映画評「秘めたる情事」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督フィリップ・ダン
ネタバレあり

ジョン・オハラの「北フレデリック街十番街」の映画化と聞いてもオハラは全く読んだことがないのでピンと来ない。しかし、映画を観る限りなかなか味わいのある良い物語である。

有能な弁護士ゲイリー・クーパーが、冷淡な妻ジェラルディン・フィッツジェラルドに尻を叩かれて政界に進出しようとするが、金をばらまいただけに終る。
 ヤクザなバンドマンに惹かれた娘ダイアン・ヴァーシーは結局流産して関係を裂かれ、息子トム・タリーも父親を憎んでいるようで実は母親を憎み、大学卒業後入隊してしまう。
 クーパーはニューヨークに暮らしていた娘に会いに行った際知り合った彼女の親友スージー・パーカーと愛し合うが、自らの年齢を考えて身を引き、彼女を思いながら死んでいく。
 というお話が、父親が重病と聞いて駆け付けたダイアンの回想の形で展開する。

「わが谷は緑なりき」などの優れた作品が少なくない脚本家フィリップ・ダンが自らの脚本を映像化した作品だが、全体的に平板で些か退屈である。物語自体はしっかりしているし、脚本も悪くなさそうだが、場面の作り方がじっくりすぎる上にカメラの使い方がスローなパンのワン・パターンで面白味に乏しい。

しかし、誇り高き男が一見アル中に零落したように見えながら尊厳を保ちつつ死んでいく様を娘と息子が見守る、という物語には大変感銘を呼ぶものがあり、この後も色々と作ったダンの監督作としては一番見応えがあるのではないかと思う。
 邦題は前年ヒットしたクーパー主演作「昼下りの情事」を模倣したものだろう。

当時青春スター驀進中だったダイアン・ヴァーシーは結局大成しなかったが、71年の「ジョニーは戦場へ行った」の看護婦役が最も印象深い作品となり、92年呼吸不全で亡くなっている。

この記事へのコメント

sawasawa
2009年04月25日 17:55
初めてメールします。「青春物語」と「秘めたる情事」は私の青春。どうしても
ほしい。教えてください。
オカピー
2009年04月26日 02:30
sawasawaさん、初めまして。

質問の趣旨がよく解らないのですが、ビデオ若しくはDVDという意味なら、
日本では共に手に入らないようです。

「青春物語」はアメリカではDVDが売られているようなので、輸入版として手に入れられるかもしれません。リージョン・コードがアメリカ限定ですと日本の再生機では観られませんが。

本作はWOWOWで観たと記憶していますので、放映で観られる可能性も多少あると思います。
sawasawa
2009年04月27日 00:03
早速ありがとうございました。TVでも「Peyton Place」を放映していたらしいのですが、これも観たい。「秘めたる情事」少し光が見えてうれしい。ゲーリー
クーパーってやはり存在感大いにあり。「摩天楼」も欲しいのですが、TSUTAYA
にも無いのです。
オカピー
2009年04月27日 02:35
sawasawaさん、こんばんは。

どういたしまして。

>「摩天楼」
これはDVDが出ていますので、お金を出せば購入できるはずですよ。
sawasawa
2009年05月14日 21:38
オカピー先生ありがとうございました。Peyton PlaceのVHS輸入版を買いました。筋はわかっていますので、英語のセリフは大方クリアー。嬉しい限りです。「秘めたる情事」はどうやって買ったのですか?教えてください。「大都会の女たち」(The Best of Everything)VHSの輸入版が手に入りそうです。嬉しい。
映画の黄金時代でしたね。このころは。女優も素敵な人がたくさんいました。なんといっても私の好きなのはラナ・ターナー。「ランチプールの雨 」の時などは
本当にきれいでしたよ。
オカピー
2009年05月15日 01:02
sawasawaさん、こんばんは。

おおっ、早速買われたのですか!
善は急げと言いますからね。^^

「秘めたる情事」はWOWOWで観たのですよ。
いつか再放映されたら、DVDを作りましょうか?(すぐに再放映される可能性は低いです)。
DVDのVRモードを再生できる機械が必要ですが、今のDVDレコーダーなら大概できます。

>「ランチプールの雨」
正確には「雨のランチプール」だったように記憶しておりますが、こちらもTVで観ました。
「大都会の女たち」は未鑑賞ですが、ホープ・ラングやスージー・パーカーといった若手が出たらしいですね。チャンスがあったら観てみたいですね。

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