映画評「快楽の園」

☆☆★(5点/10点満点中)
1925年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

いよいよ【ヒッチ曜日】の名(命名:用心棒さん)の下に、日曜日毎に時代を遡って紹介してきたヒッチコック大特集も、第2作の「山鷲」はフィルムが現存しない為鑑賞不可につき、本作を以ってひとまず完了でございます。未見の二作「シャンパン」と「ウィーンからのワルツ」は年内の鑑賞はありません。

さて、本作。再鑑賞する時間がないので、3年前にNHK-BS2で放映された時の鑑賞メモを採録しますが、悪しからず。

25年前ならフランスのシネマテークでも行かなければ観られないと思っていたアルフレッド・ヒッチコックの監督デビュー作が、こうしてお茶の間で観られるとは驚きを禁じえない。
 原作は、男性名ながら女性であるオリヴァー・サンディスで、完全なメロドラマ。

ドイツの田舎から都会に出てきたダンサー、カルメリータ・ゲラフティが出世してロシア皇帝にプロポーズされ、婚約者ジョン・スチュワートを捨てる。
 彼女の出世に一役買った先輩ダンサー、ヴァージニア・ヴァリは、カルメリータが捨てた婚約者の同僚と結婚。が、夫は南洋の島に愛人を囲い、病気の報を受けて島を訪れた妻に暴力を振るうが、スチュワートと駆けつけた現地の医師に射殺され、ここに最初から結ばれるべき二人のハッピーエンドと相成る。

雑誌に紹介されていた放映時間より10分以上も短いので、カットがあったと想像される。そのせいか話が飛ぶような印象も受けるが、心の中で補えばオリジナルの出来栄えも想像に難くない。
 このバージョンで観る限り、抜群に面白いとは言えないが、劇的な要素は多くあり、ヒッチコックもなかなか実験精神に富んだ演出を見せている。この作品でヒッチの実力を予見した批評家は本物であると言うべし。

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