映画評「インファナル・アフェアⅢ終極無間」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年香港映画 監督アンドリュー・ラウ、アラン・マク
ネタバレあり
シリーズ第3作。
ファンには待ちに待った最終作だろうが、前二作でスタイリッシュすぎ凝りすぎで些か白けてしまった僕はさほど興味が湧かなかったというのが正直なところ。が、見終わった後は見直した部分がある。
潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)が死んだ後、実はマフィアと繋がっていたラウは警官殺害の罪から無罪放免となり、内部調査課に転属されるが、その時保安部の警視ヨン(レオン・ライ)の前で警官が自殺する事件が発生。二人の関係を怪しんだラウはヨンを尾行する一方で、精神科医リー(ケリー・チャン)に接近してヤンのカルテを盗み出し、ヨンの容疑を固めようとする。
時間が相前後する、相変わらず凝った作りで、刑事(警官)とマフィアが互いに潜入しまくっていてこんな状態で警察が成り立つのかいなと思ってしまうが、カルテを通してヤンの死亡前の活動を紹介するだけでなく、それを読むラウが自分をヤンと思い込んでしまうというアイデアが予想外に面白い。
ヤンは潜入捜査官であり、ラウは潜入マフィアだったわけで、二人とも自分のアイデンティティーが分らなくなることもあったのではないか。
二人は同期であり、マリーという二人の女性と関係があるといった共通項から、作者は、元々同一人物として生まれ出ずるべき二人が別の人間として生まれ行動し、最後にまた一つの個体に戻ろうとしている、そんな神秘的な関係を描いているのではないかと思えてくる。
前二作(特に第一作)をもう一度観てみたくなってきた。
2003年香港映画 監督アンドリュー・ラウ、アラン・マク
ネタバレあり
シリーズ第3作。
ファンには待ちに待った最終作だろうが、前二作でスタイリッシュすぎ凝りすぎで些か白けてしまった僕はさほど興味が湧かなかったというのが正直なところ。が、見終わった後は見直した部分がある。
潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)が死んだ後、実はマフィアと繋がっていたラウは警官殺害の罪から無罪放免となり、内部調査課に転属されるが、その時保安部の警視ヨン(レオン・ライ)の前で警官が自殺する事件が発生。二人の関係を怪しんだラウはヨンを尾行する一方で、精神科医リー(ケリー・チャン)に接近してヤンのカルテを盗み出し、ヨンの容疑を固めようとする。
時間が相前後する、相変わらず凝った作りで、刑事(警官)とマフィアが互いに潜入しまくっていてこんな状態で警察が成り立つのかいなと思ってしまうが、カルテを通してヤンの死亡前の活動を紹介するだけでなく、それを読むラウが自分をヤンと思い込んでしまうというアイデアが予想外に面白い。
ヤンは潜入捜査官であり、ラウは潜入マフィアだったわけで、二人とも自分のアイデンティティーが分らなくなることもあったのではないか。
二人は同期であり、マリーという二人の女性と関係があるといった共通項から、作者は、元々同一人物として生まれ出ずるべき二人が別の人間として生まれ行動し、最後にまた一つの個体に戻ろうとしている、そんな神秘的な関係を描いているのではないかと思えてくる。
前二作(特に第一作)をもう一度観てみたくなってきた。
この記事へのコメント
1973年のブルース・リーが台頭した頃の香港映画と言えば勧善懲悪もので、演出的にも映画黎明期レベルのものでしたが、ジャッキー・チェンが国際的になるに連れて洗練され、今や本シリーズのようにハリウッドがリメイクするような映画も作れるようになり、隔世の感ありです。
そもそも三部作の構成は「ゴッドファーザー」を模倣したものではないかと考えていましたので、「ディパーテッド」はネタ不足のハリウッドの逆輸入的作品。一種の感慨すら覚えます。
余りに凝り過ぎて全体的に停滞気味だなというのが最初の二本の印象でしたので、評価を分けるようなコメントになっていますが、三本目になってぐっと印象が良くなったのは自分でも不思議です。内容が見通せたということでしょうか。
過不足ない素晴らしいコメントです。Reiさんは子供時代感想文は得意でしたでしょう? 私は駄目でしてねえ、随分苦労しました。今なら喜んで書きますが、しかし、感想文的な感想文は未だに苦手かなあ(笑)。
80年代終盤香港映画は洗練度を増してきましたが、急激に発達したつけとでも言うのか、妙な気取りが目立つ作品が増えて「感心せんな」と思っていました。
その流れにある本作を観た時、故淀川長治先生が降旗康男の「冬の華」だか「駅」を見て「『上手いだろう』と言わんばかりで嫌らしい」と仰っていたのを思い出しましたね。スタイルが先行しすぎていると言いますか。
三作目を観た後第1作を再鑑賞してみたいと思ったのは確かですね。
>ディパーテッド
話を大きく変えていないのですが、オリジナルに惚れこんでいる人にはどうも今一つなようです。僕などはオリジナルより輪郭がしっかりしていて面白いと思いましたが。
ある程度以上の才能がある人は生涯に最低一つは断然光る傑作を作りますよね。それが一度で終わらないのが天才。ヒッチコック、ビートルズ、シェークスピア、夏目漱石、ピカソ、etc.
A・ラウたちも「インファナル・アフェア」だけに終わらないように頑張ってほしいですね。^^;