映画評「下り坂」

☆☆★(5点/10点満点中)
1927年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

アルフレッド・ヒッチコック第4作。
 「下宿人」で成功を収めた直後のヒッチコック作品だが、スリラー映画ではなく一般ドラマである。ヒッチコックにとって、この当時は5本に1本ほどしか作りたい作品が作れなかった時代である。原作は主演しているイヴォー・ノヴェロの戯曲。

ロンドンの学生イヴォー・ノヴェロが女給に盗みの疑いを持たれて放校となる。真犯人は友人と知っての身代わりである。
 ヒッチコックは、ここで下りエスカレーターを映して彼の凋落を象徴している。サイレント的と言えばそれまでだが、ヒッチコックのシャープな感性が感じられる最も印象的な場面である。

ダンスホールやらいかがわしい場所で働き、やがてマルセイユの船の中で倒れる。何とか回復した彼は、結局実家に戻り、許される。

といった内容は取り立てて何と言うこともない。「ヒッチコック/映画術」によれば、上映時間122分、IMDbでは80分となっているが、僕の観たバージョンは83分である。恐らく現存のフィルムでは80分前後ということになるのだろうが、本当のオリジナルは120分前後なのであろう。そのせいなのか、物語が進行してもなかなかエモーションが増幅していかない。もしそうだとしたら大変残念である。

後記(2006年11月14日記す)
その後上映時間について考え、どうも昔の映写機のスピードがかなり遅かったのであろうという結論に至る。30%遅いと相当ゆっくりした感じだろう。

この記事へのコメント

カカト
2006年11月14日 14:40
下りのエスカレーターが「下り坂」なわけですね。なるほど。
オカピーさんの批評を読むと、自分がずいぶんぼんやりと映画を観ているような気がします・・。
オカピー
2006年11月14日 15:43
カカトさん、こちらにはお久しぶりですね。
出産後初めての映画鑑賞作品でしょうか。

>ぼんやり
いや、そんなことはありませんよ。
しかし、お互いに慢心しないで映画鑑賞の技術を他に学ぶ姿勢は大事にしていきたいものですね。

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  • 「下り坂」を観ました

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