映画評「トラ・トラ・トラ!」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1970年アメリカ=日本映画 監督リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
ネタバレあり
元々は黒澤明の単独監督で進行していた戦争映画だが、完全主義が災いして途中で降板、結局米国側をリチャード・フライシャー、日本側は舛田利雄と深作欣二が監督に当たることになった。いずれも実録ものが巧い監督であり、なかなか良い選択だったように思う。
昭和16(1941)年12月8日(米国時間7日)、日米双方の交渉が決裂した結果、日本軍は連合艦隊司令長官・山本五十六(山村聡)の総指揮の下に真珠湾を奇襲する。
日米の駆け引きを描く前半は、日米双方を独立させて扱う場面が多く各シーンの長さが足りず緻密さを欠く憾みがあるが、そんなことはどうでもいいと思えるくらい、真珠湾攻撃の模様が凄まじい。
映画全体としては評判の芳しくない「パール・ハーバー」の戦闘場面もなかなか優秀だったが、本作ではCGは勿論、模型や映像の合成に頼らず、全て本物の飛行機と船(後記:巨大なミニチュアは本物に準ずる、としておきます)を使っており、その迫力たるや戦争映画史上最高と言っても良い。
実際に破壊される飛行機の数メートル横で本物の人間が動いているが、合成は一切ない。スタントマンとは言え、よくこんな場面が撮れたもので、この映画の6年後に作られた「ミッドウェイ」が古い実写フィルムの使い回しでがっくりさせられたのとは対照的である。今のように役者のギャラが高騰していない時期の3300万ドル(固定相場制時代、約120億円)という製作費は伊達ではないことを思わせる。
完全な日米合作で、日本側の脚本は黒澤明のものが大きく変更なく使われ、名人・小国英雄と菊島隆三が参画しているので、日本側の描写に不具合がないのも嬉しい。
アメリカ側では、太平洋艦隊司令長官キンメル大将にマーティン・バルサム、ショート陸軍中将にジェースン・ロバーズ、スティムスン陸軍長官にジョゼフ・コットン、E・G・マーシャル、日本側では山村の他、南雲忠一海軍中将に東野英治郎、三橋達也、田村高広ら。どちらかと言えば通好みの配役が楽しめる。
1970年アメリカ=日本映画 監督リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
ネタバレあり
元々は黒澤明の単独監督で進行していた戦争映画だが、完全主義が災いして途中で降板、結局米国側をリチャード・フライシャー、日本側は舛田利雄と深作欣二が監督に当たることになった。いずれも実録ものが巧い監督であり、なかなか良い選択だったように思う。
昭和16(1941)年12月8日(米国時間7日)、日米双方の交渉が決裂した結果、日本軍は連合艦隊司令長官・山本五十六(山村聡)の総指揮の下に真珠湾を奇襲する。
日米の駆け引きを描く前半は、日米双方を独立させて扱う場面が多く各シーンの長さが足りず緻密さを欠く憾みがあるが、そんなことはどうでもいいと思えるくらい、真珠湾攻撃の模様が凄まじい。
映画全体としては評判の芳しくない「パール・ハーバー」の戦闘場面もなかなか優秀だったが、本作ではCGは勿論、模型や映像の合成に頼らず、全て本物の飛行機と船(後記:巨大なミニチュアは本物に準ずる、としておきます)を使っており、その迫力たるや戦争映画史上最高と言っても良い。
実際に破壊される飛行機の数メートル横で本物の人間が動いているが、合成は一切ない。スタントマンとは言え、よくこんな場面が撮れたもので、この映画の6年後に作られた「ミッドウェイ」が古い実写フィルムの使い回しでがっくりさせられたのとは対照的である。今のように役者のギャラが高騰していない時期の3300万ドル(固定相場制時代、約120億円)という製作費は伊達ではないことを思わせる。
完全な日米合作で、日本側の脚本は黒澤明のものが大きく変更なく使われ、名人・小国英雄と菊島隆三が参画しているので、日本側の描写に不具合がないのも嬉しい。
アメリカ側では、太平洋艦隊司令長官キンメル大将にマーティン・バルサム、ショート陸軍中将にジェースン・ロバーズ、スティムスン陸軍長官にジョゼフ・コットン、E・G・マーシャル、日本側では山村の他、南雲忠一海軍中将に東野英治郎、三橋達也、田村高広ら。どちらかと言えば通好みの配役が楽しめる。
この記事へのコメント
<通好みの配役
東宝映画でよく拝見する役者さんが多かったですね。マコさんも出ていたみたいですが、どこで出ていたのかな…あの暗号文を届けていたアメリカ側の日本人でしょうか?
マコさんが出ていたのは「パール・ハーバー」のほうではないですか。あれではお偉い日本人役で出ていらっしゃいましたよ。
東宝系が多いのは、やはり黒澤明でスタートしたからでしょうね。撮影は東映で行われたようです。
いや、もう、何をかいわんや、でございます。
土俵が違いますってば。
深作さんと舛田さん、いいお仕事してます、カッキリと。
爆撃シーン、素晴らしかったです。
じっくりと腰を落ち着けて撮ってますよ。
どこかの本作に関しての詳細なサイトで日米のスタッフ間で
6000回以上のチェック&コンタクトを行ったとありました。
「ミッドウェイ」はイマイチと伺いましたが、本当に?
>6000回
はあ、それは凄い。黒澤だけが完全主義ではないということですね。
溝口健二も相当なものだったらしい。
「ミッドウェイ」は豪華メンバーでしたが、脚本もジャック・スマイトの演出も今一つパッとしなかったですね。何より戦争映画で大事な戦闘場面が実戦フィルムばかりで、新規に撮った場面が殆どなくて、がっくり。未見でしたらそのまま素通りで結構ですよ。
カーチス戦闘機が暴走してスタントマンがアタフタするところは何度観てもすごいですね。また黒澤が監督していたらどうなったか推測するのもたのしいです。
艦船が爆撃されるシーンでは一部ミニチュア特撮が使われています。貴殿がすべて実写だと思われていたのでしたら、特撮監督のL.B.アボットも天国で喜んでいるでしょう。
>一部ミニチュア特撮
情報有難うございます。
模型とは言いにくい巨大なミニチュア(事実上セットと言うべきレベル)が使われたであろうことは想像していましたが、仰るようにすべて本物に見えたわけですから、それ自体は素晴らしいことですし、一連の説明部分に紛らわしい表現があったことは認めなければなりません。
いずれにしてもちんけな合成はないですし、他映画からのフィルムの流用もないと思われます。ご指摘の暴走場面は本当に凄いですよね。
コメント有難うございました。
さて、「トラ・トラ・トラ!」。アメリカ側と日本側を分けてうまく撮っています。
>日本側の脚本は黒澤明のものが大きく変更なく使われ、名人・小国英雄と菊島隆三が参画しているので、日本側の描写に不具合がない
そこです。
>ショート陸軍中将にジェースン・ロバーズ
「砂漠の流れ者」とは全然違う役。いいですねー!
>人口密度が低い為、宣言発出などで人流が減り出すと、急激に減る傾向がありますね
愛知県と三重県・岐阜県の感染者数の差が凄いです。
>江戸時代に(200年ほど)平和だった故に固まったのかもしれない
自分が住んでいる町や村から一歩も出た事がない人も多かったのでしょう。
>「ラバー・ソウル」のリミックスを後期作品同様に希望しています。
1960年代は4つのチャンネルで録音。それをどのようにミックスするか?エンジニアの感性が試されます。
>菅首相が退陣
安倍氏は高市氏を支援していますが・・・。
>先ほど舛田利雄監督作品「城取り」を見ました。
自信を持って言えますが、これは未見です。
今でこそ、時代劇は優先的に見ますが、昔は現代劇のほうが面白いものが多いと思っていたんですよ。
>「砂漠の流れ者」とは全然違う役。いいですねー!
中学時代に初めて「トラ・トラ・トラ!」を見た時には知らなかったですが、「ジュリア」でのダシェル・ハメット役に惚れ込み、大好きな男優になりました。
>1960年代は4つのチャンネルで録音。それをどのようにミックスするか?
「ラバー・ソウル」(それ以前のものと同様)はボーカルが偏ったものが多いですが、ボーカルはセンターでないと落ち着かない。ギターや小さな楽器は偏ったほうが寧ろ良いですが、ドラムとベースは演奏の状態によりますかね。しつこいですが、リミックス希望!(笑)
>安倍氏は高市氏を支援していますが・・・。
彼女は節操がないし、総務相時代に政権を批判するTV局を“偏向している”と、度量の小さいところを見せて、放送停止にまで言及している。夫婦別姓にも理解がある野田聖子の方がずっと良い。
批判はご馳走と思って吸収しないような政治家はダメ!
>全て本物の飛行機と船を使っており、その迫力たるや戦争映画史上最高と言っても良い。
予算が多かった。それに加えて舛田利雄監督は戦闘や戦(いくさ)の場面を撮るのが上手いです。昨日話題にした「城取り」を見て思いました。
>「ジュリア」でのダシェル・ハメット役
BSまたはCATVで放映して欲しいです。
>ボーカルはセンターでないと落ち着かない。
アナログ時代の赤盤は片方が演奏。他方がヴォーカル。カラオケみたいでした。
>批判はご馳走と思って吸収しないような政治家はダメ!
太っ腹な人が政治家に向いているのでしょう。
>ビートたけしさん
大変な目に遭いましたが、怪我がなくて良かったです。
しかし、襲った理由は政治的な発言に関する事かと思ったら、「弟子入りを志願したが無視された」なんですね・・・。
>>全て本物の飛行機と船を使っており
本文にも書いたように、厳密には大きなミニチュアを使っているのですが、大きいので本物として扱ってます(笑)
>>「ジュリア」
>BSまたはCATVで放映して欲しいです。
比較的よく出る作品です。
僕は、お気に入りで、映画館で何度か観ました。
>他方がヴォーカル。カラオケみたいでした。
言い得て妙。
CDは日本で発売された最初の4枚はモノ、「HELP!」以降はステレオになりますが、「ラバー・ソウル」が一番ひどい(但し音質は良好)。
「リボルバー」以降はそういう疑似ステレオ的なものではなくなりました(ボーカルが偏っているものもありますが、印象が違いますね)。
>>ビートたけしさん
>大変な目に遭いましたが、怪我がなくて良かったです。
逆恨みは怖いですね。京アニの事件もその類でしょう。
1990年代アメリカで何故か逆恨みサスペンスが流行ったのを思い出します。