映画評「パッチギ!」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・井筒和幸
ネタバレあり
井筒和幸がメジャーになった四半世紀前の「ガキ帝国」を彷彿とする高校生の抗争に民族問題の要素を折り込んだ意欲作。
いきなりグループサウンズのオックスが女性客を失神させる場面から始まって我々昭和30年代世代を懐かしがらせるが、舞台は1968年の京都。
府立東高校の大人しい生徒・康介(塩谷瞬)が抗争中の朝鮮高校に親善サッカーを申込みに出かけた際、音楽室でフルートを吹く美少女・キョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れ、民族統一の象徴歌「イムジン河」を憶えて接近し朝鮮民族の中に溶け込んでいくが、両校対立の根の深さと民族間の溝に唇を噛み締める。
少年たちの喧嘩風景を全編にちりばめながら、康介の不器用な恋とキョンジャの兄である番長アンソン(高岡蒼佑)の対照的な恋模様を進行させていく、という形式だが、その二つの糸を「イムジン河」をモチーフにした<民族間の溝>でかしめているのが良い。
前半は些かとりとめない印象もあるが、終盤ラジオ番組で康介が「イムジン河」を歌う間、両校の抗争とアンソンの子供誕生をカットバックで描く場面は統一感があり見事と言いたい。同じように青春の鼓動を描いた作品としては、全体的に「ガキ帝国」ほど無邪気ではないが、その代り深い余韻も漂う。
但し、喧嘩の場面はPG-12とレイティングされないような、もう少し大人しめのほうが後味が良い。
この作品でも描かれたように「イムジン河」は発売中止、放送禁止の憂き目に遭ったのに、10歳にもなっていなかった僕が何故か憶えて歌っていた。どこでどう流れてきたものか。不思議なことがあったものだ。
また、アンソンを演じた高岡蒼佑が、楽天の一場投手に見えて仕方がなかった。
2005年日本映画 監督・井筒和幸
ネタバレあり
井筒和幸がメジャーになった四半世紀前の「ガキ帝国」を彷彿とする高校生の抗争に民族問題の要素を折り込んだ意欲作。
いきなりグループサウンズのオックスが女性客を失神させる場面から始まって我々昭和30年代世代を懐かしがらせるが、舞台は1968年の京都。
府立東高校の大人しい生徒・康介(塩谷瞬)が抗争中の朝鮮高校に親善サッカーを申込みに出かけた際、音楽室でフルートを吹く美少女・キョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れ、民族統一の象徴歌「イムジン河」を憶えて接近し朝鮮民族の中に溶け込んでいくが、両校対立の根の深さと民族間の溝に唇を噛み締める。
少年たちの喧嘩風景を全編にちりばめながら、康介の不器用な恋とキョンジャの兄である番長アンソン(高岡蒼佑)の対照的な恋模様を進行させていく、という形式だが、その二つの糸を「イムジン河」をモチーフにした<民族間の溝>でかしめているのが良い。
前半は些かとりとめない印象もあるが、終盤ラジオ番組で康介が「イムジン河」を歌う間、両校の抗争とアンソンの子供誕生をカットバックで描く場面は統一感があり見事と言いたい。同じように青春の鼓動を描いた作品としては、全体的に「ガキ帝国」ほど無邪気ではないが、その代り深い余韻も漂う。
但し、喧嘩の場面はPG-12とレイティングされないような、もう少し大人しめのほうが後味が良い。
この作品でも描かれたように「イムジン河」は発売中止、放送禁止の憂き目に遭ったのに、10歳にもなっていなかった僕が何故か憶えて歌っていた。どこでどう流れてきたものか。不思議なことがあったものだ。
また、アンソンを演じた高岡蒼佑が、楽天の一場投手に見えて仕方がなかった。
この記事へのコメント
いつもTBいただきありがとうございます。
オックスもイムジン河も懐かしかったです。
イムジン河は放送禁止だったのですね。
全然知りませんでした。
普通にいい曲だと思っていました。
こちらこそお世話になります。
主人公たちは私の兄くらいの年齢ですが、ぎりぎり同じジェネレーションと言え、懐かしく興味深かったです。
「イムジン河」の音符を逆さまにして作ったのが「悲しくてやりきれない」でしたっけね。反抗精神万歳です。
高岡蒼甫と高岡蒼佑はどっちが正しいのでしょう。分る人、教えてください。
高岡蒼佑が高岡蒼甫とパッチギ!の後に改名したみたいですよ、時期は不明ですが。
「イムジン河」ってこの映画で初めて聞きましたが、受け入れやすいメロディーですねえ。
>高岡蒼佑
情報、有難うございます。
ということはこの映画を語る時はこの表記でも問題ないということでありますね。
>イムジン河
お若いです(という題名のジェリー・ルイスの映画がありましたっけ)!
「悲しくてやりきれない」もご存知ないですか?
「悲しくてやりきれない」...なおのこと聞いたことないですねー。
一応ビートルズをリアルタイムで知っている世代です。もう少し早いほうが良かったと思いますが、日本にはGS(ガソリンスタンドではなく、グループサウンズ)ブームがありました。懐かしいなあ。
TVのコメンテーターとしては、あまりイイ印象がない井筒監督ですが、まさか泣かされるとは思いませんでした。
良い映画監督が良い人間とは限りませんし、良い批評家とは限りませんよね。^^;
良い批評家は良い監督になれる可能性があることは、トリュフォーやピーター・ボグダノヴィッチが証明し、水野晴郎氏が逆説的に証明しています(笑)。
井筒氏は案外ミーハーで、芸術派ではありませんね。ただ好き嫌いがはっきりしている(らしい)ので、批評家向きではないと思われます。映画監督は口ではなく、映画で手本を示したほうが良いのだ・・・と言っていたら、本作を作ったので「やればできるじゃん」と拍手を送ったのでした。めでたし、めでたし。
フォーク・クルセダーズはGSには入りませんが、音楽的考えでは一番ロック的だったのではないでしょうか。GSはやはり作られたものというイメージがあり、同じ頃活躍した英米のロック・グループとは全く違いますね。尤もアメリカにもモンキーズのようなでっちあげグループもあり、それよりは上かな。どちらも強力な作曲陣のおかげで良い曲が生まれたのは有り難かったわけです。
続編は観ていませんが、偶然余り良くないようなコメントを目にしてしまいました。全く知らない人ですから、どうでも良いでけどね。