映画評「そして、ひと粒のひかり」

☆☆★(5点/10点満点中)
2004年アメリカ=コロンビア映画 監督ジョシュア・マーストン
ネタバレあり

タイトルだけではどんな映画か見当もつかない、アメリカとコロンビア合作のセミ・ドキュメンタリー。

舞台はコロンビア、バラ園の工場で刺取りをしている17歳の少女マリア(カタリナ・サンディノ・モレノ)が主任とのいさかいでバラ園を辞め、ボーイフレンドの子供を妊娠していることも判明して泣きっ面に蜂状態になるが、妙に彼女だけを頼っている家族(母と姉)の為に何とか仕事を得なければならない。そこで舞い込むのが、胃に麻薬を入れてニューヨークへ運ぶ仕事である。

これが言わば前半で、コロンビアの貧しい国民の実態と、追いつめられたそうした貧民の一人であるマリアがいかに麻薬犯罪に身を染めていくかを描いているが、家族の描写がもう少しあったほうが切迫感が伝わってきたであろう。

後半では、一緒に麻薬を運んだ4人のうち何とか3人が市井に出ることに成功した後、先輩格のルーシー(ギリード・ロペス)が殺されたらしいことを知り、マリアは逃げ出す。

現地での麻薬処理の仕方という興味もあるが、映画はあくまでドキュメンタリー・タッチに、彼女が難局を乗り切り、結局ニューヨークに残ることを決意するまでを描く。

こういう際物(時事的なお話という意味)的な題材を女性映画的に処理したのは面白いが、僕の印象では<虻蜂取らず>という結果に終っている。しかし、脚本も書いたジョシュア・マーストン監督のタッチは即実的でなかなか宜しい。

アカデミー主演女優賞の候補にもなったカタリナ・モレノとギリード・ロペスが似たタイプで、時々こんがらがる。映画を見通し良く作るためにはこうした点も大事である。現地の人には全く違って見えるのでしょうがね。

この記事へのコメント

viva jiji
2006年10月07日 18:28
TBさせていただきました。

少なからず、女性でなければ、男性でなければ、という狭い観方はしたくないのですが本作は、女性の方がやはり共感を呼ぶ映画と思います。
原題も邦題も崇高な感じでいいと思いました。

>カタリナ・モレノとギリード・ロペスが似たタイプで、時々こんがらがる。
・・・そうでしたか?私はぜんぜん、こんがらかりませんでしたけど。
オカピー
2006年10月08日 01:00
viva jijiさん
即実的に処理するスタイルはタッチは気に入りましたが、その割りに具体性を欠く部分があったような。
見落としていたのかもしれませんが、彼女の母親は働いているのか。
他の二人が税関をうまく通り抜けられた理由は?
それから、彼女は観光ビザで入国したはずなので、グリーンカードもない状態でNYに残って何か出来るのか。既成事実で永住権を得る? 不可能ではないでしょうがねえ。

どちらも好きなタイプでしたけどね、途中でお邪魔虫が来た時に、胃の中で袋が破れたルーシーにマリアがシャワーを浴びせる場面などありまして、区別がつかない状態に陥りました。幸いHDDで確認できましたし、その後の展開で解決しましたが、いずれにしても一般論として、無名俳優が出ているような映画は全然タイプの違う役者を使うのがベター。西部劇や戦争映画でえらく混乱して興味を失ったケースもあります。リアリズムだからと言って全員髭は迷惑です。
kimion20002000
2006年11月17日 19:49
TBありがとう。
普通であれば、娯楽映画じゃないし、マイナーな上映で終わるところですね。それが、これだけヒットしたというのは、南米系移民が劇場につめかけたのかしら、ねぇ。
オカピー
2006年11月18日 02:23
kimion20002000さん
時々解らない現象もありますね。
オスカーの候補になったと言うのが追い風になった部分もあるでしょうね。

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