映画評「ロボッツ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督クリス・ウェッジ
ネタバレあり

登場するのは全てロボットというアニメ映画だが、こういうのを観ると、アンドロイドに反射させて人間を描いた「AI」がいかに優れた作品だったか分る。不幸にしてあの秀作は、キューブリック及びスピルバーグが人間を描かずに逆説的に人間を描こうとした狙いすら見ぬけない観客が多く、出来栄えに比べて評価されなかった。
 これだけは言っておきたいと思うが、「AI」は人間と純粋なアンドロイドを対立軸として語られた物語ではなく、プログラム通りに動くアンドロイドに、都合よく行動する人間にはない性質を表徴させ、即ち、その反対が人間であるという、皮肉な視点で語られた人間探求の作品だったのである。それに比べてこの作品全編にふりかけられた砂糖菓子のような甘さは何だろうか。

勿論お子様には健全な内容で教育にも良さそうな内容であるが、不幸、僕は子供ではない。年間300~400本映画を観る生活を35年間も続けてきた人間である。

そんな僕には、全員がロボットであることは結局は全て人間であるのと全く変わらず、どこに面白さを見出していいのか分らない。「猿の惑星」シリーズでは猿にデモなどをさせて黒人差別問題を遠回しに描いたが、それと同じようなレベルである。

貧しいロボット夫婦(ロボットは子供を自ら組み立てて作るらしい)の間に生まれたロドニーが成長して、理想的なロボット社会を作り上げたビッグウェルド博士に会いにロボット・シティに行くが、博士を追い出した悪漢母子が全てを変えた為、貧しいロボットたちは生活できなくなる。

つまり、これは貧しい正義感に燃える若者が抑圧的になった社会に反旗を翻すという構図の大昔から腐るほど作られてきたヒューマン・ドラマと何ら変るところがなく、あの悪漢母子など「シュレック」と同工異曲で、全くつまらない。

絵はなかなか見事であります。

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