映画評「おしゃれ泥棒」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1966年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー
ネタバレあり
シリアス・ドラマからコメディ、西部劇、スリラー、ロマンス何でもござれのウィリアム・ワイラーがまたもや名人芸を発揮したロマンティック・コメディー。「ローマの休日」「噂の二人」に続くオードリー・ヘプバーンとの三度目のコンビ作だけにもはや言うことなしです。
舞台はパリ、贋作画家ヒュー・グリフィスの娘オードリーが、美術商シャルル・ボワイエに頼まれて贋作か否かを探りに入った探偵ピーター・オトゥールを泥棒と間違えて銃撃。
やがて、祖父の遺した偽物ヴィーナス像が鑑定されることになると困る父親に警備の固い美術館から奪還するように依頼された娘は泥棒と信じ込んだオトゥールと二人三脚で初めての泥棒に挑戦することになる。
自分の所有物を泥棒する羽目になるという大いにとぼけたお話で、コメディの必要条件とも言うべき嘘若しくは誤解はオードリーがオトゥールを泥棒と誤解することで十分満たされております。
肝心の泥棒場面もなかなか凝っていて面白いが、詳細は伏せておきましょう。ただ、それまで徹底的にパステル・カラーの単色系衣服をファッショナブルに着こなしていたオードリーを掃除婦に化けさせるアイデアには脚本家の茶目っ気が感じられて大変愉快であります。
「パリの恋人」などオードリー主演のコメディーにはファッション・ショー的な要素が散りばめられていてそれを楽しませるのもそもそもの眼目でありまして、それと並んでパリ市内を車が縦横無尽に走る場面が楽しい。小さな赤いコンヴァーティブルに始まり白のジャガーEタイプで終る、開巻・幕切れの呼応のさせ方も抜群。
ハリー・カーニッツの脚本が上出来ですが、ワイラーの洒落っ気があればこその快作であります。
1966年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー
ネタバレあり
シリアス・ドラマからコメディ、西部劇、スリラー、ロマンス何でもござれのウィリアム・ワイラーがまたもや名人芸を発揮したロマンティック・コメディー。「ローマの休日」「噂の二人」に続くオードリー・ヘプバーンとの三度目のコンビ作だけにもはや言うことなしです。
舞台はパリ、贋作画家ヒュー・グリフィスの娘オードリーが、美術商シャルル・ボワイエに頼まれて贋作か否かを探りに入った探偵ピーター・オトゥールを泥棒と間違えて銃撃。
やがて、祖父の遺した偽物ヴィーナス像が鑑定されることになると困る父親に警備の固い美術館から奪還するように依頼された娘は泥棒と信じ込んだオトゥールと二人三脚で初めての泥棒に挑戦することになる。
自分の所有物を泥棒する羽目になるという大いにとぼけたお話で、コメディの必要条件とも言うべき嘘若しくは誤解はオードリーがオトゥールを泥棒と誤解することで十分満たされております。
肝心の泥棒場面もなかなか凝っていて面白いが、詳細は伏せておきましょう。ただ、それまで徹底的にパステル・カラーの単色系衣服をファッショナブルに着こなしていたオードリーを掃除婦に化けさせるアイデアには脚本家の茶目っ気が感じられて大変愉快であります。
「パリの恋人」などオードリー主演のコメディーにはファッション・ショー的な要素が散りばめられていてそれを楽しませるのもそもそもの眼目でありまして、それと並んでパリ市内を車が縦横無尽に走る場面が楽しい。小さな赤いコンヴァーティブルに始まり白のジャガーEタイプで終る、開巻・幕切れの呼応のさせ方も抜群。
ハリー・カーニッツの脚本が上出来ですが、ワイラーの洒落っ気があればこその快作であります。
この記事へのコメント
浮き世離れしたオードリーにぴったしのお話でしたね。ネグリジェにゴム長も珍しいし、何より盗み方がおしゃれでした。
<http://blog.goo.ne.jp/8seasons/e/fd75e9352641f5474b19aeaae120e269>
洒落とおしゃれなんです、どこまでも。
仰るように、他力本願で愉快な盗み方でしたね。こういう物語は作れそうでなかなか作れないし、今の役者がこれをやったら馬鹿に見えますよ、きっと。オードリーはやはり稀有なタレントでしたし、オトゥールも深刻ぶっているだけではない曲者です。
そしてワイラー。<映画は呼吸>を地で行くような作品でした。
オカピーさん、高得点ですねー!私もこの作品は大好きです。
<美術商シャルル・ボワイエ
あれシャルル・ボワイエでしたか!流して観てしまって気に止めてませんでした^^;)。関係ないですが今日再放送された「アイ・ラブ・ルーシー」にシャルル・ボワイエが出演していて、ルーシーに合わせてあのボワイエがギャグを連発してました。コミカルなキャラも気軽に演じてくれる、気さくな役者さんだったのかなぁと、嬉しくなりました^^)。
いやー、どこからどこまでも上手い。洒落っ気満点。
「昨日や今日映画を観始めた餓鬼どもには解るめえ」そんな感じですねえ。
これを見ると「シャレード」がまた観たくなります。
シャルル・ボワイエは愛妻が亡くなってほどなく亡くなった(後追い自殺だったか? 病死だったか?)愛妻家でした。まだその時のニュースを憶えていますよ。
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しばらくコレで試してみます。
それはグッド・ニュースですね。
これからも宜しくお願いします。
>肝心の泥棒場面もなかなか凝っていて面白い
面白いです!ハラハラさせながら笑わせてくれます。
>ギルド・ボッチというらしいです。1886年生ー1964年没。
教えて下さってありがとうございます。当時67歳ですか。高齢だったんですね。
>「大いなる西部」
グレゴリー・ペックが爽やかです。
>まず冒頭のテーマ曲からワクワクします。
アメリカ映画が真に面白かった頃。ニューシネマはそれはそれで価値があると思いますが、リアリズム志向で映画がちと窮屈になったかな。
>グレゴリー・ペックが爽やかです。
「ローマの休日」でワイラーが気に入ったのかもしれません。
「大いなる西部」は新(東部)と旧(西部)の対立がテーマでしたね。これもまた消えていく西部へのレクイエムの作品だったでしょう。
>ニューシネマはそれはそれで価値があると思いますが
僕が大学4年生で大失恋をした頃。「真夜中のカーボーイ」や「わらの犬」のような作品をテレビからβのビデオデッキで録画して何度も見ました。心を癒す為だったんでしょうね・・・(苦笑)。
>「大いなる西部」は新(東部)と旧(西部)の対立がテーマでしたね。
東部から来たジム・マッケイ(グレゴリー・ペック)が新風を巻き起こすイメージでした。そして彼は婚約者テリル(キャロル・ベイカー)よりも学校教師ジュリー(ジーン・シモンズ)を選んだのでした。
>イーライ・ウォラック
中学生の時、俳優の名前などとんと存ぜぬ同級生たちが、イーストウッド主演のマカロニ・ウェスタンに関し、“おっちゃん、おっちゃん”を連呼していたので、ウォラックのことかと思いきや、よく聞くと、リー・ヴァン・クリーフのことなのでした。
>僕が大学4年生で大失恋をした頃。「真夜中のカーボーイ」や「わらの犬」のような作品をテレビからβのビデオデッキで録画して何度も見ました。
>心を癒す為だったんでしょうね・・・(苦笑)。
それは良い思い出かもしれないなあ。
「卒業」は選べませんでしたか?(笑)
>彼は婚約者テリル(キャロル・ベイカー)よりも
>学校教師ジュリー(ジーン・シモンズ)を選んだのでした。
キャロル・ベイカーの演じた金髪娘はみかけによらず、こてこての保守女性ですからねえ。
>リー・ヴァン・クリーフ
怖いおっちゃん?でも彼は時々優しそうな表情をしますね(笑)。
>「卒業」は選べませんでしたか?(笑)
大失恋をする3か月前、僕の下宿で、その女の子と「卒業」を楽しく見ました。だから選べませんでした(苦笑)。
>キャロル・ベイカーの演じた金髪娘はみかけによらず、こてこての保守女性ですからねえ。
西部?あるいは南部?その違いは僕にはまだまだわかりません(汗)。
>>リー・ヴァン・クリーフ
>怖いおっちゃん?でも彼は時々優しそうな表情をしますね(笑)
アメリカ時代から悪役傾向があり、イタリアでも脇役の場合は悪役方面ですが、次第に増えて来たイタリアにおける主演作品では、主役らしい主人公を演じています。多分そうした優しい方面も生かされているのでしょう。
>僕の下宿で、その女の子と「卒業」を楽しく見ました。
>だから選べませんでした(苦笑)。
そりゃ無理ですねTT
>西部?あるいは南部?その違いは僕にはまだまだわかりません(汗)。
時代によっても違いますよね。
今は、東海岸と西海岸とが革新で民主党、中部・南部が保守で共和党が強いのであります。
>多分そうした優しい方面も生かされているのでしょう。
オカピー教授。良い事を仰いますねー!
リアルタイムで見た事はないCMですが、すごくいいです!
https://www.youtube.com/watch?v=aj4Tz9mIdoU
>そりゃ無理ですねTT
あははは!ありがとうございます。
>中部・南部が保守で共和党が強い
メキシコとの境界線が特にそうなのでしょうか?
>当時44歳のキャロル・ベイカーが色っぽい女性教師を演じていました。
60年代後半に行き詰ったのでしょうか、彼女もイタリア映画に活路を見出し、その中の一本が「課外授業」でした。
>>中部・南部が保守で共和党が強い
>メキシコとの境界線が特にそうなのでしょうか?
メキシコが保守度を強める面はあるでしょうねえ。テキサスは保守的とイメージが強いです。しかし、「イージー・ライダー」の背景となったテキサスのお隣ルイジアナもひどく保守的でしたね。
歴史というのは面白いもので、南北戦争前に奴隷解放をしようとしたのは共和党なんですよねえ。現在とは逆に、北部に共和党が多かったと思います。
>南北戦争前に奴隷解放をしようとしたのは共和党
「南北それぞれの利害関係があった」と僕の高校時代に世界史の先生が言ってました。
>開巻・幕切れの呼応のさせ方も抜群。
ニコル(オードリー・ヘプバーン)の父親(贋作画家)も懲りない人だなあ・・・と思わせるのが面白いです。
「おしゃれ泥棒」という邦題もいいですねー!
>「南北それぞれの利害関係があった」と僕の高校時代に世界史の先生が言ってました。
奴隷解放問題だけでなく、保護貿易を主張する北部と自由貿易を推進する南部という対立もあったようです。共和党は、その点では今と余り変わらない。但し、支持基盤の州がまるっきり変わりましたが。
>「おしゃれ泥棒」という邦題もいいですねー!
概して、当時の邦題は今より良い感じがします。現在はサブタイトルに頼り過ぎているのが特に良くない。