映画評「ネバー・ダイ・アローン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年アメリカ映画 監督アーネスト・R・ディッカースン
ネタバレあり

犯罪者上がりの作家ドナルド・ゴインズの小説をアーネスト・R・ディッカースンが映像化したドラマ。

一財産を築いた麻薬ディーラーのDMXが10年ぶりに故郷の街に戻り借金を含め全てを清算しようとするが、現金回収係の若者マイケル・イーリーに殺されてしまう。死の直前知り合った新進ジャーナリストのデーヴィッド・アークェットは譲り受けた録音テープにより彼の人生を知る。

中盤まで大したことはないと思っていたが、見終わった時の印象は大分良くなっていた。
 第一の理由は、これがビリー・ワイルダーの秀作「サンセット大通り」の回想手法を使っていたことに気付いたからである。死体が映し出され、そこへモノローグが被さる、<死体>による回想である。
 次の場面からモノローグは生存中のDMX(テープ)に変わるが、モノローグの二重構造は大変珍しい。

ポールがテープを受け取ってから映画は、他人の人生を破壊し続けてきた彼の人生と贖罪意識を回想として描く一方で、イーリーがボスをやっつけるまでの現在の動きをカットバックで取り扱う。若者とアークェットが接点をもった時、若者が母親の復讐の為にDMXを殺し、10年前に母親の死を見たあの少年、即ちDMX自身の息子であったことを観客は知るのである。
 しかし、少年が母親の復讐の為に殺す相手が父親であることを知っていたか否かは微妙で、衝撃を深める為にこの辺りはもっと正確に描くべきである。

最後は再び<死体>のモノローグという「サンセット大通り」と同じ趣向で閉められ、脚本(ジェームズ・ギブスン)に些か練り不足の部分はあるが、努力は買いたい。

この記事へのコメント

2006年02月05日 08:55
TBありがとうございます。
オカピーさんの映画評を読んで、わたしがなぜ面白いと感じたのかが整理できたような気がしました。
ビリー・ワイルダーの<サンセット大通り>大好きです。
もういちど見たいな~。
オカピー
2006年02月06日 02:32
みのりさん、こんばんは。
わー、嬉しいコメントです。やる気倍増です。
「サンセット大通り」は良いですねえ。伊丹十三の遺作「マルタイの女」でヒロインが裁判所に上がっていく前がグロリア・スワンソン風だったかな。映画は、そうやって関連付けていくと、違った面白味がありますよね。

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