映画評「イザベル・アジャーニの惑い」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2002年フランス映画 監督ブノワ・ジャコ
ネタバレあり
邦題では全く解らないが、フランス文学愛好者には避けて通れない19世紀初めの作家ベンジャミン・コンスタンの恋愛心理小説「アドルフ」の映画化である。
才能溢れる美男子アドルフ(スタニスラス・メラール)は、伯爵に囲われている没落貴族の娘エレノール(イザベル・アジャーニ)に傍惚れして彼女をよろめかせるが、いざ彼女が伯爵と子供を捨て自分の許に走ると煩わしく感じる。それを知った彼女は思い悩んで病み遂には亡くなるが、彼の取り戻した自由は目的も意味もないものに過ぎない。
僕の記憶する限り、政治家でもあったコンスタンの自伝とも言われている原作と殆ど同じではないかという気がする。先日観た「トスカ」のブノワ・ジャコ監督は原作に忠実に映像化しようとしたに違いない。
その為全編ロケを敢行、風景の中に人物を溶け込ませて心理を浮かび上がらせているが、心理小説の主題をそのまま映画に移そうと思えばナレーション(本作の場合はモノローグ)を使わざるを得ない。映画は出来れば文学的手法に頼らない方が良いわけだが、勿論主題展開によっては一向に差し支えないと考える。
この作品においては四季の変化なども折り込んでいるので映像の魅力があり、文芸ムードも満点、映画的に工夫の足りないせいでまだるっこくなった点もさして気にならない。それでも原作のほうが圧倒的に面白く感じるのは、想像する余地の多い文学と映像で見せる為に想像する余地の少ない映画の特性の違いによるものだろう。
イザベル・アジャーニは47歳にもなっているのにまだ儚げな美しさがあってエレノールに誠にふさわしい。スタニスラス・メラールの線の細い病的な容貌もエゴイスティックなアドルフのイメージに適う。
2002年フランス映画 監督ブノワ・ジャコ
ネタバレあり
邦題では全く解らないが、フランス文学愛好者には避けて通れない19世紀初めの作家ベンジャミン・コンスタンの恋愛心理小説「アドルフ」の映画化である。
才能溢れる美男子アドルフ(スタニスラス・メラール)は、伯爵に囲われている没落貴族の娘エレノール(イザベル・アジャーニ)に傍惚れして彼女をよろめかせるが、いざ彼女が伯爵と子供を捨て自分の許に走ると煩わしく感じる。それを知った彼女は思い悩んで病み遂には亡くなるが、彼の取り戻した自由は目的も意味もないものに過ぎない。
僕の記憶する限り、政治家でもあったコンスタンの自伝とも言われている原作と殆ど同じではないかという気がする。先日観た「トスカ」のブノワ・ジャコ監督は原作に忠実に映像化しようとしたに違いない。
その為全編ロケを敢行、風景の中に人物を溶け込ませて心理を浮かび上がらせているが、心理小説の主題をそのまま映画に移そうと思えばナレーション(本作の場合はモノローグ)を使わざるを得ない。映画は出来れば文学的手法に頼らない方が良いわけだが、勿論主題展開によっては一向に差し支えないと考える。
この作品においては四季の変化なども折り込んでいるので映像の魅力があり、文芸ムードも満点、映画的に工夫の足りないせいでまだるっこくなった点もさして気にならない。それでも原作のほうが圧倒的に面白く感じるのは、想像する余地の多い文学と映像で見せる為に想像する余地の少ない映画の特性の違いによるものだろう。
イザベル・アジャーニは47歳にもなっているのにまだ儚げな美しさがあってエレノールに誠にふさわしい。スタニスラス・メラールの線の細い病的な容貌もエゴイスティックなアドルフのイメージに適う。
この記事へのコメント
私もBS鑑賞派。別館(ブログ)とは別に本館でもちらほら映画について書いております。こちらは一ヶ月分をまとめてUPしております。
「トスカ」は一般映画の感覚で観ないことをお奨め致します。
亀の甲より年の功、というべきところもあると思いますので、楽しく話して行きたいですね。私のほうもご贔屓にさせて戴きます。
ぶーすかさんも凄い量をご覧になっていますね。
アジャーニはほんと、異常と正常の紙一重の狭間を上手に演じています。
それに、真っ白な雪の風景がとってもきれいで印象的でした。
そう、イザベル・アジャーニが出世作「アデルの恋の物語」にも通じる激情を示しまして素晴らしかったですね。
「アデル」は御覧になっていらっしゃいますか。
未見でしたらお奨めです。
割合気に入った作品ですが、どうしても古典の場合は原作のイメージが強くていけません(笑)。評価が厳しくなってしまいます。