映画評「スパイ・バウンド」

☆☆★(5点/10点満点中)
2004年フランス映画 監督フレデリック・シェンデルフェール
ネタバレあり

実話をベースにしていると言われているが、ひそかに僕はこのフランス映画をアルフレッド・ヒッチコックの「間諜最後の日」の大幅な翻案ではないかと思っている。
 まず原題Agents Secretsは「エージェントの秘密」ではなく「シークレット・エージェント」ではないかとロシア語の知識からそう推理しているが、フランス語に詳しい方教えて下さい。もうそうならヒッチコック作とほぼ同じ。
 それから男女のエージェントが夫婦を成りすますという設定も同じ。活動に疑問を抱いていくのも同じ。ヒッチコックは電車を転覆させたが、こちらは船だ。扱いは全然違うが、脚本も書いた監督フレデリック・シェンデルフェールが発想の元にしたのではないかと勝手に推理している。

後半妻役モニカ・ベルッチが刑務所に入ることになると、ヒッチコックを敬愛したフランソワ・トリュフォーの「黒衣の花嫁」を思わせる展開になるが、これも同じような趣向を展開するわけではない。これも発想のヒントにしたという印象である。

一言でまとめれば、フランスのスパイであるヴァンサン・カッセルとモニカがカサブランカで夫婦に成りすまし、その間に別のスパイ二人が密輸船を爆破するが、この作戦を実行したエージェントたちは次々と機関に裏切られるような目にあい、カッセルはついに雇い主である情報機関と対峙する決意をする、というお話。

ヒッチコックとトリュフォーを参考にした(かもしれない)のは大いに結構だが、問題は長廻しである。こう上手さのない長廻しではヒッチコック映画のような切れ味、トリュフォーの洒落っ気を求むべくもない。とにかくまだるっこく感じるばかりだ。非情なスパイの世界と言っても我々には関係がないから、映画として面白くないとねえ。

この記事へのコメント

kimion20002000
2008年04月24日 18:36
僕はもう、私生活でもモニカと付き合っているというヴァンサン・カッセルに、猛烈に嫉妬していました(笑)
オカピー
2008年04月25日 01:12
kimion20002000さん、TB&コメント有難うございます。

素直で大変宜しい(笑)。
昔はたくさんいましたが、最近彼女のような<大型女優>はいなくなりましたね(爆)。

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