映画評「戦国自衛隊1549」
☆☆★(5点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・手塚昌明
ネタバレあり
半村良の「戦国自衛隊」が角川映画により映画化されたのは確か1979年だったように記憶しているが、当時としては珍しい題材だったので相当面白かった。
本作は作家の福井晴敏が前作の設定を生かしつつ後日談のような形でリライトした小説の映画化なので二十余年を経た続編と言う方が正しい説明になるが、これだけ時間を経たことを考えれば変則的なリメイクと言って良いだろう。
富士山麓での人口磁場実験の失敗で第3特別実験中隊の1佐・鹿賀丈史らが1547年の戦国時代へタイプスリップしてしまう。2年後、彼らを救出しに、実際には歴史を変えようとしているらしい彼らを殲滅しに、生瀬勝久率いる“ロメオ部隊”が1549年へ飛ぶ。
そこで登場する人物は79年版とは全然違って日本の歴史で最も重要な人物と言うべき織田信長と豊臣秀吉だが、予想外の形で登場する。
つまり、2年前に消えた鹿賀1佐が何と織田信長になり代わっているのである。確かに信長が織田家を継いだのは1549年なのでこの部分は良いとしても、その年齢は15歳である。鹿賀の実年齢は信長が死んだ48歳より上ではないかいな。全く無理である。ハイティーンの少年(中野明憲)を木下藤吉郎即ち豊臣秀吉にするのもかなり無理で、当時の秀吉は12歳のねんねに過ぎない。こういう設定は聖徳太子のように存在自体が疑われているような人物にこそ生きると言うべきである。
尾張(愛知県)の織田信長と美濃(岐阜県)の斉藤道三(伊武雅刀)が富士山麓で手を結んでいるというのも歴史公証的には噴飯もの。
しかし、これらの点はこの類の作品の評価においては決定的な弱点ではない。
タイプスリップの原因やらが具体的になっているのがいかにも現在風だが、下手に具体化すると現実感が増すどころか却って荒唐無稽化し安っぽくなるということを踏まえて観たほうが宜しい。
16世紀の武器と近代兵器が混在する理不尽さが純粋に楽しめた前作には大分及ばないというのが正直な印象だが、全く退屈というわけでもない。但し、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」のほうが余程時代劇らしい台詞を使っているのはどうしたものか。
<歴史の復元力>などという言葉を使ってタイムパラドックスへの防波堤を事前に張っておく辺りはなかなかしたたかであります。
2005年日本映画 監督・手塚昌明
ネタバレあり
半村良の「戦国自衛隊」が角川映画により映画化されたのは確か1979年だったように記憶しているが、当時としては珍しい題材だったので相当面白かった。
本作は作家の福井晴敏が前作の設定を生かしつつ後日談のような形でリライトした小説の映画化なので二十余年を経た続編と言う方が正しい説明になるが、これだけ時間を経たことを考えれば変則的なリメイクと言って良いだろう。
富士山麓での人口磁場実験の失敗で第3特別実験中隊の1佐・鹿賀丈史らが1547年の戦国時代へタイプスリップしてしまう。2年後、彼らを救出しに、実際には歴史を変えようとしているらしい彼らを殲滅しに、生瀬勝久率いる“ロメオ部隊”が1549年へ飛ぶ。
そこで登場する人物は79年版とは全然違って日本の歴史で最も重要な人物と言うべき織田信長と豊臣秀吉だが、予想外の形で登場する。
つまり、2年前に消えた鹿賀1佐が何と織田信長になり代わっているのである。確かに信長が織田家を継いだのは1549年なのでこの部分は良いとしても、その年齢は15歳である。鹿賀の実年齢は信長が死んだ48歳より上ではないかいな。全く無理である。ハイティーンの少年(中野明憲)を木下藤吉郎即ち豊臣秀吉にするのもかなり無理で、当時の秀吉は12歳のねんねに過ぎない。こういう設定は聖徳太子のように存在自体が疑われているような人物にこそ生きると言うべきである。
尾張(愛知県)の織田信長と美濃(岐阜県)の斉藤道三(伊武雅刀)が富士山麓で手を結んでいるというのも歴史公証的には噴飯もの。
しかし、これらの点はこの類の作品の評価においては決定的な弱点ではない。
タイプスリップの原因やらが具体的になっているのがいかにも現在風だが、下手に具体化すると現実感が増すどころか却って荒唐無稽化し安っぽくなるということを踏まえて観たほうが宜しい。
16世紀の武器と近代兵器が混在する理不尽さが純粋に楽しめた前作には大分及ばないというのが正直な印象だが、全く退屈というわけでもない。但し、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」のほうが余程時代劇らしい台詞を使っているのはどうしたものか。
<歴史の復元力>などという言葉を使ってタイムパラドックスへの防波堤を事前に張っておく辺りはなかなかしたたかであります。
この記事へのコメント
しかし暑いですね。盆地に住んでいるので、かなりむしむししたお天気に参っています。
『戦国自衛隊』はオリジナル版の方が印象が強く、いかがわしさなども含め怪作というかカルト映画っぽい雰囲気が好きでした。
今回のリメイク版に関してはもともと期待していなかった分だけ、ショックは少なく、冷静に見れたのですが、仰るとおりであまりにも歴史や年齢設定に背を向けた配役には呆れ果てました。
個人的には、ある程度集客を見込めるリメイク映画の企画よりも、出来の悪い実験作や未知数の新人監督に大作を任せる企画の方を見てやろうという気持ちが強いですね。ではまた。TB入れさせていただきます。
余り衒学的になっても仕方がないとは思いつつ、やはり歴史公証の出鱈目さには開いた口がふさがりませんね。
リメイク以上に話が繋がっているシリーズ物(これも一種のリメイクですが)が問題という気がします。何故なら、格別ファンではない人間にとっては忘れていることも多い。固定ファン以外を無視した企画でありますからね。
恥ずかしながら、詳しい歴史を知らないので
年齢が合わないとかは気になりませんでした(^_^;)
でも、きっと学生とかも見るだろうし、
歴史に興味を持った子供たちが納得できる
映画であってほしいと思います。
歴史公証の不適切さもさることながら、若い観客の要求なのでしょうか、具体性を求めすぎて元来荒唐無稽な話が益々荒唐無稽化しますからね。
また、お越しくださいね。