映画評「わが家の犬は世界一」

☆☆★(5点/10点満点中)
2003年中国映画 監督ルー・シュエチャン
ネタバレあり

1994年、北京市は狂犬病を恐れて犬の登録を義務付け、犬証を持っていない飼い主は犬を失うことになる。主人公の中年労働者グォ・ヨウもその理由で愛犬カーラを没収され、5000元を翌日午後4時までに払わない限り抹殺される運命である。
 期限は18時間後。その間にこの一家の問題と愛憎の機微を描こうとしたホームドラマで、時限サスペンス的に時間が表示されるのが興味深い。

主人公は妻ディン・ジャーリーとの間がしっくりと行っていない。
 妻は、1年前に旧知の女性の家で麻雀三昧、数日家を開けたことで夫の不倫を疑い、その彼女から貰ってきたカーラもある意味憎んでいるという設定である。実はすっかり愛情が湧いているのだが、夫の手前いなくなったことに対し冷淡な振りをしている。
 一方、妻だけでなく高校生の息子まで馬鹿にされ、犬だけに生き甲斐を見出しているのが夫。

いよいよデッドラインの4時が迫って来るが、金は集まらず、その間にその息子がカツアゲをしてきた若者の腕を折ってしまう事件が起き、正にふんだりけったり。

5000元は現在約70000円だが、10年前なら10万円くらいか。対収入で考えれば、日本人の感覚なら100万円くらいか。いかにも高い。

若い監督らしいルー・シュエチャンが北京の人々の日常を捉えたタッチはなかなか宜しいが、北京市内の犬狩りの情景が興味深いくらいで格別面白い作品とは言えない。犬に重点が置かれすぎている印象があるのもやや弱い。犬が帰ってきたのは分ったが、息子はどうなった?

この記事へのコメント

ぶーすか
2006年12月12日 15:41
<5000元は現在約70000円だが…
そうだんですかー!そんなに高いから皆、違法に犬を飼おうとするんですね。
ラスト、文字だけで報告されてましたが、息子も翌日釈放された…とありましたよ。しかしこのラスト、ちょっと投げやりな感じがしました^^;)。

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  • 「わが家の犬は世界一」「活きる」

    Excerpt: ●わが家の犬は世界一 ★★ 【BSジャパン】ルー・シュエチャン監督の中国映画。開発著しい90年代の北京、狂犬病対策のために飼い犬の登録制が施行され、愛犬を取り上げられた男が、愛犬を取戻そうと奔走する様.. Weblog: ぶーすかヘッドルーム・ブログ版 racked: 2006-12-12 15:35