映画評「歴史は夜作られる」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1937年アメリカ映画 監督フランク・ボーゼーギ
ネタバレあり
戦前の名匠フランク・ボーゼーギの中でも有名で一番見られるチャンスが高い作品である。
若き海運王コリン・クライヴは異常に嫉妬深く、妻ジーン・アーサーに愛人が居ると決め付け、妻の離婚請求を無効にする為に運転手を差し向けてそこに乗り込む作戦を立てるが、音を聞きつけた部屋に入ってきたパリの名給仕長シャルル・ボワイエが機転を効かせ強盗騒に偽装した為頓挫。
ご機嫌になったジーンは夜を徹して彼とタンゴを踊る。彼女が靴を脱いで踊るなどムード満点、この手のムードに弱い僕は陶然となった。ここまでは文句なしである。
再会を約束したものの、ホテルに帰ってみるとボワイエの倒した運転手が死んでいるので、夫が殺したとも知らぬ彼女は呆然として夫に連れられニューヨークへ帰り、彼は追って行くのだが、そこでも給仕長になって辛抱強く彼女の来店を待ち儲けるというのがいかにも古き良き時代の物語らしい。
その後タイタニックの悲劇をもじったスペクタクル場面が展開して悲劇的場面を構成する。この部分は大昔に観た時の印象に比べて随分短いが、それでも本作が全体を通して97年の大ヒット作「タイタニック」に影響を与えた点は多い、と言いたい。例えば、嫉妬深い男性の登場、先の靴を脱いで踊る場面などである。
そして、思いもかけぬ突然の大団円。これには些か肩透かしを食らうが、そんなことが細かいことに思えるくらい、ジーンとボワイエの共演ぶりは楽しく、<映画>を観たという気になる。こういう後味は小難しくなるばかりの最近の作品では滅多にお目にかかれない。30年代は映画の黄金時代である。
1937年アメリカ映画 監督フランク・ボーゼーギ
ネタバレあり
戦前の名匠フランク・ボーゼーギの中でも有名で一番見られるチャンスが高い作品である。
若き海運王コリン・クライヴは異常に嫉妬深く、妻ジーン・アーサーに愛人が居ると決め付け、妻の離婚請求を無効にする為に運転手を差し向けてそこに乗り込む作戦を立てるが、音を聞きつけた部屋に入ってきたパリの名給仕長シャルル・ボワイエが機転を効かせ強盗騒に偽装した為頓挫。
ご機嫌になったジーンは夜を徹して彼とタンゴを踊る。彼女が靴を脱いで踊るなどムード満点、この手のムードに弱い僕は陶然となった。ここまでは文句なしである。
再会を約束したものの、ホテルに帰ってみるとボワイエの倒した運転手が死んでいるので、夫が殺したとも知らぬ彼女は呆然として夫に連れられニューヨークへ帰り、彼は追って行くのだが、そこでも給仕長になって辛抱強く彼女の来店を待ち儲けるというのがいかにも古き良き時代の物語らしい。
その後タイタニックの悲劇をもじったスペクタクル場面が展開して悲劇的場面を構成する。この部分は大昔に観た時の印象に比べて随分短いが、それでも本作が全体を通して97年の大ヒット作「タイタニック」に影響を与えた点は多い、と言いたい。例えば、嫉妬深い男性の登場、先の靴を脱いで踊る場面などである。
そして、思いもかけぬ突然の大団円。これには些か肩透かしを食らうが、そんなことが細かいことに思えるくらい、ジーンとボワイエの共演ぶりは楽しく、<映画>を観たという気になる。こういう後味は小難しくなるばかりの最近の作品では滅多にお目にかかれない。30年代は映画の黄金時代である。
この記事へのコメント
「タイタニック」もクラシックな要素を取り込んでいるので、私は、そこそこ買ってはいるのですけれど、この映画ほど陶然とする場面はありませんでした。
追いかけていったボワイエが、NYでも給仕長に納まって待つというのがいかにも悠長で、今の若い人にはかなり疑問ではないかな。
防水壁のおかげで沈まない、というのは良かったです。あまりに悲劇だと後味が悪い。
>二度目ですが、(例のごとく)まるっきり覚えていませんでした。
余程お気に入りの映画でないと、結構忘れますね。
40を過ぎてから見た作品に関しては、観たことすら忘れている映画も少なくないです。しかもそれほど前と言うわけでもないものも、それに含まれるのですからねえ、年は取りたくないもの。
>あまりに悲劇だと後味が悪い。
とりわけ、ロマンティックなお話はそうですね。