映画評「歌行燈」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1943年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

泉鏡花の代表作である同名小説を劇作家・久保田万太郎を脚色、成瀬巳喜男が映画化した秀作。
 成瀬は戦中に当時の戦意高揚ムードに対して反骨精神を示しつつ、そこに留まらず優れた映像表現力を証明した。この作品もそうした一本に数えられる。

明治30年代、謡名人と鼻を高くしている按摩・宗山をやり抜いて自殺に追い込んだ東京の若き謡名人・恩地喜多八(花柳章太郎)が父親(大矢市次郎)から勘当され、博多節の門付に落ちぶれるが、身分を隠して死んだ宗山の娘・お袖(山田五十鈴)に謡を教えたことから紆余曲折の末勘当を解かれる。

真の芸道の厳しさと縁の不思議さが織り成す物語は妙味に溢れ、原作にも通じる幽玄なタッチが見事。戦中故にベストテンや賞などには縁がなく、当時の評価を知るべくもないが、鏡花ファンでもある僕の目には適う。僕は、所期の狙いをいかに完成度高く映像化できたかを評価の第一とする立場であるので、当時としても古めかしい物語とは言え、高く評価したい。

この記事へのコメント

iyahaya98
2006年09月29日 17:34
またまた成瀬にTBありがとうございます。
もちろんこちらからもTBさせていただきました!
>厳しさと縁の不思議さが織り成す物語は妙味に溢れ、原作にも通じる幽玄なタッチが見事
鏡花の幻想的耽美的で、そして芸道の厳しさがきらりと光るような独特の世界を損なわずに映像化しているところが素晴らしいです。
オカピー
2006年09月30日 00:19
iyahaya98さん、またまたこんばんは。
そうですね、鏡花は幻想的で耽美的。芸道ものは戦雲が垂れ込めた38年ごろから映画界がよく取り上げた素材だったようですが、その中でもこれは見事な出来栄えだったのではないかと思います。
松林の場面の幽玄・・・忘れがたいですね。
蟷螂の斧
2023年11月24日 17:47
こんばんは。「ローラーボール」に再びコメントの前にこちらにお邪魔したくなりました。節操がない奴ですみません・・・。
昨日1960年版を見ました。監督は衣笠貞之助、出演は市川雷蔵と山本富士子。恩地喜多八が伊勢へ行き、評判の謡の名人(按摩師の宗山)を屈服させてしまう。その設定に驚きました。そして物語はどうなるのか?面白かったです。機会があったら1943年版を見たいです。

>問題は楽しめない映画ですよ。

妙な感動を押し付ける映画は白けてしまいますね。

>昔苦手だった「オールド・ブラウン・シュー」

映画関係の記事で、この曲の事が出てくるとは思いませんでした。でもオカピー教授が好きになって下さって嬉しく思います(笑)

>ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』とジョニ・ミッチェルの『ブルー』

まだ聞いた事がないです。すみません。そう言えば我が息子(高3)が最近ニルヴァーナを随分気に入っています。
オカピー
2023年11月24日 22:36
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>節操がない奴ですみません・・・。

それは良いのですが、本文を読まなくてもコメントは読むという方のことを考えると、レスは同一記事内で行うのがベター。他の記事から持って来ると、読者は何のことだか解らない場合が出てきますので。

>昨日1960年版を見ました。

市川雷蔵主演ですし、確か観たと思います。
悪くなかったかな。

>妙な感動を押し付ける映画は白けてしまいますね。

一概に否定しませんが、監督にセンスがないと言うか、観客の程度を馬鹿にしているような映画はダメですね。
例えば、再会の場面でスローモーションを使うような見せ方はダメ。
スピルバーグが凄いところは、スローを使わないことです。

>>昔苦手だった「オールド・ブラウン・シュー」
>でもオカピー教授が好きになって下さって嬉しく思います(笑)

まあ素人の僕が褒めたところで、世界には何の影響もないでしょうが。

【オカピーの採点表】の訪問者はこちらの1割も行かないですTT
まあ、ブログ全盛時代なら自然と増えたでしょうが。リンクしてもらう人を探さないとダメかも。

>ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』とジョニ・ミッチェルの『ブルー』
>まだ聞いた事がないです。すみません。そう言えば我が息子(高3)が最近ニルヴァーナを随分気に入っています。

若い人はニルヴァーナは結構好きですね。(コンポで聴くと)結構うるさいのが多いです。
亡くなったカート・コバーンがビートルズから音楽に入った人なので、ニルヴァーナからビートルズに入っていく人もいます。
蟷螂の斧
2023年11月25日 17:08
こんばんは。1960年版は時代劇専門チャンネルで12月8日(金)23:00,17日(日)4:00,26日(火)2:00に放映予定です。若き謡名人・恩地喜多八役。市川雷蔵にピッタリです!芸達者だと思います。
中条静夫がチョイ役で出ています。そして、賀原夏子や浦辺粂子もいい味を出しています。

>スピルバーグが凄いところは、スローを使わないことです。

そうだったんですか?それは凄い!

>若い人はニルヴァーナは結構好きですね。(コンポで聴くと)結構うるさいのが多いです。

僕の息子は無口で大人しいです。そういう子の方が刺激を求めてニルヴァーナを聞くのかも知れません。ホワイトアルバムを貸して「ヘルタースケルター」「バースデイ」「エブリバディズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」を勧めましたが、興味無さそうでした(苦笑)。
オカピー
2023年11月25日 21:49
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>時代劇専門チャンネル

お試し期間に無償で観るということも出来そうですが、すぐにキャンセルというのは、僕の性格からは厳しいですね。

IMDbで調べたところ、1960年版には7点を進呈していました。悪くない点と思います。

>>スピルバーグが凄いところは、スローを使わないことです。
>そうだったんですか?それは凄い!

例外は、傑作「激突!」のタンクローリーが落下するところですが、あれはタンクローリーをマンモスとして感じさせるために挿入したマンモスのような声に合わせる為にあの長さが必要だったのです。

>ホワイトアルバムを貸して・・・興味無さそうでした(苦笑)。

勿体ないですねえ。
「へルター・スケルター」は、ニルヴァーナのような、グランジ・ロックの嚆矢とも言われていますけど。

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