映画評「ゲームの規則」
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1939年フランス映画 監督ジャン・ルノワール
ネタバレあり
諸事情(?)により、大昔書いた簡単な映画評を転記致します。
ジャン・ルノワールはなかなか理解できないが、何回も観るうちにある時突然解る。これも突然解った作品である。
愛する伯爵夫人ノラ・グレゴールの為に太平洋横断飛行を敢行した飛行家ローラン・トゥータンは夫人が飛行場で待っていないので落胆するが、共通の友人であるルノワールが伯爵マルセル・ダリオ主催の狩猟パーティーへの参加を取り計らう。
この四人を中心にした恋の鞘当てが、主人側と召使側とで並行してドタバタ調で展開、最後にはトゥータンが下男に射殺される悲劇を迎える。
上流階級の風刺映画と規定するのは単純すぎるだろう。
人間の卑小さ、猥雑さといった側面を人物関係の見事なアンサンブルによって描き上げ、それと共にヴィスコンティより前に貴族社会の黄昏を扱った傑作だと思う。
しかし、いかに公開当時不評だったとは言え、製作後43年も正式に日本公開に至らなかったのは不思議である。
(ブログ用追記)
シェークスピア「真夏の夜の夢」のルノワール版と言えないこともないわけだが、ついでに「ゲームの規則」と構成・趣向的に似ている作品を挙げておく。
イングマル・ベルイマン「夏の夜は三度微笑む」・・・秀作。必見。
ウディー・アレン「サマーナイト」・・・アレンとしては凡作。
アラン・カミング「アニバーサリーの夜に」・・・無視できない出来。
行定勲「きょうのできごと」・・・ちょっと違いますが。
1939年フランス映画 監督ジャン・ルノワール
ネタバレあり
諸事情(?)により、大昔書いた簡単な映画評を転記致します。
ジャン・ルノワールはなかなか理解できないが、何回も観るうちにある時突然解る。これも突然解った作品である。
愛する伯爵夫人ノラ・グレゴールの為に太平洋横断飛行を敢行した飛行家ローラン・トゥータンは夫人が飛行場で待っていないので落胆するが、共通の友人であるルノワールが伯爵マルセル・ダリオ主催の狩猟パーティーへの参加を取り計らう。
この四人を中心にした恋の鞘当てが、主人側と召使側とで並行してドタバタ調で展開、最後にはトゥータンが下男に射殺される悲劇を迎える。
上流階級の風刺映画と規定するのは単純すぎるだろう。
人間の卑小さ、猥雑さといった側面を人物関係の見事なアンサンブルによって描き上げ、それと共にヴィスコンティより前に貴族社会の黄昏を扱った傑作だと思う。
しかし、いかに公開当時不評だったとは言え、製作後43年も正式に日本公開に至らなかったのは不思議である。
(ブログ用追記)
シェークスピア「真夏の夜の夢」のルノワール版と言えないこともないわけだが、ついでに「ゲームの規則」と構成・趣向的に似ている作品を挙げておく。
イングマル・ベルイマン「夏の夜は三度微笑む」・・・秀作。必見。
ウディー・アレン「サマーナイト」・・・アレンとしては凡作。
アラン・カミング「アニバーサリーの夜に」・・・無視できない出来。
行定勲「きょうのできごと」・・・ちょっと違いますが。
この記事へのコメント
私も1回観ただけではどうも解かったような解からないような妙な気分でした。外見だけ見るとブラックユーモアに満ちたドタバタ喜劇調で楽しいんですが,最後は冷水を浴びせるような結末ですし・・。
こういう映画は,やっぱりフランス人が仏語で観ないと解かりにくいこともあるのかなと思ったりもしますが,オカピーさんを見習って,何度か観直してみたいと思います。
私は最初、正式劇場公開版を観たのですが、ルノワール映画の例に洩れず、よく解りませんでした。そのうちビデオを鑑賞したのですが、突然あのドタバタの中からお告げのように感じるものがあったんですねえ。そしたら感動してしまいまして、もはや言葉になりません。
演劇用語でいう三一致の法則は下手に作ると自縄自縛の世界に陥りますが、上手く作るととてつもない感動を生みますね。その典型でしょう。
仰るようにどんな単純な映画でもなかなか見極めることは難しいものですよね。
ドタバタの中に垣間見える人間の孤独、卑小といった人間ドラマにドキッとしてしまいました。
私は映画館で観ました。しかし、その時は体調が悪くて余り乗れなかったんです。TVでも大きな画面ならかなり良いですね。
ルノワールは本当に難しい。私は突然天啓を受けたように感動しましたので、それで良いと思っています。
冒頭の、横断飛行をしたというので空港に取材陣が集まっている場面、画期的な飛行を成し遂げた、と騒いでいるのが台詞でわかりますが、飛行機の様子は全然出てこず、あとは取材陣の質問されてるのに「彼女が来てない! 彼女のために飛んだのに!」と飛行家がどなっていたところだけ覚えていますね。そこを見て、ああフランス映画だなあ、と思ったのですね。子供だったし、おはなしはよくわからないままだったのでしょう。そこだけしか覚えてないです。
本館へもおいでいただき、有難うございました。
nesskoさんがTVでご覧になった時は、本作が正式に公開される前だったのでしょうねえ。確か1982年に公開され、僕はその時映画館で初めて観たのですが。
社会人になった前後に観ていると思いますが、全くピンと来ず、しかも途中眠ってしまったような記憶があるほど。
まして十代でこの映画を真に理解するのは大変だと思います。世界の映画批評家が歴代のベスト10に選ぶことの多い作品ですが、「市民ケーン」「野いちご」「8・1/2」などと同様に、特に若いうちにはその凄さが解りにくい作品の一つと言えると思います。
そうだったのですか。では私の記憶違いかも。ただし私は劇場ではなくテレビで見ているんですね。
年齢的には成人だったかもしれないけれど、頭が子供だったのでどんな話かよくわからなかったのでしょうね。
ヒッチコックの「海外特派員」など事情があって公開が遅れた作品は、TVのほうが先だったということもままありますので、恐らく記憶に誤りはないと思います。
教育テレビの世界名画劇場では「格子なき牢獄」「制服の処女」など今ではなかなかお目にかかれない名作を見ました。僕の鑑賞レベルがまだまだ低い(今でも大したことはないですが)頃なので、また観てみたい作品群です。