映画評「鏡の女たち」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2003年日本映画 監督・吉田喜重
ネタバレあり
吉田喜重と言えば観念的で難しいといったイメージが強いが、「嵐が丘」以来15年ぶりに作られたこの最新作は比較的解りやすいし、ミステリー的な興味も交ってなかなか印象深い作品に仕上がっている。
子供(娘)を出産したまま病院から姿をくらました娘らしき女性・田中好子と再会した老婦人・岡田茉莉子は彼女の部屋で割れた鏡が掛けられているのを見て「自分の娘だ」と直感する。彼女の家にも娘が割った鏡がそのまま掛けられているのである。
好子は記憶を失っているので肯定も否定もできないのだが、茉莉子はDNA判定に委ねず、好子が記憶している病院の風景が彼女自身が広島で過ごした景色と一致することが判明、孫の一色紗英を加えた3人で広島に旅することになる。
そこで娘誕生の秘話を語るのだが、それは原爆投下の苦い記憶を語ることに他ならない。
娘の誕生には(性的に関わるのは勿論ただ一人であるが)、3人の男性が関っている。その為彼女はTV取材に頑として応じなかったわけなのだが、結局は全てを明らかにする。
幕切れで最後に障子越しに写る子供には、未来へ原爆の悲劇の記憶を繋いでいこうという吉田の思いが込められている。仕掛けはありがちと言えばありがちだが、ミステリー的に処理して興味を繋いだ努力は特に評価できる。なかなか気に入りました。
2003年日本映画 監督・吉田喜重
ネタバレあり
吉田喜重と言えば観念的で難しいといったイメージが強いが、「嵐が丘」以来15年ぶりに作られたこの最新作は比較的解りやすいし、ミステリー的な興味も交ってなかなか印象深い作品に仕上がっている。
子供(娘)を出産したまま病院から姿をくらました娘らしき女性・田中好子と再会した老婦人・岡田茉莉子は彼女の部屋で割れた鏡が掛けられているのを見て「自分の娘だ」と直感する。彼女の家にも娘が割った鏡がそのまま掛けられているのである。
好子は記憶を失っているので肯定も否定もできないのだが、茉莉子はDNA判定に委ねず、好子が記憶している病院の風景が彼女自身が広島で過ごした景色と一致することが判明、孫の一色紗英を加えた3人で広島に旅することになる。
そこで娘誕生の秘話を語るのだが、それは原爆投下の苦い記憶を語ることに他ならない。
娘の誕生には(性的に関わるのは勿論ただ一人であるが)、3人の男性が関っている。その為彼女はTV取材に頑として応じなかったわけなのだが、結局は全てを明らかにする。
幕切れで最後に障子越しに写る子供には、未来へ原爆の悲劇の記憶を繋いでいこうという吉田の思いが込められている。仕掛けはありがちと言えばありがちだが、ミステリー的に処理して興味を繋いだ努力は特に評価できる。なかなか気に入りました。
この記事へのコメント
「嵐が丘」はこれから見る予定ですが、ん十年前にTVで観た時は無気味なシーンがやたらと記憶に残っているだけで話はよく覚えてない状態です^^;)。
そう、彼の作品としては解りやすい部類ですね。それでも「解んねえ」という人もいそうですが。
「嵐が丘」は、やはり西洋でしょう。個人的はウィリアム・ワイラーの39年版が一番好きですが、ルイス・ブニュエルがメキシコで撮ったバージョンもなかなかでした。吉田版は重苦しいだけだったような。
ぶーすかさんもいらしてましたね~。
北イングランドの哀愁のある風景は素敵ですよね。
やはり「嵐が丘」を思い出してしまいます。
私は今回ブログでワイラー監督の映画「嵐が丘」について記事にしました。 よかったら一度いらして下さいませ~ではまた!
http://lucy-diary.cocolog-nifty.com
おっと「嵐が丘」でこちらなんですね。
原作も好きです。
それでは、お邪魔させていただきます。
昨日から今日にかけてメンテナンスがあったようで、お返事遅れてすみません。
さすが、「嵐が丘」も「ジェーン・エア」についても専門的な鑑賞の仕方で恐れ入ります。
私は遅ればせながら(笑)、今回初めて「嵐が丘」について見識を深めました~もっと若い時に観ていれば・・・とも思いましたが、若いうちってなかなか違う作品に気をとられていたりするんですよね~(汗)。
仰るとおり、私の「ルーシー」とは「ルーシー・イン・ザ・スカイ~」から由来しております。 女性っぽい!と、賛否両論(笑)ですが・・・。
では、今後とも宜しくお願い致します!
いえいえ、単に本数を重ねているだけという噂もあります。
ハンドルネーム由来当てはこれで三人目です(笑)。
ビートルズ絡みなので、また伺いますので、宜しくお願い致します。
DNA判定をしないで曖昧に終らせたのが良かったのでしょうね。
映画的に観れば、DNA判定しないことが、「広島を忘れない」というテーマへと連結されるわけですね。
そういう意味ではかなり凝った作品です。
2003年暮れに観たのですが、その年のベスト10の最終選考に残った作品です。