映画評「卒業の朝」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2002年アメリカ映画 監督マイケル・ホフマン
ネタバレあり
マイケル・ホフマンはなかなか良い感覚をしている監督だと思うが、「チップス先生さようなら」と似た部分もあるこの作品でもその感覚の良さを披露した。
校長になるチャンスを失った老教師ハンダート(ケヴィン・クライン)が25年前の卒業生から招きを受け会場へ向う最中、当時のことを思い出す。
中堅教師になりかけていた彼は世を嘗めた態度で彼を悩ます上院議員の息子セジウィック(エミール・ハーシュ)を向学心に目覚めさせたと思ったのも束の間、目標だったジュリアス・シーザー・コンテストでカンニングをしたにも拘わらず2位に甘んじた少年はまた元の問題児に戻り、教師は挫折感を味わう。
現在、会場では中年になった彼らがまたコンテストに挑戦するが、不遜にもセジウィック(ジョエル・グレッチ)は再び不正を犯しただけでなく父親同様に上院議員に立候補すると宣言、自らのアピールの場に変えてしまう。教師は無力感に苛まれる。
実は彼を真に苦しめるのはこの不遜な男ではなく優秀で真面目な生徒マーティン・ブライスなのだ。コンテストに出られるのは事前のテストで3位以内というのが条件で、教師は直前に4位のセジウィックと入れ替えたのだ。「悪人が栄えるのも世間である」と自らを慰めるが、一教師として学校に戻った彼は遅れてきた若い生徒を迎える。少年の名はマーティン・ブライス。神は教師をまだ見捨てていないようである。
マーティンがこの作品のキーパーソンであるが、画面に登場しないもう一人のキーパーソンがいる。歴史から消えたローマ共和国の将軍である。彼は何度もの征服に成功しながら、社会に貢献しなかったから消えたのだというのが教師の説で、これはセジウィックを暗示するところであり、教科書に載っていないのでカンニング男には答えられない、という伏線にもしている辺りになかなか上手さがある。
展開はそう凝ったものではないが、素直な物語をのびのびと歯切れ良く描いたホフマンの手腕は誉められて良い。
2002年アメリカ映画 監督マイケル・ホフマン
ネタバレあり
マイケル・ホフマンはなかなか良い感覚をしている監督だと思うが、「チップス先生さようなら」と似た部分もあるこの作品でもその感覚の良さを披露した。
校長になるチャンスを失った老教師ハンダート(ケヴィン・クライン)が25年前の卒業生から招きを受け会場へ向う最中、当時のことを思い出す。
中堅教師になりかけていた彼は世を嘗めた態度で彼を悩ます上院議員の息子セジウィック(エミール・ハーシュ)を向学心に目覚めさせたと思ったのも束の間、目標だったジュリアス・シーザー・コンテストでカンニングをしたにも拘わらず2位に甘んじた少年はまた元の問題児に戻り、教師は挫折感を味わう。
現在、会場では中年になった彼らがまたコンテストに挑戦するが、不遜にもセジウィック(ジョエル・グレッチ)は再び不正を犯しただけでなく父親同様に上院議員に立候補すると宣言、自らのアピールの場に変えてしまう。教師は無力感に苛まれる。
実は彼を真に苦しめるのはこの不遜な男ではなく優秀で真面目な生徒マーティン・ブライスなのだ。コンテストに出られるのは事前のテストで3位以内というのが条件で、教師は直前に4位のセジウィックと入れ替えたのだ。「悪人が栄えるのも世間である」と自らを慰めるが、一教師として学校に戻った彼は遅れてきた若い生徒を迎える。少年の名はマーティン・ブライス。神は教師をまだ見捨てていないようである。
マーティンがこの作品のキーパーソンであるが、画面に登場しないもう一人のキーパーソンがいる。歴史から消えたローマ共和国の将軍である。彼は何度もの征服に成功しながら、社会に貢献しなかったから消えたのだというのが教師の説で、これはセジウィックを暗示するところであり、教科書に載っていないのでカンニング男には答えられない、という伏線にもしている辺りになかなか上手さがある。
展開はそう凝ったものではないが、素直な物語をのびのびと歯切れ良く描いたホフマンの手腕は誉められて良い。
この記事へのコメント
マーティン・ブライスと歴史から消えたローマ共和国の将軍のコメント、なるほどー!さすがオカピーさん、見る所が鋭いですねー。私はそこまで気がつかず、あっさり観てました^^;)。地味なキャラだったけど、マーティンがセジウィックよりもキーパーソンだったんですね…。オカピーさん絶賛のマイケル・ホフマン監督、覚えておこうと思います。
いい映画なのに誰も話題にしませんでしたね。
今はどんでん返し、複数の時間軸、派手なCG、或いは強いメッセージといった刺激がないと映画批評家も評価しない時代。
そういう時はホフマンのような真の実力のある監督が消えていく懸念がありますね。
確かに英国的ですね。寄宿学校というのはアメリカでもかなり一般的なのでしょうが、どこか英国的なムードが漂いますね。
幕切れは実に鮮やか。良い映画ですけどねえ。