映画評「五線譜のラブレター DE-LOVELY」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年アメリカ映画 監督アーウィン・ウィンクラー
ネタバレあり
ジョージ・ガーシュウィン、アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーン、コール・ポーターの4人が戦前ポピュラー界の四天王だと思うし、現にガーシュウィンには「アメリカ交響楽」、カーンには「ティル・クラウズ・ロール・バイ」(日本未公開、鑑賞済)、ポーターには「夜も昼も」という伝記映画がある。バーリンの伝記映画があったかは定かではないが、ポーターは二度目の伝記映画ということになる。
「夜も昼も」と決定的に違うのは、彼が両刀使いだったという事実をきちんと描いていることである。それ以外は意外とオーソドックスだが、1964年最晩年のポーター(ケヴィン・クライン)が自らの伝記を描いた舞台を観るという変則的回想で進行するのが趣向とは言える。
1920年代、米国で成功できずパリでほぼ無為に過ごしていた作曲家志望のポーターは未亡人リンダ(アシュリー・ジャッド)と惹かれ合って結婚、彼女が連れてきたバーリンの紹介により「パリ」でブロードウェイに進出して成功、「恋とはなんでしょう」「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」といったお馴染みのナンバーを次々と発表する。
請われてハリウッドにも進出、仕事は馬鹿馬鹿しいものが多いがこなすうちにスランプに落ち、妻とは不仲になり、落馬して大怪我を追う。映画にもなった「キス・ミー・ケイト」で復活するが、妻が肺気腫で亡くなると、足を切断する。
妻亡き後死ぬまで彼は作品を発表しなかったと言われるが、それならなるほどリンダは彼のミューズだったわけである。
さて、僕はポーターに関心があるのでそうでもないが、彼を全く知らない人が本作を観たら面白いだろうか。
この作品が不満に感じるのは、時代が殆ど感じられないことである。20年代の欧州時代の描写には大戦中間期所謂ジャズ・エイジの退廃的なムードがある程度感じられるが、それ以降は30年もの時間が流れているのにその時代固有のムードが感じられず、登場人物だけが勝手に老けていく。時代色というものは伝記映画では大事なので、面白く感じられなかった最大の理由と断言して良い。
シェリル・クロウなど有名歌手がスタンダードを歌う場面あり。
2004年アメリカ映画 監督アーウィン・ウィンクラー
ネタバレあり
ジョージ・ガーシュウィン、アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーン、コール・ポーターの4人が戦前ポピュラー界の四天王だと思うし、現にガーシュウィンには「アメリカ交響楽」、カーンには「ティル・クラウズ・ロール・バイ」(日本未公開、鑑賞済)、ポーターには「夜も昼も」という伝記映画がある。バーリンの伝記映画があったかは定かではないが、ポーターは二度目の伝記映画ということになる。
「夜も昼も」と決定的に違うのは、彼が両刀使いだったという事実をきちんと描いていることである。それ以外は意外とオーソドックスだが、1964年最晩年のポーター(ケヴィン・クライン)が自らの伝記を描いた舞台を観るという変則的回想で進行するのが趣向とは言える。
1920年代、米国で成功できずパリでほぼ無為に過ごしていた作曲家志望のポーターは未亡人リンダ(アシュリー・ジャッド)と惹かれ合って結婚、彼女が連れてきたバーリンの紹介により「パリ」でブロードウェイに進出して成功、「恋とはなんでしょう」「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」といったお馴染みのナンバーを次々と発表する。
請われてハリウッドにも進出、仕事は馬鹿馬鹿しいものが多いがこなすうちにスランプに落ち、妻とは不仲になり、落馬して大怪我を追う。映画にもなった「キス・ミー・ケイト」で復活するが、妻が肺気腫で亡くなると、足を切断する。
妻亡き後死ぬまで彼は作品を発表しなかったと言われるが、それならなるほどリンダは彼のミューズだったわけである。
さて、僕はポーターに関心があるのでそうでもないが、彼を全く知らない人が本作を観たら面白いだろうか。
この作品が不満に感じるのは、時代が殆ど感じられないことである。20年代の欧州時代の描写には大戦中間期所謂ジャズ・エイジの退廃的なムードがある程度感じられるが、それ以降は30年もの時間が流れているのにその時代固有のムードが感じられず、登場人物だけが勝手に老けていく。時代色というものは伝記映画では大事なので、面白く感じられなかった最大の理由と断言して良い。
シェリル・クロウなど有名歌手がスタンダードを歌う場面あり。
この記事へのコメント
<夜も昼も>のコール・ポーター役、ケーリー・グラントも素敵だけど、こちらのケヴィン・クラインも素敵だと思いました。
でもどちらの映画が真実に近いのでしょうか?
そういえば、<夜も昼も>の方は、コール・ポーターが活躍している頃の作品ですよね。
それは勿論この作品の方が実際に近いです。
あの頃の伝記映画は似たり寄ったりで、「夜も昼も」も定石を踏んで作っているので、相当でっちあげだったと記憶しています。
それと同性愛が映画の中で(暗示に過ぎませんが)語られたのは59年の「去年の夏突然に」が最初ですので、40年代は完全にご法度でした。
オカピーさんは音楽も詳しくていらっしゃる
バイセクシュアルのありきたりな展開になるかと思いきや、<変則的回想で進行する>ので最後まで観れましたね。全体的には、小綺麗にまとめすぎですかな。
>音楽
50年代後半から80年代半ばのポピュラー音楽が得意なわけですが、ミュージカル映画を腐るほど見るうちに上に挙げた4人の名前や音楽は聞かされるので自然に憶えもしますし、映画を楽しむ為に多少勉強もしました。
>展開
ふーむ、「夜も昼も」みたいに殆ど作りごとでお茶を濁した作品と違って、さすがに21世紀の映画は事実にかなり接近しているわけですが、一般ドラマのように人物像への掘り下げ方がされていないので、何気なく進行して何となく終わってしまいますね。
僕としては時間の流れを感じさせる為にもっと時代色を織り込むべきだったと思っております。
>コール・ポーター
「ナイト・アンド・デイ(夜も昼も)」「ビギン・ザ・ビギン」が有名かなあ。
>日曜洋画劇場のエンディングで流れていた曲もそうだったんですね。
曲名は知らなかったですが、「ソー・イン・ラヴ」。
あの「日曜洋画劇場」バージョンを聞くと何だか切なくなりますね。