフゲニー・オネーギン」(ソ連映画とも同じ原作の「オネーギンの恋文」と
も違う映画です)などすぐに思い出します。これらは
クラシック音楽のDVD売り場でどうぞ。
オカピーさんの挙げられている「フィガロの結婚」も
ライブ版ではなく映画版で素晴らしいのがあります。
ベーム指揮のもので、フィガロをヘルマン・プライが演
じるこれ以上の歌手はいないだろうと言うものです。
私の挙げたのはすべてLDで所有しているもの(オペラ全曲ビデオ
は120組ぐらい所有しているなかで、ライブじゃない映画版を
思い出して書きました)で、現時点でDVDになっているかどうかは
不明ですので、あしからず。
>ライモンディ
オペラ歌手の名前は殆ど知りませんから、雑誌で読んだ名前をピックアップした時に読み誤ったんですね。目が悪いから、雑誌の小さな文字がきつくなる年頃です(笑)。
オペラは全く興味がないというわけではないですが、ぶーすかさん同様、なかなか手が出ないというのが実情ですね。この作品を観たのもたまたま紹介があったからなんです。
「ラ・トラヴィアータ」や「オテロ」が何回もオペラ映画化されているのは、現在編纂中の【リメイク映画リスト】をチェックして知ってはいるのですが。
「オネーギン」は好きな作品でしたが、オペラになるとどんな風になるのかなあ。