映画評「あずみ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2003年日本映画 監督・北村龍平
ネタバレあり

2003年の映画評から

コミック音痴の僕としては小山ゆうの原作は全く知らないが、序盤のエピソードで殆ど興醒めしてしまう。

徳川時代の初め、徳川に反旗を翻す大名達を暗殺する使命を帯びた刺客たちの物語なのだが、彼らが山奥で修業を積んでいるところから始まる。
 ここが甚だ興醒めなのである。
 爺(原田芳雄)が10人の若者に殺し合いをさせて5人の精鋭を選ぶ。精鋭をスクリーニングするのは良しとしても、最初からNO.1とNO.2を競わせるという発想が全く理解できない。他の若者たちが二人のどちらかがNO.1だと言っているのでこれは間違いないのだが、わざわざ強い人間同士を闘わせることは、精鋭を選抜する所期の目的に反することである。
 最初からこれほど致命的な穴があるようではこの先かなり辛いことになるだろうと覚悟を決めた。

結局、女の子であるあずみ(上戸彩)など5人が残るのだが、見どころはあずみの男装や「俺」と言わせるなどの倒錯的な部分となるのかもしれない。

大名達を順調に倒しながらも仲間達は次々と減っていき、あずみはおかま言葉を使う剣の達人オダギリジョーと一騎打ちすることになる。
 この場面の見どころは縦方向にカメラをぐるぐる回すという離れ業。アントニオーニに始る横回転は腐るほど見せられたが、これには度肝を抜かれる。気持ち悪くなるなどと言っていないで、素直に賞賛したい。ここで★一つ稼ぐ。

お話のほうは一度失った興味を取り戻すのは難しいながらも何とか最後まで観られる。
 殺陣は「たそがれ清兵衛」のような役者の形ではなく、撮影と編集テクニックで見せるもので余り本格的とは言えない。さすがに若者向けであります。

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年10月01日 07:57
こんにちはーTB有難うございます。
<最初からNO.1とNO.2を競わせる
小栗旬が早々にいなくなっちゃうのが痛かったです^^;)。でも劇場で観たせいか、グルグル回るカメラや上戸彩ちゃんのアクションも迫力を感じて面白かったです。
<小山ゆうの原作
絵があまり好きじゃないんですが話はまあまあ面白かったです。連載当時の「サンデー」は他に「タッチ」や「うる星やつら」などが連載されていて、それを目的に買って読んでいたので「あずみ」はついでに読むという感じでした。でもその「あずみ」も白土三平の「カムイ伝」に比べたらイマイチ…という感じです^^;)。
オカピー
2006年10月01日 14:59
ぶーさかさん、こんにちは。
色々な方のコメントを参考に読みましたが、不思議なことに、CGがどうのこうのアクションがどうのこうので、冒頭の理不尽な設定に誰も文句を言っていません。
私は開巻5分でがっくりきて、脚本家の知能指数を疑いましたが、皆さんはこれほど大きな穴を何とも思わないのでしょうか。原作だか脚本だか分りませんが、この設定を考え出した人は戦場ではすぐにあの世行きですよ。弱い者を残して強い者を殺しちゃうんですから。
ぶーすか
2006年10月01日 16:07
確かに、劇場の大画面では迫力を感じたCGシーンや、やたら早回ししてごまかしたアクションなど、TV放送ではかなりアラが見えてしまいました。殺陣もちゃんと武道に則った殺陣とは言い難いものでしたね…^^;)。お怒りはごもっともです。
オカピー
2006年10月02日 01:06
ぶーすかさん、こんばんは。
怒っているわけではないのですが、観るならやはり本格的なものを観たいですよね。
ご説明戴いた<試練>とやらも甘すぎて、人生も残りの方が少なくなってくると、寧ろ頭を傾げてしまいます。しかし、若ければその<試練>が格好よく映るのでしょう。だから、文句がなかったわけですね。なるほど。

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