映画評「なごり雪」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2002年日本映画 監督・大林宣彦
ネタバレあり
かぐや姫の曲はどれを聴いても胸に響いて切なくなってしまう。そこへ30年という重みが加わるのだからもう言葉にならない。
傑作「なごり雪」が映画化されると聞いた時舞台が東京でなく九州と知り、「はてどのように作られるのか」と興味津々だった。それから1年経って(2004年1月)遂に現物を見て疑問を解く。
50歳を目前にして妻に逃げられた中年男・槙村(三浦友和)が故郷に残った高校時代の旧友・永田(ベンガル)から「妻が交通事故で危篤だから帰郷してくれ」という電話を貰う。彼の妻・雪子は若い時に槙村に憧れていたのである。
そして彼らが高校生だった頃に戻る。槙村(細山田隆人)と永田(反田孝幸)は高校3年、雪子(須藤温子)は二つ後輩の1年である。彼女は雪が降ると奇跡が起こると信じている純粋な少女。
三人は殆ど一緒に行動しているが、実は彼女は槙村が好きである。しかし彼が大学進学の為上京、恋人(宝生舞)を連れてきたときから状況は一変する。
結局生意気そうな彼女と結婚を果たした槙村は雪子を永田に託すという形で故郷を去り30年近くも戻らずにいたのである、雪子との約束を守ることなく。
そして現在、雪子は幻となって現れ、彼女が別れの前日ナイフを持っていた理由を二人に説明すると息絶える。
大林宣彦監督は執拗なまでに、彼女が持っていたナイフを永田が奪おうとして彼女が怪我をする場面をフラッシュバックさせる。度を越えていると思えてくる。しかし、それにはきちんとした理由があることが最後に判るという構成が実に上手い。実は枕の中に詰め込んだ"雪"を降らせて奇跡を起そうとしていたのである。槙村に見棄てられ自殺しようとしたわけではないのだ。
上手すぎる。上手すぎて素直に感動できなかったような気がするほどである。もう少しあっさりしていても良かったのではないか。
しかし、伊勢正三の歌詞を、彼の下宿を訪れ世話をした後九州に帰る時を彼女が夢想した情景としたのは実に味わい深い。これは素直に認めたい。「今春が来て君は綺麗になった 去年よりずっと綺麗になった」。
しかし彼女の夢は遂に果たされない。切なすぎる。上手すぎる。
2002年日本映画 監督・大林宣彦
ネタバレあり
かぐや姫の曲はどれを聴いても胸に響いて切なくなってしまう。そこへ30年という重みが加わるのだからもう言葉にならない。
傑作「なごり雪」が映画化されると聞いた時舞台が東京でなく九州と知り、「はてどのように作られるのか」と興味津々だった。それから1年経って(2004年1月)遂に現物を見て疑問を解く。
50歳を目前にして妻に逃げられた中年男・槙村(三浦友和)が故郷に残った高校時代の旧友・永田(ベンガル)から「妻が交通事故で危篤だから帰郷してくれ」という電話を貰う。彼の妻・雪子は若い時に槙村に憧れていたのである。
そして彼らが高校生だった頃に戻る。槙村(細山田隆人)と永田(反田孝幸)は高校3年、雪子(須藤温子)は二つ後輩の1年である。彼女は雪が降ると奇跡が起こると信じている純粋な少女。
三人は殆ど一緒に行動しているが、実は彼女は槙村が好きである。しかし彼が大学進学の為上京、恋人(宝生舞)を連れてきたときから状況は一変する。
結局生意気そうな彼女と結婚を果たした槙村は雪子を永田に託すという形で故郷を去り30年近くも戻らずにいたのである、雪子との約束を守ることなく。
そして現在、雪子は幻となって現れ、彼女が別れの前日ナイフを持っていた理由を二人に説明すると息絶える。
大林宣彦監督は執拗なまでに、彼女が持っていたナイフを永田が奪おうとして彼女が怪我をする場面をフラッシュバックさせる。度を越えていると思えてくる。しかし、それにはきちんとした理由があることが最後に判るという構成が実に上手い。実は枕の中に詰め込んだ"雪"を降らせて奇跡を起そうとしていたのである。槙村に見棄てられ自殺しようとしたわけではないのだ。
上手すぎる。上手すぎて素直に感動できなかったような気がするほどである。もう少しあっさりしていても良かったのではないか。
しかし、伊勢正三の歌詞を、彼の下宿を訪れ世話をした後九州に帰る時を彼女が夢想した情景としたのは実に味わい深い。これは素直に認めたい。「今春が来て君は綺麗になった 去年よりずっと綺麗になった」。
しかし彼女の夢は遂に果たされない。切なすぎる。上手すぎる。
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