映画評「ミラーを拭く男」

☆☆★(5点/10点満点中)
2003年日本映画 監督・梶田征則
ネタバレあり

面白そうな題材だったので期待して観たが、それほどでもない。

人身事故を起こし被害者の父親から執拗に責められる退職間際の会社員・緒形拳が、現場にあるカーブミラーに天啓を受けたか、最初は市内から始め、やがて北海道から南に下る日本全国のカーブミラー磨きの旅に出る。
 という物語が、三分の二くらいまでは、主人公の行動を追うTV局側と負傷した主人公が入院した病院で接見した細君・栗原小巻の回想形式で展開。
 その後はリアル・タイムの進行になって、北海道をサイクリングで回っていた60代の男性・津川雅彦と知り合ったのを契機として、TVの威力で彼の活動は全国的に広がっていく。

期待したほど面白くないと思った理由の第一は、主人公がミラーを磨き始める理由が曖昧であることである。個人的な趣味では、彼が事故を起こす原因がミラーの汚れにあったのなら分かり易く実際的で良いのではないかと思う。

第二は彼が回っている最中のロード・ムービー風場面の変化の少なさ。北海道の美しい風景の中で展開するのはのびのびとして宜しいし、それなりにアクセントを入れて工夫も見られるが、手詰まり感は残る。

彼が旅に出たのは贖罪ではない、実際的な活動でもなさそうだ、どうも初老の人間が迎えようとしている無力感への抵抗のようにも見えるが、断言はできない。しかし、活動が全国規模のボランティアになっていくのに主人公が戸惑いを隠せないのは恐らくは自分自身の為の活動であるからで、最後に夫婦揃って一緒に自転車を漕ぐラスト・シーンでは満足感が滲む。

妻や家族の場面を挿入したのはアクセントとして十分、特に奥さんの自動車教習の場面はお笑いとなっているわけだが、今時初老の人がマニュアル免許を取ろうというのは考えにくく、実際的ではない。

また、主人公がミラーを増やしてくれないかという要望に応えようと交通事故を起こそうとするのは甚だ疑問で、彼自身も加害者の苦しみは知っているはずなので、首尾一貫しない印象を伴う。これをやるなら交通事故をでっちあげたほうがコミカルで楽しく、ドラマとしての流れを損なわない。

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年05月22日 09:40
TB有難うございます。
オカピーさんはイマイチだったみたいですねー^^;)。私は緒形拳のみょーに味のある可笑しなキャラだけでも十分楽しめてしまいました。そしてこれで見直したのが栗原小巻。この方、昔アイドルなだけの大根と思っていたら、こういうコメディエンヌ的ボケキャラがピッタリはまっていて良かったです。
オカピー
2006年05月22日 20:47
ぶーすかさん、こんばんは。
この手の作品に欠かせないユーモアとペーソスのバランスが取れていないなあ、という感じでした。
栗原小巻は「忍ぶ川」がお勧め。こんな美しい作品は滅多に観られません。

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  • 「レンブラントへの贈り物」「ミラーを拭く男」

    Excerpt: ●レンブラントへの贈り物…★★★ 【BS朝日】オランダの巨匠レンブラントの半生を描いた作品。レンブラントの名作「夜警」など、絵そっくりのシーンが多数あり、それだけでも面白い。 ●ミラーを拭く男………….. Weblog: ぶーすかヘッドルーム・ブログ版 racked: 2006-05-22 09:34
  • <ミラーを拭く男> 

    Excerpt: 2003年 日本  監督 梶田征則  脚本 梶田征則  撮影 上野彰吾  音楽 千住明  出演 皆川勤:緒形拳    皆川紀子:栗原小巻    皆川芳郎:辺土名一茶    皆川真由美:国仲涼子 .. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2006-05-27 02:23