映画評「皇帝ペンギン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年フランス映画 監督リュック・ジャケ
ネタバレあり
「ディープ・ブルー」でも扱われた皇帝ペンギンの興味深い生態を取り上げた動物ドキュメンタリーで、自然ドキュメンタリーは映画以外でもかなり見るので大変楽しみにしていた作品である。
三月、男女が隊列を組んで生誕の地オアモックを目指し、そこで求愛ダンスを繰り広げる。
五月に産卵を終えた雌は卵を雄に預けて子供の為の食糧確保の旅に出、およそ4ヵ月後に戻る。南極では太陽が見えず一番寒い季節である。この間父ペンギンは食料を食べず、卵を羽毛の下に隠したまま零下40度秒速70mの強風に耐える。保温の為に亀の甲のように集団を形成し、「ディープ・ブルー」でも観られた壮絶ぶりをここでも見せるが、雌が帰ると入れ替ってオアモックを後にする。
強烈なブリザードを生き抜いた子ペンギンは他の海鳥に襲われることもあるが、やがて独立していくのだ。
本能とは言え子育ての連係プレイの見事さにうなり、子ペンギンの可愛さに頬が緩む。その点では十分楽しい作品であるが、映画としては「ディープ・ブルー」に大分及ばない。あの作品は自然が表現するスペクタクルをありのままに余すことなく捉えて誠に見事であったが、こちらはドキュメンタリーとして些か作りすぎなのである。
まずポップな音楽は必要ない。音楽は一切なくても構わないが、加えるならクラシック系がふさわしいだろう。
さらに、ナレーションが多すぎる。ペンギンの言葉を代弁するように擬人的に語っているが、うるさくていけない。必要最小限の客観的ナレーションのほうが却って効果的。
映画に限らず芸術にとって重要なのは簡潔、省略、余韻である。
2005年フランス映画 監督リュック・ジャケ
ネタバレあり
「ディープ・ブルー」でも扱われた皇帝ペンギンの興味深い生態を取り上げた動物ドキュメンタリーで、自然ドキュメンタリーは映画以外でもかなり見るので大変楽しみにしていた作品である。
三月、男女が隊列を組んで生誕の地オアモックを目指し、そこで求愛ダンスを繰り広げる。
五月に産卵を終えた雌は卵を雄に預けて子供の為の食糧確保の旅に出、およそ4ヵ月後に戻る。南極では太陽が見えず一番寒い季節である。この間父ペンギンは食料を食べず、卵を羽毛の下に隠したまま零下40度秒速70mの強風に耐える。保温の為に亀の甲のように集団を形成し、「ディープ・ブルー」でも観られた壮絶ぶりをここでも見せるが、雌が帰ると入れ替ってオアモックを後にする。
強烈なブリザードを生き抜いた子ペンギンは他の海鳥に襲われることもあるが、やがて独立していくのだ。
本能とは言え子育ての連係プレイの見事さにうなり、子ペンギンの可愛さに頬が緩む。その点では十分楽しい作品であるが、映画としては「ディープ・ブルー」に大分及ばない。あの作品は自然が表現するスペクタクルをありのままに余すことなく捉えて誠に見事であったが、こちらはドキュメンタリーとして些か作りすぎなのである。
まずポップな音楽は必要ない。音楽は一切なくても構わないが、加えるならクラシック系がふさわしいだろう。
さらに、ナレーションが多すぎる。ペンギンの言葉を代弁するように擬人的に語っているが、うるさくていけない。必要最小限の客観的ナレーションのほうが却って効果的。
映画に限らず芸術にとって重要なのは簡潔、省略、余韻である。
この記事へのコメント
映画としては難ありかなと思いましたが、それとは別に、ペンギンの子育て連係プレイ・・・見事でしたね。
子ペンギンの可愛らしさったらありませんね。
わたしもこのペンギンの声はないほうが良いと思いました。
そうなんです。言葉も音楽も不要なんです。
必要最小限・・・知識として知らせるべきことだけを知らせれば十分。マイナスにこそなれプラスには絶対なりません。
自然ドキュメンタリー(に限りませんが)は映像で見せるべきものでしょう。それに徹したのが「ディープ・ブルー」。あの映画からは「自然は我々の想像を超えている」という声が聞こえました。
「ディープ・ブルー」は胸に迫りました!力作でありドキュメンタリーの名作でしょう。本作は添加物が余計でせっかくの撮影陣のお仕事を甘めにしてしまいましたね。私は吹替版(字幕版が夜の8時以降というのは困る)で観ましたが脇の下がむず痒くなるような疑似ペンギンの声に辟易しながらじっと我慢。字幕版を観た方に聞きましたが仏語もあんな感じの語りだったそうです。ああしないと子供たちを呼べないのでしょうか?素材が良ければ味付けはいらないはずですよね。
「ディープ・ブルー」は素晴らしい。「色々な場面があって散漫、主題が見えてこない」という意見を眼にしたことがあるのですが、ポイントを外しています。あの作品は自然の驚異、生の映像の凄さを示すことが主題(目的)であり、弱肉強食と言った文学的主題は最初からなかったですよね。その目的の為にナレーションも極少でした。つまり、狙いと作り方が一致した好例でした。
そこへ行くと、こちらは作者自体が焦点をぼかしてしまっています。仮に台詞で感激を呼んでも映画としては失格でしょう。映像があってこその映画なのですから。
>撮影陣のお仕事を甘めにしてしまいましたね。
正に。「ディープ・ブルー」という良いお手本があったのに勿体ない。
まだ観たことないんです~。
見比べてみたいと思います。
「ディープ・ブルー」は必見ですよ。少なくとも私は圧倒されました。余分な要素が一切ないのが素晴らしい。逆に余韻となります。
色々意見が交わされているようですね。
画面と音楽・ナレーションのシンプルな構成だけに
耳につくとうるさいかもしれませんね。
ここのところ35度ぐらいの猛暑が続いているので
こういう時にこんな映画を観るといいかもしれませんね。
おお~、TBできましたね。
一般の人に比べて映画とは内容だけで語れるものではないと思っていますので、この作品の音楽とナレーションは<なくもがな>と強く思いました。上でviva jijiさんが仰っているように撮影陣の奮闘を甘くしてしまいました。
そうですね、この暑い最中には素晴らしい涼になりそうです。