映画評「キクとイサム」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1959年日本映画 監督・今井正
ネタバレあり

地味ながら日本で有数な映画監督である今井正の代表作。脚本の水木洋子にとってもベスト作品であろう。

福島県の片田舎、70を目前にした老婆(北林谷栄)が、今は亡き娘が二人の黒人との間に儲けた娘キク(高橋恵美子)とイサム(奥の山ジョージ)を愛情をこめて育てている。
 11歳のキクは黒人の血を引いて巨体で気も強く文字通り男児を尻に敷くほどだが、一つ違いの弟は細くて弱い代りに世渡りが巧い。
 キクは、街へ出たり祭の時に奇異の目や人種差別の言葉を浴びて徐々に傷ついていき、弟が米国の家庭に引き取られた後、子守の失敗を責められたこともあり、自殺を試みる。

体重が重すぎて縄が切れてしまう、という顛末は、ペーソスの中にユーモアを交え誠に宜しい。
 日本映画では珍しい人種問題がテーマとは言え、全体もこうした調子でのびのびと作られている。米国の人種問題映画と違って社会的角度から切り込むのではなく、人間の狭量さを揶揄し、逆説的に人間讃歌を歌っているようだ。

姉弟を演じた二人は素人であるが、共に好演。キクを演じた高橋恵美子は歌手となって現在も活躍中と聞く。
 しかし、演技面で何と言っても素晴らしいのは北林谷栄で、若い時から老婆役が多いが、絶品。正確には分からないが、方言も堂々たるものである。

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