映画評「蝉しぐれ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・黒土三男
ネタバレあり
読書はそれなりにしているが、時代小説は余り読まず、本作の原作者・藤沢周平も名前を知るのみ。勿論、原作を読んでいないことは映画を観る上では先入観も余分な知識もなく好都合なことが多い。
東北地方の小さな海坂藩の下級武士・牧助左衛門(緒形拳)が主君の世継ぎ問題に巻き込まれ、たまたま負けた側についただけの理由で謀反人の汚名を着て処刑される。
数年後、義理の息子・文四郎(市川染五郎)は復権して村廻りの役を仰せつかるが、命じた筆頭家老・里村左内(加藤武)こそ父の処分を決めた男と知る。
そして彼は主君の妾おふく様の息子を奪うよう家老の命を受け父親同様お家騒動に巻き込まれるのだが、その際に少年時代淡い恋を抱き合った近所の娘おふく(木村佳乃)と再会するのであった。
2003年にTVミニシリーズ用にも脚本を書いた黒土三男が再び脚本を書いてメガフォンまで取っているが、監督は止めておいたほうが無難だったのではないかと思う。
同じく藤沢作品を映像化した山田洋次の「たそがれ清兵衛」の巧さに比べるまでもなく、編集に難あり、即ち、ショットの構成がまずく場面の繋ぎにぎこちないところが少なくないのである。
さらに戴けないのがわび・さびとは程遠い過剰な演出で、少年時代に割腹した父を運ぶ主人公をおふくが手伝う場面や終盤敵側から逃げる場面で友人(今田耕司)が協力する場面など、もう少しあっさり処理した方が床しさがあり余韻も醸成できたであろう。
思い余って勇み足気味、良い物語だけに勿体ない。
2005年日本映画 監督・黒土三男
ネタバレあり
読書はそれなりにしているが、時代小説は余り読まず、本作の原作者・藤沢周平も名前を知るのみ。勿論、原作を読んでいないことは映画を観る上では先入観も余分な知識もなく好都合なことが多い。
東北地方の小さな海坂藩の下級武士・牧助左衛門(緒形拳)が主君の世継ぎ問題に巻き込まれ、たまたま負けた側についただけの理由で謀反人の汚名を着て処刑される。
数年後、義理の息子・文四郎(市川染五郎)は復権して村廻りの役を仰せつかるが、命じた筆頭家老・里村左内(加藤武)こそ父の処分を決めた男と知る。
そして彼は主君の妾おふく様の息子を奪うよう家老の命を受け父親同様お家騒動に巻き込まれるのだが、その際に少年時代淡い恋を抱き合った近所の娘おふく(木村佳乃)と再会するのであった。
2003年にTVミニシリーズ用にも脚本を書いた黒土三男が再び脚本を書いてメガフォンまで取っているが、監督は止めておいたほうが無難だったのではないかと思う。
同じく藤沢作品を映像化した山田洋次の「たそがれ清兵衛」の巧さに比べるまでもなく、編集に難あり、即ち、ショットの構成がまずく場面の繋ぎにぎこちないところが少なくないのである。
さらに戴けないのがわび・さびとは程遠い過剰な演出で、少年時代に割腹した父を運ぶ主人公をおふくが手伝う場面や終盤敵側から逃げる場面で友人(今田耕司)が協力する場面など、もう少しあっさり処理した方が床しさがあり余韻も醸成できたであろう。
思い余って勇み足気味、良い物語だけに勿体ない。
この記事へのコメント
>編集に難あり、即ち、ショットの構成がまずく場面の繋ぎにぎこちないところが少なくないのである。
原作も相当細やかで濃密な作品ですが、
この映画は、黒土三男さの独自の解釈も加わって、
とても2時間では消化し切れない内容になっているように思えます。
キャスティングにもいささか難があるような。
原作のファンにとってはとても惜しい作品であります…。
(山田監督作品の様に、映画としての出来が良ければ文句も出ないのですが…)
私は原作とのギャップや先入観が嫌で、映画になりそうな新しい作品は読まないようにしているんです。古典は読みますけどね。
その意味で少年時代の耽溺した「ルパン」は観たくないですし、観る前から役者に失格の烙印を推しているんです(笑)。
>キャスティング
できれば演技力のある舞台俳優を起用したいところですが、集客力に問題で変てこなのが多いですね。演技力以前にイメージがありすぎますのでね。お笑いの二人もそうですが、木村佳乃も余りピンと来なかったなあ。
仰るように、山田洋次は上手いです。
連続ドラマは観ていないので比較はできませんが、脚本家上がりの演出家によくある、場面が必要以上に長くなる傾向が気になりました。
山田洋次を持ち出すまでもなく、場面の繋ぎもいま一つ。
物語は悪くないですね。
刀は数人も斬ればもはや役に立たないらしく、類似アイデアはもっとあっても良いはずですけどね。案外盲点なんだな。
しかし、原作の殊勲かもですね。^^