映画評「ベルリン・フィルと子供たち」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年ドイツ映画 監督 トマス・グルベ、エンリケ・サンチェス・ランチ
ネタバレあり

ベルリン・フィルは教育プログラムに熱心だそうである。
 その一環なのであろうが、着任したばかりの主席指揮者サイモン・ラトルの発案により、各国出身の難民の少年少女たち250人がストラヴィンスキーのバレエ曲「春の祭典」に合わせて踊ることになる。指導に当たるのは、ベテラン振付師ロイストン・マルドゥームを頂点とする数人のコーチ。
 その様子を、発案に至る理由に答えるラトルへのインタビュー、マルドゥームへのインタビュー、ベルリン・フィルの練習模様を交えて、収めたドキュメンタリーであります。

ドキュメンタリーといっても商業映画というより文化映画に近い内容で、クラシックは勿論バレエに縁のなかった子供たちが、練習過程で露呈するその甘えと弱さを如何に克服していくか、その変化が興味深く捉えられている。
 こらえ性がなくてすぐに止めたくなったり、集中力が続かない子供たちが、振付師やリーダーの一言で雷鳴を受けたようににわかに集中力を増していくのである。

映画としては、終盤の練習風景から本番にかけては雪崩れ込むような迫力を感じる。商業映画としてはともかく、文化映画としてなら観る価値は十二分にある。

選ばれた楽曲がCDでよく聴き馴染んでいた「春の祭典」というのも個人的には有難い。3年ほど前のNHK金曜時代劇「五瓣の椿」に使われていたような記憶がありますが?

6点は 春の祭典 にはあらで 映画に付けし 僕の採点

この記事へのコメント

Rei
2007年04月09日 15:27
本作、何人かの子供たちにフォーカスして作っていて、作品としてうまくまとめられた感がある一方、ストーリー作っているなという気がしなくもなかったです。ただ「春の祭典」のオーケストラの練習風景、指揮者と楽団員たちとの間で音を創っていく作業には熱くなりました。「もっと音をくれ」「もっとだ、もっとだ」という音の応酬。このシーンだけでも見た価値があると思いました。
オカピー
2007年04月10日 01:41
Reiさん、こんばんは。
渋いところに目を付けられましたね(笑)。

>ストーリー
最近観た「ステップ!ステップ!ステップ!」同様教育プログラムをテーマにしたドキュメンタリーですが、作者の視点が絡んだ時に客観性がある程度主観に差し替えられるのは止むを得ないのでしょう。そこに作為性が現出する可能性は否定できませんね。

丁度一年位前の鑑賞で憶えていない部分も多いのですが、「春の祭典」での練習から本番にかけてのなだれ込むような印象はなかなか強烈でした。

また遊びに来てください。
Rei
2007年04月10日 09:56
コメント返事ありがとうございます。
ある程度の作為性のようなものがあったけれど、しかし本作では子供たちが何かを表現する、そのためにあるハードルを越える、それによって子供たち自身が変わっていく。私も観てから時が経てますが、練習風景を見、クラッシックもロックと同じように受け入れ始める、そこからの子供たちの目がきちんと一点を見据えた目に変わっていった、そして本番。やはり感動するものがありました。
Rei
2007年04月10日 09:58
(ながくなってすみません。続き)
実は今年の初め頃「合唱ができるまで」というフランスの音楽ドキュメント映画を見たのですが、「ベルリンフィルと子供たち」と同じような感動が、そして今回は合唱という視点で新しい感動なり発見が見れるのかと期待して見に行ったのですが、アマチュア合唱団が女性指揮者のもとで一つの合唱曲を完成する過程を綴ったもので、合唱をより完成度の高いものに持っていくための指導と練習風景で、それはそれで楽しめたのですが、声と音感にはアマチュアといえ、もともと音感のしっかりした人ばかり。この作品をみて、「ベルリンフィルと子供たち」をみてみたいなぁ、あそこでは確実に子供たちの目が変わっていったな、というのが私の映画見終わった思いでした。こういう気持ちが残っていたこともあり、ブログで本作コメントみつけ少しコメントをいれたくなった次第です。
オカピー
2007年04月10日 15:12
Reiさん、こんにちは。

なるほど。
子供たちの変化を見るのは良いものですね。子供らしい柔軟さの発露ですから。「ステップ!」ではそうした変化を直接表現した部分はなかったのですが、やはりダンスが不良の道に進もうとしていた(有色人種の)少年を変えたという説明がありました。

日本の場当たり的な役人たちの発想で子供たちは良くなっていくのか、教育基本法改正で日本の子供たちは本当に良くなるのか、いじめは少なくなるのかと、こうした映画を観ていると疑問に思えてくるのであります。

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  • <ベルリン・フィルと子どもたち> 

    Excerpt: 2004年 ドイツ 105分 原題: Rhythm is It! 監督 トマス・グルベ  エンリケ・サンチェス・ランチ 撮影 レネ・ダメ  マルクス・ウィンターバウアー 出演 本人:サイモン・ラトル .. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2006-04-28 11:15